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アルカディア22

日も傾き始めたのでエスズとミューダの成果を確認し始めた。

「何とかやり切りましたわ。」

若干青白くなっているエスズの手には真っ二つに割れた結晶が握られていた。

「こちらも何とか。」

ミューダも割ることが出来ていたが、エスズと違い横に割れていた。

「うん、予想通りだね。エスズは私と一緒だ。」

そう言いながら2人の結晶を回収する。

「一緒とは?どういうことですの?」

「なんて言うんだろう、簡単に言うと魔力で身体能力を強化するのに適した人と魔力を打ち出した方が適した人の二つタイプがいるの。エスズも私も後者の方だから一緒って言ったの。」

「なるほど。」

ふと、エスズが周りを見渡した。

「そういえば、殿下はどうされたの?」

「ダイヤ先生に引き取ってもらった。私が教える内容に付いてこられそうに無かったですから。」

そういうと、近くに王子がいないと理解したようでそれまでまとっていたお嬢様オーラを脱いだ。

「そういう事でしたか。ふー。」

足を投げ出して地面に横になったエスズ。

「サリスさんはどうしてそんなに魔力を使えるんです?溶けない氷なんて普通有り得ませんよ?」

「魔力を何処から得るかの違いね。私は空中にある力を使ってるから。」

手を顔あたりまで上げてギュッと握れば空中で結晶が生まれる。

「やはり、エルドラド皇国とは力の差がありますね。知ってはいましたが。」

「知ってたの?」

「ええ、ミューダの母が元エルドラド皇国出身だからよ。」

その言葉にバッとミューダを見る。

「はい。間違いなく私の母はエルドラド皇国出身だと言っていました。」

「へぇー、ほんとにいたんだ。それで、何か聞いた?エルドラド皇国のこと。」

「いえ、皇国のことは話せないと言われていて。」

国から出る国民にはエルドラド皇国のことを外部に漏らさないようにお願いしている。理由としては色々あるが一番はエルドラド皇国の力を予測できないようにするためだ。

「そっか。なら良いかな。」

「もし話していた場合どうなってたんですか?」

「話した人、聞いた人は全員行方不明になってたと思うよー。」

夜営用のテントと焚き火を作りながらそういった。背後で2人が黙っているのがわかる。

「さてと、あとはここに火をつけてと。」

組み上げられた枝に火をつけて先程取ってきた獣の肉を焼いていく。

「ミューダのお母さん、どんな人なの?」

「明るくて、強い人ですね。小さい頃よくやんちゃして怒られました。懐かしいですね。」

「今は違うの?」

少し話しずらいのか黙ってしまったエスズ。

「実は母は1年ほど前から体調を崩していまして。原因も分からず、どうすることも出来ないんです。」

「そうだったの。んー、国外に出たエルドラド皇国の人の話だと魔力を使う事がないから溜まっちゃうっていう話もあったしそれかもね。」

以前国にいた時聞いた話を思い出しながらそう話した。

「今度見に行こうか?私のメイドがその辺詳しいし。」

「いいんですか?」

「時間はあるしね。そちらの都合のいい日に向かわせてもらえれば。」

適度に味付けをした肉を皿に乗せて2人の前に置く。

「見た目はあれだけど味は保証するよ。」

いつも食べている料理とは違うので食べないかと思ったが、エスズは特に気にした様子なく食べ始めた。

「ん?何かあったな。」

ふと、直感的にそう感じた。槍を持って立ち上がり歩き始める。

「少し行ってくるよ。護衛置いてくから何かあったら言って。」

メールに頼んで森の中を歩く。

「どうかした?」

しばらく森を歩いて行くと数人人が見えた。

「あ、サリス!ちょうど良かった!ラースナーさんが!」

私を見つけたヒナが慌てた様子で引っ張る。連れていかれた先には苦しそうに胸を抑えるラースナー様の姿があった。

「急に苦しみ出して。いったん座らせて休ませてるけどあんまし変わらなくて。」

ラースナー様の前に膝を着くとギュッと抱き寄せる。

「大丈夫、私がいる。どこにも行かないよ。」

一瞬体がビクッとしたがだんだん落ち着いていくのがわかる。

「マナスさんいますか?」

「いるよ。」

木の後ろから顔を出したマナスさん。

「もう大丈夫だと思います。護衛ありがとうございます。」

「来てくれて助かりましたよ。助けを呼びたいけど離れる訳にも行かないし。」

寝てしまったラースナー様をマナスさんに預ける。

「急に驚いたよね。ごめんね?」

「いえ、何か病気でもあるんですか?」

「病気、になるのかな?ラースナー様、火が怖いの。」

「火が?でも、最初は何も無かったですよ?」

「1人になったからだと思う。それで昔のことを思い出したんでしょうね。」

マナスさんには前世でどういう死をしたか話してあるので理解しているだろう。

「昔、火に対して恐怖感を持つことがあったということですか。」

「周りに誰かいれば大丈夫だから、少し気にしておいて貰えるとありがたいかな?」

「わかりました。昼間には色々教えてもらいましたし少しでも力になれるならやるよ。」

ヒナもカリナもみんなそう言ってくれた。

「ありがとう。ラースナー様も実はこんなとこあるからね。」

マナスさんが抱えているラースナー様を優しく撫でる。

「なんか、2人って私たちと同じ歳とは思えないよ。」

「あはは、それ褒めてるの?」

特に大きな問題もなかったようなので私もエスズ達のとこに戻った。

「何かありましたか?」

メールがスっと近寄ってきてそう聞いた。

「大事はなし。ラースナー様が昔のこと思い出したみたい。今は落ち着いてる。」

「わかりました。また何かありましたらお呼びください。」

木の影に入るとメールの気配が消える。

「ふぅ、なんか疲れたな。」

「お疲れ様です。何があったかは聞きませんよ。」

「ん、ありがとう。」

固くなってしまったお肉をササッと食べ終えると木に吊るしたハンモックで横になった。

「エスズお嬢様、ずっと気になってましたがサリス様とはどう言った関係なんでしょうか?」

ハンモックに入ってしばらくそんな会話が聞こえてきた。

「どうって?」

「お嬢様が殿下や他人の前と自室での態度を変えるのはわたくしも知っております。そのお嬢様がサリス様には自室での態度で接することが気になりまして。」

しばらくの沈黙が周りを包む。

「いいでしょう、貴方には聞く権利がありますね。」

覚悟を決めたように話し始めたエスズ。

「あなたに話したようにこの世界がゲームというのは覚えていますか?」

「はい。覚えてます。」

「そう、そのゲームにはシリーズ、本で言う所の2巻3巻と言ったものがあったの。その最終シリーズ。サリスさんとラースナー様が登場するの。」

エスズはそこで言葉を停めた。1度大きく息を吐いたのが分かる。

「この国を滅ぼすために。」

「国を滅ぼす?それは一体どうして。」

「理由は分からないわ。ゲームの本編をノーマルエンド以下で終わるとその数年後彼女達が攻めてくるわ。」

ラースナー様から聞いていない全く知らない事実だった。流石にこれ以上黙っている訳には行かない。

「その話詳しく聞かせなさい。」

今まで寝ていると思い話していたことが全て聞かれていた場合人間はこういう顔をするのか。

「もう一度言います。今の話を詳しく聞かせなさい?拒否しないことをおすすめしますよ。」


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