アルカディア23
ハンモックの中からエスズたちの方を見ながら話を聞いた。
「つまり、私たちはこの国の人にとっては特に理由なく攻めてきた人ということ?」
「記憶している限りでは。兆候はあったのですが。」
「兆候?」
「はい。ノーマルエンドでは殿下が国王として現国王が生きている間に交代しまして。その後、あっという間に戦争状態になってしまいました。」
「その間主人公は?」
「教会で負傷者の治療をし続けましたが、最後は隣国に亡命してます。」
もはやバットエンドに近いと思いつつ話を遮らないように口を挟まなかった。
「わたしが考えるに周りの意見に踊らされたのではと思います。エルドラド皇国について知っていない人も多いですし。」
「うーん、有り得そうで何も言えないね。」
「そうですね。ゲーム内だとほとんど説明されませんし、出てくるのもそのエンドだけです。」
知らないだけで戦争になるのはあまりいい状況に無いだろう。少し考えなければなと思っていたが、そこで引っかかったことがある。
「ねぇ、エスズ?私たちがこの国を攻めた時なんて私たちのこと紹介されてた?」
そう聞くとサーッとエスズの顔が青くなった。
「・・・皇帝と。」
「つまり、私は皇妃と紹介されてたわけね。」
ガッチガチの状態で顔を縦に動かした。
「それで、私に近づくためにあんなこと言ってきたの。見抜いてたのもあるかな?」
「はい、おっしゃる通りです。」
私をゲームにでてきたサリスと同一人物だと見抜き、将来的にどうなるかも知っていた。エスズが未来をどうしようとしたかは分からないがその行動力は素晴らしいと思う。
「まぁ、未来はどうなるか分からないけど今1つ決めたことがある。」
「決めたことですか?」
「ええ、あなたこの国の女王にならない?」
「女王ですか?それはまたどうして・・・。」
「私はこの国を攻めるつもりはない。でも、このままあの王子が国王になればそれは避けられない。じゃあどうするか、他に国を率いるのに適した人材を作ればいい。それが貴方。」
ビシッとエスズに向かって指差す。
「いや、でもあと数年で国を率いるまでの能力を手に入れるなんて。」
「大丈夫よ。エルドラド皇国に来ればね。」
言われていることがよく分からないと言った顔のエスズ。
「今回の留学、具体的な期間は設けてないの。だから、来年ぐらいに国に帰ってそのお返しとして国に留学生招待ってやれば問題なく国に来れるよね。」
「そんなことができるんですか?」
「私を誰だと?現皇帝に直接話せる立場なんだから通させるよ。」
パチンと手を合わせる。後ろの方でメールが皇帝のことを思ってため息を漏らした。
「まぁ、エスズだけだとあれだし数人余裕持たせておくよ。」
「あわよくばエリィをですか?」
「ふふ、うちの国に来る意味が無いよ。来るなら拒まないけど。」
「着いていけるでしょうか。」
「1人づつ付けるよ。そうすれば分からないことなんでも聞けるでしょ?」
話をしているうちに夜も更けてきたので今日は寝ることになった。2人とも疲れているようですぐに眠ってしまった。
「サリス様、良かったんですか?」
「エスズは私と同じだから。それに、伸ばしがいのある子だよ。いつか預けることもあるかもね。」
「わかりました。その時はお任せ下さい。」
翌朝、私はいちばん早く起きたようで燃え尽きた焚き火の処理をしていた。
「サリス様緊急です。強い力が近づいてます。」
メールがそう言って飛び出してきた。
「標的は?」
「恐らくダイヤ氏の方かと。力量から見て時間稼ぎぐらいはできるかと。」
「そっか。じゃあ行くかな。流石に護衛頼まれてるし無視するのはダメだよね。」
少し眠そうだったがエスズが起きていたので事情を話してミューダと一緒に避難しておいてもらう。
「さてと、行きますかね。」
のんびり森の中を歩いていくと金属音が聞こえてきた。高い音なので少し離れていてもよく聞こえる。
