アルカディア24
「それで、話したいこととは?」
信頼できる人物だけを残して部屋から人を出した国王。
「留学の具体的な期間を決めていなかったと思いまして。それを決めたので伝えに来ました。」
「そうか、それでどれくらいにするんだ?」
「今学年だけにしようかと。」
ジッと私の方を見る国王。
「欲を言えばもう少し居てもらいたいがな。」
「そういうと思いました。そこで、私から提案です。エルドラド皇国に留学生を送りませんか?」
異例の申し出だろう。おそらくゲームのシナリオにも無い。
「留学生を送るだと?そんなことが可能なのか?」
「交換留学とすればいいでしょう。私たちが来たからみんなかも来ませんかってね。」
国王としてはすぐにでも承諾したい案件だろうが、そうもいかないだろう。
「ありがたい申し出だが、一先ず保留とさせてくれ。」
「ええ、いつでも回答はお待ちしてますよ。」
私と直ぐに連絡が取れるように一枚紙を置いて王城を出た。
新入生実習は中途半端に中止になってしまったが、また後日学内で行われるだろう。学園に帰る馬車を見つけラースナー様の乗る馬車に近づく。
「おかえり、報告聞くよ。」
私の接近を察して扉を開けてくれた。
「諸々略しますと、ゲームのシナリオをぶっ壊すことにしました。」
ラースナー様の向かいに座ってすぐそういった。
「略しすぎて流石に分かんないよ。」
苦笑い気味のラースナー様。
「まず、エスズが驚きのことを知っていました。実は私たちゲームに出ていたそうです。」
「えっ、そうなの?」
「はい。そして、この国を滅ぼす張本人だそうです。」
「・・・もしかして、私たちが来た時点でゲームのシナリオぶっ壊してた?」
ゆっくりと頷くと、ラースナー様はため息をついて頭を抱えた。
「なるほどね。私たちが美形だったのは民族的なものだと思ったけどゲームに出てくるからだったの。」
「そのようですね。そして、私たちがここにいる時点でシナリオはエンドが確定しているかもしれませんし。」
私たちがどのようなエンドで出てくるのかも話すと私が初めて聞いた時と同じ感想を言った。
「それでシナリオ壊すってことね。」
「正直、殴られる覚悟で言ったんですけどね。意外と素直に理解してくれましたね。」
「色々考えるようになってね。サリスは前世を引きずってないのに、私はゲームのシナリオだーって言って前世の記憶で楽しんでる。それじゃあいつかサリスに迷惑をかけると思ってね。ならいい機会だと思ったの。」
グッと伸びをするラースナー様。
「じゃあその壊すプラン教えてくれる?」
「まず、今回の留学は今学年だけだと国王に伝えておきました。」
「ふむ、それで?」
「交換留学という名目でエルドラドに招きます。」
「そのメンバーは?」
「エスズは確定してますが、それ以外は誰でも。」
「なるほどね。エスズを教育するのが本目的ね。」
「将来は女王になってもらいます。」
「また、とんでもない目標だね。」
腕を組んで聞いていたラースナー様。フッと笑うと
「でも、おもしろそうだ。」
と言った。
「こっちから交換留学のこと頼んでおくよ。サリスはお母様からでしょ?」
「現皇妃はそうでしょうね。何故か異様に気に入られてるし。」
国でよくぬいぐるみのように抱っこされたことを思い出していた。
「話は通るとして、向こうの国民にどう知らせるかだな。」
「普通にやればいいんじゃない?許可はどこかのタイミングで帰って取ればいいし、留学期間から考えても国に帰ってから時間あるし。」
「そうするか。じゃあ手紙出しておくよ。」
そう言って窓の外に流れる景色を見るラースナー様。やはり心残りはあるのだろう。
「しばらくは目を瞑ります。ご自由にしてください。」
「え?」
「まだみていないところ。いっぱいあるんでしょ?なら行けるうちに行っておいてよ。」
ニコッと笑えばラースナー様はため息をついた。
「全てお見通しか。なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな。」
マナスさんが着いていくと思うしよっぽど問題は無いだろう。今日だけで色々あったので学園に着くまで眠ることにした。
目が覚めた時、私は寮の部屋にあるベッドの上だった。どうやらメールが運んでくれたようだ。
「おはようございます。昨日の事が張り出されていましたよ。」
リャナが紙を持ってきてくれた。おそらく張り出されたもののコピーだろう。
「ありがとう。ふむ、危険性のある生物の出現に伴い森への立ち入りを禁止すると。無難な対応だね。中止の理由も納得出来る。」
リャナが髪を整えてくれている間にササッと読んでおく。
「お嬢様?少し気になったのですが、これからどうするんですか?お嬢様にとっては学ぶことは無いように思いますが。」
「完全に無いわけじゃないけどね。とりあえず、学園の演劇部には1回見に行かないとね。部長と約束してるし。あとは古語の訳でもして時間潰すよ。」
リャナに髪のお礼を言ってからカバンを持って部屋を出る。
「おはようございます。」
寮の出口にエスズが立っていた。
「おはよう。早いね朝から。」
私の横について歩き始めたエスズ。
「実は先程家の方から手紙が届きまして。長期休みのときだったら来ても大丈夫との事でした。」
私にと手紙を渡されたので読んでみると、ぜひ来てもらいたいということが書いてあった。
「私もお父様もミューダのお母様にはお世話になりましたので何か分かるかもということならすぐにでも来て欲しいと言っていました。」
おそらく、学園での授業に支障が出ないようにという配慮で学園が休みの時を指定してきたのだろう。
「わかった、それまでに私の方でも調べてみるよ。」
教室前でエスズと別れる。
「サリス、演劇部の部長からこれ渡して欲しいって。」
席に着くとラースナー様がそう言って封筒を1つ渡してきた。
「なんだろ。手紙かな?」
中を見てみると、紙が2枚入っていた。取り出してみると、どうやら何かのチケットのようだった。
「えーっと・・・、演劇の観賞チケット?ペアだからラースナー様の分もだよね?」
机の上に並べてどういう意味か考えていると、ヒナとカリナが近寄ってきた。
「えー!それ、今度の演劇祭のチケットだよね!」
机に置かれたチケットを見て驚いた声を上げるカリナ。ヒナもビックリした様子でチケットを見ている。
「演劇祭?」
「そう!演劇祭!国中の劇団が集まって演劇を披露するの!毎回チケットは抽選なんだけど、数が少なくて希少なの!でも、どうして持ってるの?」
「演劇部の部長から貰ったんだけど。」
「あっ、そっか今回この学園の演劇部が初めて参加するんだった。それで、招待されたんじゃない?」
なるほど、ヒナの言葉で納得がいった。つまり、最高の舞台で見てもらおうということか。
「見に行くしかないね。ラースナー様ももちろん来るよね?」
「行くよ。貴重なものなら尚更ね。」
チケットに記載されている日程は今日から少し時間がある。それまでにどんな服装で行くか決めておかなければなと思いながら窓の外の景色に目を向けた。




