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アルカディア25

時は流れ、演劇祭の当日。開演は夕方だが開演前に式があるらしいので午前中から準備を始めた。

「お嬢様、どう言ったドレスに致しますか?」

リャナにテキパキと身支度を整えられながら並べられたドレスを見ていた。

「用意したものは全てお嬢様の要望通り動きやすいものです。」

並べられているもの全て平均より身長の高い私にあった体のラインがわかりやすいドレスになっている。あとは色だろう。

「紫のヤツにするかな。」

真ん中に置かれていた濃い紫のドレスを手に取った。今の髪色だと少々地味になると思い髪の色を変えていた髪留めを取り、眼鏡も白色に変える。

「よし完成。」

鏡の前で問題ないことを確認し、二の腕半分くらいまでを覆うレースの手袋をつけて太ももには隠しナイフをつけたベルトをまく。

「メール、準備できた?」

私の反対側で背筋を伸ばして壁側を向いて立っているメール。

「や、やはり私にはこういった格好は・・・。」

メールの格好は何時もの軽装備の護衛服ではなく、ドレスを着ている。

「しょうがないでしょ。護衛の方も場の雰囲気を壊さない服装でってあるんだから。メールさんもそれに習ってください。」

数日前に主催側から送られてきた詳細が書かれた手紙を見せるリャナ。

「リャナさんは慣れているかもしれませんが、私は剣で騎士になったのです。こういった格好は初めてです。」

一つにまとめていた髪も今日は私が編み込んで可愛く仕上げておいた。どうにも慣れない様子だが私がやったので崩すのも申し訳ないと思っているのだろう。

「ほら、もう時間だし行くよ。」

メールの手を取って部屋を出る。寮の玄関前にマナスさんが馬車を回してくれていた。既にラースナー様が乗っていたので私がその隣に、メールは向かいに座った。

「メールさん、緊張しまくりだね。」

子供のように固くなっているメールを見てラースナー様が苦笑いする。

「普段はあんなに強気なのにね。」

国でのメールは鬼教官として恐れられている。その鬼教官が子猫のように大人しくなっているのだから反応には困るだろう。

「そこまで距離も離れてないしすぐ着くと思うよ。」

少しづつ気持ちを落ち着けようと考えていると思いメールにトドメの言葉を言ってみる。

「・・・」

無言で私の方を見るメール。涙目で笑ってしまった。

「着いたみたいだな。」

ラースナー様が窓の外を見ながらそういった。多くの人が集まっていて、少し離れたところに劇場が見える。

「それじゃあ、お手を拝借。」

ラースナー様が差し出した手に私の手を乗せて馬車をおりる。入口まではしっかりと通路が作られていて、チケットを持っていない人が入れないようになっている。

「演劇祭チケットを確認致します。」

執事服の人がスっと近寄ってきた。その人に私たち2人のチケットとメールの護衛としての入場チケットを渡す。

「ようこそお越しくださいました。お時間までごゆっくりおくつろぎください。」

確認が済んだチケットを返すとそう言って元の位置に戻った。通路を歩いていくと両脇から多くの人の視線を感じる。私たちは特に気にならないが、メールはやはり気になるのだろう。やがて門をくぐると視線も遮られ流れている音楽が聞こえてきた。

