アルカディア26
周りを見て少し声量を落として話し始める。
「実はあの学園、王立学園に入れなかった貴族の子が行く学園っていう噂があるんだ。」
「入れなかった?どういう意味ですか?」
あくまで噂で本当かどうかは分からないと前置きをして話し始めた。
「実は王立学園は基本的には誰でも入れる学園なんだ。でも、ごく稀に入学を拒否される場合があるらしいんだよ。」
「入学拒否ですか。何か問題があるということですかね?」
「魔力の有無ではと言われてる。というのも、セイレン学園にはかなり昔から続いている家の子が多いんだ。そして、共通しているのがどの家もあまり長生きをしていないらしい。」
詳しく聞いてみると、昔からある貴族家の当主が早死にすることが多いらしい。それが魔力に関係してるのではという噂が出たそう。それがセイレン学園の噂にもなっているということだ。
「あまり確証はなさそうだな。」
話を聞いていたラースナー様がそう言った。私もあまり信用出来ない本当に噂なのだろうと思った。
「研究もされていないしな。実は王家も元々セイレン学園に通ってたんだよ。王子が初めての王立学園出身者になるね。」
そういった王家の噂もあるがよく分からないらしい。そんな話をしていると鐘の音が鳴り始めた。
「おっと、もう開演の時間だね。それじゃあ楽しんでおいでよ。もちろん、私達も楽しませんからさ。」
集まっていた半分ほどの人が素早く移動を始めた。その移動が終われば今度は私たちの番だ。階段をあがりそれぞれの席に案内された。私たちが案内されたのは壁から少し出ている2階席だった。舞台が見下ろすような角度になるため前方の柵が低くなっている。
「広いですね。」
席に座り会場の内部を見渡す。天井まで装飾された綺麗な会場で雰囲気から高位なのがわかる。
「これから11組の公演らしい。途中でご飯とか食べながら見れる時間もあるみたいだな。」
席に置かれていた紙を見ながらラースナー様がそう教えてくれた。
「なんか疲れそう。」
思ったことをそのまま口に出した。
「でも見応えはあるな。」
そうこうしているとガヤガヤしていた会場がシーンとなった。それと同時に音楽が流れ始めて演劇祭が開演した。
それからしばらく。演劇祭も問題なく進み最後の組になっていた。
「まさかうちの学園が最後とはね。」
ご飯の後のスイーツを摘みながらラースナー様と話していた。
「どこの組も流石だな。どれくらい劇団があるのか知らないが、少なくとも一流劇団なのはわかる。」
ラースナー様も演劇に大満足な様子だった。確かにこれは盛り上がらないわけが無いだろう。
「始まるみたいだぞ。」
少し目を離していた私にラースナー様がそう声をかける。姿勢を治し舞台の方を見る。
「あれ、あの格好・・・。」
舞台の上で座っている女性演者の格好がどこかで見た事のあるような気がした。
音楽が流れ始めるとその音楽に合わせて踊り始める。
「どこかで見たことあるような気がするんだけど気のせいかな?」
ラースナー様も同じように思ったらしくそう聞いてきた。私もそんな気がするが詳細は分からないということだ。
演劇は進んでいき、今度は森を舞台にしたセットが現れた。森の中で最初に出てきていた女性と男性が出会うシーンのようだ。その後は街の景色に切り替わり数人の演者が出てきた。
「なぁ、ここまで来れば何となく察してるんだけどさ。この話知ってるよな。」
「ええ、そうね。」
演劇を見ながら腕を組む私たち。メールはまだピンと来ていない様子。
「お2人ともご存知なんですか?」
「この話の主人公は5代前の国王。その弟さんの話よ。国王自身が本にして出した珍しい話ね。」
演劇が進むと再び森の中のシーンに移った。
「最後には妖精の世界に導かれて消えちゃうんだけどね。きっと2人ともあっちの世界で幸せなんだろうね。っていうのが結末。ちなみにその森には碑が立ってるから探せば簡単に見つかるよ。」
ラースナー様が演劇を見ながら話の結末をそう話した。舞台上でもラストに近づいているのがわかる。
「詳しいですね。」
色々と話していた私たちにメールが感心したようにそういった。
「まぁね。だって・・・。」
「「本人から聞いたし。」」
私とラースナー様の言葉は演劇への歓声でかき消されてしまった。舞台の上では出演者が並んで歓声に答えている。私たちも立ち上がって拍手をしているとラクスさんと目が合った。
「とても良かったですよ。」
聞こえないとは思うが少し大袈裟に口を開けてラクスさんに伝える。スっと頭を下げたので伝わっているのだろう。
「何か送ってやったらどうだ?」
「ふふ、そうしてみます。」
パチンッと指を鳴らすと、舞台の上にいるラクスさんの前に1本の花が現れる。驚いたようにこちらを見るラクスさんに笑いかければラクスさんもその花を受け取りもう一度頭を下げてから舞台袖に消えていった。
「さて、帰りましょうか。」
乱れた服を治して観覧席を出た。まだ会場内に残っている人のが多いようだが関係なく会場を出て馬車で寮に戻った。
翌日。寮の掲示板に1枚の紙が張り出されていた。通り過ぎる時にちらっと見てみると、昨日の演劇祭のことが書かれていた。部室に用があったので詳しく読まなかったが、まぁ演劇祭に出ましたよと言った内容だろう。
「あれ?こんな早くどうかしたの?」
部室には本の解読を進めていたトウコ先生がいた。
「少しね。」
本棚にある本を上の方から順に探していく。
「当たり前のように空飛ぶのね。」
部屋自体は小さいが高さがあるため置かれている本棚も高くなる。
「別にトウコ先生なら見られてもいいから。」
目的の本を見つけた私は浮かんだまま本を読み始める。
「トウコ先生、この本って世間に出た事ありますか?」
「どれ?」
上下反対になって下にいるトウコ先生に持っていた本を見せる。
「この本ね。1回だけ出たことあったよ。複写したものを出したからこの本では無いけどね。」
「なるほど。ちなみに解読は?」
「八割ぐらいってとこ。」
意外と進んでいた。それだけ進んでいれば内容を予想することも出来るだろう。
「それで、その本がどうかしたの?」
「いえ、昨日の演劇祭でこの本の内容が演じられたので。少し読み返したいなと思って。」
「そうだったの。演劇の方は全く興味がないからね。知りませんでしたよ。」
その後トウコ先生に解読の手伝いを頼まれたので少しだけ手伝いをしてから自分の教室に向かった。
「ねぇ昨日の演劇祭どうだった?」
席に着いて直ぐにカリナがそう言って近づいてきた。
「面白かったよ。あんまし見たこと無かったけど楽しめたし。」
「いいなー。毎年応募しても外れて行けないし。」
羨むような視線を向けてくるカリナ。
「たまたまだよ。演劇部の部長と知り合いだったおかげだし。」
「それでも羨ましいよ。まぁ、今度ある演劇部の発表会には行かないとね。同じ演劇をやるみたいだし。」
そう言って気合を入れているカリナの姿に自然と笑顔が漏れた。
「・・・その顔不意に見ると破壊力すごいね。」
急に真顔になったカリナがそういった。
「えぇ、そんな顔してるかな。」
ムニムニと自分の頬を動かす。
「うん。私たちはラースナーさんとそういう関係なのは知ってるけどほかの人たちは意外と知らないらしいよ?狙われてるらしいしね。」
「あら、それは嬉しいね。」
「呑気に言ってる場合じゃないでしょう。」
はぁ、とため息をついたカリナに冗談よと笑いかけた。先生も入ってきたのでカリナは自分の席に戻って行った。




