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アルカディア27

しばらく時間がたち、学園は長期休暇に入っていた。前に約束した通り私はエスズの実家に向かっていた。

「すみません、この辺りはあまり整備が進んでいなくて。領内に入れば整備してあるのですが。」

少し揺れる馬車の中で向かいに座るエスズがそう言って謝る。

「大丈夫だよ。こうやってゆっくり移動するのも新鮮だしね。」

バレない程度に体を浮かばしているので特に揺れは気にならない。

「今日はラースナー様と一緒では無いのですね。」

「行きたいところがあるってさ。護衛の方もいるし、本人も強いから問題ないでしょ。」

そうこうしていると、エスズが言った通り揺れが無くなった。

「領内に入りましたね。ここからは速さも上がりますのですぐに着くと思います。」

窓から外を見てみると、石畳が綺麗に引かれた道がずっと先まで見えた。

「大分整備されてますね。」

「はい。交通網は重要だと言って領をもらって真っ先に取り組んだそうです。そのおかげで商人の通る道になり発展もしたそうです。」

所々に建物も見えるようなってきた。

「間もなく到着です。」

エスズの言葉に前を向いてみると窓から建物が見えた。

「私の家は街の中心から少し離れていまして。」

馬車は門をくぐってそのまま進んでいく。入口の扉前に止まった馬車から降りてエスズの後ろについて建物に入る。

「ようこそ。君がサリス嬢だね。話は聞いているよ。彼女はこちらだ。」

エスズの父に連れられて1つの部屋に通された。

「彼女がミューダ君の母親、モミジだ。」

ベッドに横たわる女性、モミジさんに近寄る。

「意識もある。本当に寝てるだけのようですね。」

「最初は意識も戻っていたのだが最近はずっとそのままだ。なんとか魔力の治療で衰弱しないようにしているが・・・。」

「それだけしか出来ないと言うことですね。」

そう聞いてみると頷いた。

「わかる範囲でやって見ます。少し外して貰えますか?」

そう言うとエスズがこの家の人を連れて言ってくれた。メールには部屋の前で待機してもらい部屋にはリャナと私だげ残った。

「どう見る?」

「体の内部に力が溜まりすぎた結果防衛本能から溜まりすぎた力を放出。その反動から動けなかったのでしょう。しかし、そこに新たに力を外部から流してしまったため再び放出。その反動で体に限界が来たと考えるのが良いかと。」

話と現状から見たリャナの考えを聞きながらモミジさんの体を見ていく。

「反射もないしラースナー様と同じ力の使い方だよね。そうなると自然に力が出ていく私たちと違って時々使わないと溜まりすぎになる国にいる分には使うところがあるから問題ないし、リャナの考え通りかな。」

ひとまず原因の予想はできた。今度はその予想を確信に変えていく。

「少し道を作ってやるか。」

モミジさんの手を握り反対の手の上で氷の結晶を作り出し浮かべる。

「いい?」

「いつでもどうぞ。」

結界をいつでも貼れるようにリャナが構えたのを確認してモミジさんに少しだけ力を流す。すると押し返させるようにして私の中に力が溢れてくる。

「・・・これ程かっ。」

予想より遥かに多い力が流れ込んできたため、浮かべていた結晶が青白く光ながら高速回転している。

「お嬢様?」

パッとモミジさんから手を離した私に心配そうにリャナが近寄る。

「大丈夫。」

体の中に残った余剰分の力を高純度の結晶にして体外に放出する。

「メール、入ってきてもらって大丈夫だよ。」

扉の前にいるメールにそう呼びかける。すると扉を開いて待機していた人達が入ってきた。

「どうでしたか?」

「とりあえず原因はわかりました。」

「ほんとですか!?」

エスズの父はそう言って喜んだが、私たちの雰囲気からすぐに落ち着いて聞いてきた。

「何かありましたか?」

「原因もわかって治す方法もわかりましたが、私たちの予想を遥かにある事が超えているのでここでは安全に治療ができないんです。」

「そう、なんですか。」

「何処か広い場所はありませんか?広ければ広いほどいいのですが。」

そう言うと少し悩んでから今は使っていない農園があるとの事。広さはかなりあるとの事だ。

「わかりました、すぐに向かいましょう。今の状態を長く放置するのは危険ですから。」

エスズの父に案内されて馬車で農園まで移動した。モミジさんはメールが抱えてくれている。

「ここですね。皆さんはできるだけ離れていてください。メール、頼んだよ。」

メールに頼み下がらせる。リャナには結界の準備をしてもらう。

「頼むから破裂しないでよ。」

周りに数十個の結晶を生み出す。問題なく浮かんでいるのを確認してからモミジさんの手を握る。

「頑張ってね。私もやれるだけやるから。」

先程流し込んだよりも多くの力を流す。押し戻されるような感覚がありすぐに私の身体中に大量の力が流れ込んできた。そのまま結晶に力を逃していくが、既に半分ほどの結晶が容量の限界を迎えている。

「お嬢様!」

私の異変を感じて駆け寄ろうとするリャナを止める。

「大丈夫。信じて。」

用意した結晶全てが青白く光りながら高速回転している下で私は座り込んでいた。

「お、終わった〜。」

なんとかモミジさんの中に溜まった力を逃すことに成功した。

「リャナ〜、準備できてる〜?」

経つことが出来ないくらい疲労していた私は最後の力をふりしぼり結界を貼っているリャナに向けて全ての結晶を放った。結界にぶつかり激しい音をたてながら砕ける無数の結晶。周囲にはその音がしばらく響いた。

「失礼しますね。」

メールに抱き抱えられたところで私の意識は途絶えてしまった。

次に目が覚めた時最初に目に入ってきたのは部屋の天井だった。

「ここは・・・?」

「目が覚めましたか?」

メールが部屋の入口だ私の方を向いて立っていた。

「屋敷の部屋をひとつ貸して頂きました。リャナさんはモミジさんの所にいます。」

「そっか。」

ベッドから降りて立ち上がろうとしたが足に力が入らない。倒れかかった私をメールが支えてくれた。

「あまり無理しない方が。」

「今だけは無理しないと。国を出たとはいえ元々私たちの国の人だ。手が届くならやれることはやるよ。」

メールの肩を借りてモミジさんがいるであろう部屋に向かう。

「サリスさん!?大丈夫なんですか!?」

部屋に入るとエスズが驚いたような声を上げた。リャナも驚いたようにこちらを見ていた。

「まだ目は覚めない?」

「はい。安定はしているので問題ないと思いますが。」

モミジさんが寝るベッドの脇に椅子を持ってきてもらいそこに座る。

「目が覚めるまでは私たちがここにいるよ。」

エスズも少し心残りだろうがやることがあるのだろう私達を残して部屋を出ていく。

完全に日が落ち部屋には月明かりの白い光が差し込んでいた。リャナもメールも眠ってしまったので起きているのは私だけだ。剣を抱くようにして寝ているメールを起こさないように毛布をかけてから窓際に立つ。まだ体は疲れているがまだ動けるようにはなった。

「・・・ん。」

ベッドの上からそんな声が聞こえた。振り返ると頭を押えながら起き上がろうとするモミジさんの姿が目に入った。

「あっ」

体が思うように動かないようで体を支えようとしていた腕がカクンッとなってしまった。

「大丈夫?」

倒れかかったモミジさんを支えてゆっくりとベッドに寝かす。

「あ、ありがとう。ごめんなさいね、どうも目が霞んでしまって顔が見えなくて。」

「もう少し寝ていて。」

モミジさんの頭に手を当てる。すると段々モミジさんの体から力が抜けていき寝息を立て始めた。

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