「メールは他の子の避難お願い。ダイヤ先生は私が何とかするから。」
姿が見えるくらいまで近づくとその力の主はスっとダイヤ先生への攻撃をやめた。
「へぇ、より強いものに反応するか。」
そいつが暴れた影響で木は倒れ広場のようになっていた。
「ダイヤ先生、避難してください。後は私が引き継ぎます。」
「・・・教師としてはここで引いたらダメだろうがな。俺たちがいたら邪魔になるか。」
ダイヤ先生は素直にみんなを連れて避難してくれた。
「さて、どういう目的?」
何も言わずに私を見つめる怪物。
「通じないか。まぁそうだよね。」
『そう思ったか?』
頭の中に直接語りかける声が聞こえた。
「あら、通じてたの。」
『死にたくないのでな。』
姿勢を低くする怪物。戦う意思はないということか。
「何があったの?」
『縄張りに踏み込んだ。だから来た。それだけだ。』
「なるほどね。じゃあ入ってこないようにすればいい?」
『そうしてくれると助かるな。』
「じゃあ、そういう事で。」
怪物は背を向けて森の中に消えていった。
「メール、国王に会いたいから王城に伝えてくれる?」
影から見ていたメールに話しかけると、直ぐにガサッと音がした。
「さてと、どう説明したものか。」
森を出ると直ぐにダイヤ先生が駆け寄ってきた。
「どうだった?」
「とりあえず撃退はしましたが、森に踏み入るのはやめた方がいいですね。」
そう言うと安心とした様子のダイヤ先生。
「国王に説明しに行くんですが、私だけだと信用されないかもなんでダイヤ先生着いてきてもらってもいいですか?」
「ああ、いいぞ。俺から見ても危険なのはわかるからな。被害が出ないうちに止めないと。」
ダイヤ先生の許可も貰ったので少し影になるところまで移動してパチンと指を鳴らす。すると私の周りを氷の結晶が3つ漂い始める。
「掴まってください。飛んできます。」
疑問を浮かべるダイヤ先生が私の手を掴んだのでグイッと引き寄せて片手で抱き上げる。
「少しの間だけ我慢してください。」
地面を蹴って勢いよく上空まで飛び上がる。空から王城の場所を確認するとそちらに向かって飛び進む。ダイヤ先生は直感的に暴れると危ないと理解したようで大人しく抱えられている。王城の上空で降りられそうな場所を探していると下の方でこちらを見上げているメールが見えた。ちょうどよく少し開けているのでゆっくりとそこに降下していく。
「簡単に報告だけはしておきました。後はサリス様から説明しますと伝えてあります。」
降り立った私にメールがそう報告してくれた。
「わかった、ありがとう。」
少し早歩きで国王のいる部屋に向かう。
「あぁ、来たね。事情は先程聞いた。一先ず怪我人を出さないようにしてくれたこと、感謝する。」
部屋に入ると直ぐに国王がそう言って頭を下げた。
「護衛ですからね。頼んだものは?」
「今用意させている。」
そういうと部屋の扉が開いて箱を持った人が入ってきた。
「我々が用意できる最大限のものだ。」
箱を受け取って中身を確認する。
「沿岸部での不審船確認数ね。確かに私たちでは手に入れることが出来ない情報。しっかり受け取りました。」
「満足してもらったようだな。では、本題に入ろう。」
国王がそう言うと隣に立っていた人が紙を広げて私とダイヤ先生の前に置いた。
「まず何処で襲われたか。教えてもらいたい。」
地形や特徴がある場所などが記されていた地図を見ながら怪物と遭遇した場所を探す。
「あった、多分ここだ。近くに崖があったのを覚えてる。」
ダイヤ先生が指さした場所は森の真ん中に近い場所だった。
「こんなに奥でしたっけ?」
「おそらくな。俺たちは少し奥に移動してるから間違いないと思う。」
国王は森の中に入ることを禁止し、周辺を警備する騎士を派遣すると言っていた。
「協力感謝する。」
一通り今できることが終わったのでダイヤ先生は部屋を出ていく。私は少し話したいことがあると言って部屋に残った。