「やぁ、来てくれて良かったよ。」

建物の中に入ると演劇部の部長であるラクスさんが私たちを見つけて近寄ってきた。

「お会いできるとは思いませんでした。準備はよろしいので?」

「これも、演劇祭の名物でね。演者と観覧者の交流ができるんだ。準備はその前に終わらせて裏方も含めて全員で参加するのが決まりなんだ。」

「なるほど。それで、私たちの相手をしていてよろしいのですか?他の人と交流などは。」

ラクスさんにそう聞いみると、既に終わっていて話すことも無くなってきたところに私たちが来たそう。

「今日は髪の色が違うんだね。似合ってるよ。」

「ふふ、ありがとうございます。」

ちなみにラースナー様は早速飲み物を貰いに行ってしまった。

「何がいいか分からなかったが、とりあえず貰ってきた。」

器用にグラスを4つ持ってきたラースナー様。私とメールだけでなくラクスさんの分も持ってきたのだろう。

「ありがとう。」

グラスを2つ受け取りメールに渡す。ラクスさんにはラースナー様が渡していた。

「他の子はどうしたんですか?」

「みんな、どこかで話してるよ。」

そう言って指さした。そちらには学園の制服を着た子が緊張した様子で話している姿が見えた。

「制服でも良かったんですね。」

「うちの学園は庶民の子もいるからね。」

そう話していると、後ろから数人人が近寄ってくるのに気がついた。

「あらあら、仲良し学園の生徒がどうしてここにいるのかしら?」

その声に振り返るラクスさん。私とラースナー様は振り返らずにスっと黙る。

「もちろん、選ばれたからですよ。セイレン学園の皆様?」

「まぁ、それでは直ぐに訂正しなければなりませんね。そちらの学園は選ばれていなかったと。」

ラースナー様に小声で聞いてみる。

「ねぇ、セイレン学園って?」

「確か、私立の学園だ。ゲームには出てきてなかったはず。こっちの世界に来て初めて知った学園だ。」

関わるとめんどくさいと思いずっと黙っていたが、さすがにラクスさんの隣にいては気が付かれる。

「あら、そちらの御二方。随分、お綺麗なものを身につけていらっしゃいますね。」

呼びかけられては体を向けなければ失礼だろう。

「ありがとうございます。では、私たちはこれで。」

ラクスさんを促しながらその場を離れようとした。その時、取り巻きの1人が私たちに声をかけた。

「その服、月影織のものでは?」

私のドレスを見つめてくる取り巻き。

「ええ、よくご存知で。ちなみにこちらも月影織ですよ。」

両腕をフワリと纏っている1本の布を揺らして見せる。

「ねぇ、その月影織って何なのです?わたくし知らないですわ。」

そう言って取り巻きに話しかける令嬢さん。

「えっと、ずっと昔に譲り受けたと言う布のことになります。布の状態だと吸い込まれるような深みのある色なのですが、人が触るとその部分だけ単調な色になってしまうんです。ドレスとして加工しようとしても時間が経つと糸がバラけてしまうので加工もできないんです。」

「ふーん。なんだか、不思議なものですわね。」

そして私の方を見る。

「では、そちらのドレスは月影織では無いようですね。単調な色はしていませんもの。」

そう言い残して離れていく令嬢さん。取り巻きもそれについて離れていく。

「誰ですか?あれ。」

ラクスさんに聞いてみると、どうやら向こうの学園の演劇部で部長をやっている人らしい。

「まさか月影織について知ってる奴がいるとは思ってなかったな。」

人混みに紛れてもう見えないが、そちらを見続けるラースナー様。

「記録としては交易品としてあったのでその頃のものでしょう。劣化しないのもの月影織の特徴ですし。」

そんな話をしているとラクスさんが月影織について聞いてきた。

「簡単に言うと魔力を纏わせた特殊な糸で織ってある布のことです。詳細に言うと素材やら技術やらもあるので言えないですが。特徴は人が触るとと言ってましたが、触る人によって色が変わるというのが正確ですね。」

試しにラースナー様に腕の布を触ってもらう。すると、半透明の水色をしていたの布がラースナー様が触れた部分だけ濃くなった。

「こんな感じで。」

ラクスさんも試しに触ってみたが、ラースナー様ほど濃くはならなかったが少しだけ変化した。

「あれ?少し変わるんですね。じゃあなんで色が単調になるんだ?」

てっきり力が少ない人は単調な色になると思っていたが、色が変わった。つまり量は関係ないようだった。

「あー、多分あっちの学園魔力を持ってる人居ないんじゃないか?」

ラクスさんはセイレン学園について話し始めた。

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