アルカディア19
教室に戻ると図書館に行ったグループ以外は既に終わっているようだった。
「おかえり、課題回収するよ。」
ヒナが持っていた紙を渡す。その後はみんなと同じようにグループごとに集まって座った。
「さて、あとひとつだね。」
回収した紙を数えて先生はそう言った。
「そういえば、みんな聞いたかな。今度新入生実習があるって言うのは。」
思い出したように先生はそう言った。
「諸々決まったらしいから多分近いうちに詳細が届くと思うよ。」
そういったイベントがあると知らなかったので、前にいたラースナー様に聞いてみた。
「近くの森まで行ってそこで実践的なことを教えるとかだったと思う。」
「実践的なって?」
ラースナー様もそこまでくわしくは知らないらしく少し考えていた。すると、私たちの会話を聞いていたヒナが助けてくれた。
「えっと実践的ていうのは、将来どんな風に魔力を使えばいいかを教えてくれるの。それぞれの子たちにあった講座が用意されてて自分の受けたいものを受けるの。」
「へぇー、そういうのもちゃんと用意されてるんだ。」
「この学園の売りでもあるのよ。」
少し自慢げに話すヒナ。すると扉が空いて残っていた1グループが帰ってきた。その後は先生の話が少しあって授業は終わった。
あっという間に今日の授業が終わり休憩がてら部室に向かう途中で学園長に呼び止められた。
「何か?」
「国王が話をしたいと。」
「国王が?どうして急に。」
少し疑問に思いつつも学園長について行き王城に向かった。
「いきなり来てもらって悪いな。」
最低限の護衛だけを置いて私待っていた国王。
「何か用ですか?ラースナー様を呼ばないということは私だけの用と見ても?」
「いや、早く話を通したいと思ってな。行動が読みやすいサリス嬢を呼ばせてもらった。」
たしかに、ラースナー様はシナリオを見ると言って色んなところに行ってしまうので捕まえにくいだろう。
「なるほど。それでその話とは?」
「もうすぐ学園内で新入生実習があるのは知っているか?」
「ええ、聞きましたよ。」
「そうか、なら話は早い。そこで特待生の護衛をして貰えないか?」
「護衛ですか?」
たしか、新入生実習では近くの森に行くのでは無いのか。それに護衛なんて必要なのか?
「護衛と言っても遠くから見守る程度でいい。怪しい人物が近づかないように見張って欲しいのだ。」
「・・・先日の犯人がもう一度現れるかもということですか。」
そう聞くと大きく頷いた。
「なるほど、確かに私やラースナー様ならば事が起きても防げますね。」
腕を組みながら試すように国王を見た。
「それで?私たちには何をくれるんです?」
「・・・やはり、そう簡単には引き受けてくれぬか。」
「当たり前でしょ?正直、この国の誰が死のうが私たちには関係ないんですから。なのに守って欲しいとお願いされてるんですから、それに見合ったものを提示してくれないと。」
現状私の方が立場も力も上の状況。守って貰うならば要求を呑むしかない。
「わかった。すぐには用意出来ぬが、見合ったものを用意しよう。」
「ふふ、約束ですよ?」
それだけ言うと私はひらひらと手を振って部屋を出た。背後から色々視線を感じたが気にしない。
「ということがありました。」
学園に戻ってきた私は王城での事をラースナー様に話した。
『うーん、特にそういうイベントはなかったと思うけどなー。私たちがいることで変わってるのかな?』
「そう考えるのが自然だけど。」
『まぁ、何も起きないと思うけど。』
ラースナー様はもう一度ゲームのシナリオを思い出してみると言っていた。確かにイレギュラー的存在の私たちだがシナリオにそこまで影響を与える理由は無いはずだ。
「サリスさん、少しお話が。」
翌日、学園に来て直ぐにエスズにそう声をかけられた。
「なにかあった?」
「問題がというのではなくてですね。実は、今度の新入生実習の件で。」
「わかった、何処か空いてるとこ行く?」
エスズを連れて学園の屋上に上がった。
「それで?」
「新入生実習では班ごとに別れることになります。そこで私は殿下と同じ班になるのですが、一緒になりませんか?」
「あれ?班ってやることで別れるんじゃないの?多分私も同じとこだと思うけど。」
「人数が多いところや、危険な場合は少人数で班を作るんです。その方が先生の目が届くという意味で。」
「なるほど、それで私も一緒の班にというわけね。」
「シナリオ通りならば生徒会の子も来ると思います。そこにサリスさんが1人加わっても問題は無いかと。」
一緒の班ならば何かあっても守りやすいだろう。そういうことならばと了承した。
「そういえば、その新入生実習って何か事件が起きたりする?」
「事件ですか?特には無かったかと。」
エスズは少し考えたあとそう答えた。シナリオを知っている2人がそう言っているのだから本当に起きないのだろう。ならば私が働くことはなさそうだなと思いスッキリした。
「あとで、生徒会室に来てもらっていいですか?班に加わることを話したいので。」
「いいよ。行く時また呼びに来て。」
エスズと別れ、自分の教室に向かう。
「どこいってたんだ?」
席に着くとラースナー様にそう聞かれた。
「エスズに呼び出された。新入生実習で一緒の班にならないって。」
「それは願ってもない申し入れだな。受けたのか?」
「もちろん。断る理由がないし。」
ラースナー様からも思い出してみたがやはりこの新入生実習で何か起きたとはシナリオにはなかったとの事だ。
「やっぱり起きないのかな。」
「とは思うけど。」
そんな話をしていると先生が入ってきた。先生からは新入生実習についての詳細が話された。ほとんどは聞いていた通りの内容だったが、今回は学園を警備している人も同行するらしい。
「やっぱり学園側でも警戒してるんだね。」
「何かあってからじゃ遅いからだろ。」
特に興味は無いと言った感じのラースナー様。新入生実習でやる内容も国では小さい頃に習ったことだし、護衛に関しても私が1番近くにいるためその辺も安心しているのだろう。その後はいつも通り授業があったので準備をし始めた。
授業後、片付けをしているとエスズが教室の前にいるのが見えた。
「お待たせしました。」
カバンを持ってエスズの元に向かうといつかの時に見た従者が並んでたっていた。そして、その従者は驚いたように私を見ている。
「ミューダ、そんなに見ては失礼よ。」
「っ!申し訳ございません。」
スっと頭を下げるミューダ。その仕草はさすが従者と言った感じだった。
「いいよ、気にしてないから。」
エスズに連れられて生徒会室まで歩く。私の後ろをミューダが歩いているが探るような視線が気になってしまう。生徒会室の前で立ち止まったエスズは1度深呼吸をしてから扉を叩く。
「入ります。エスズですわ。」
ガラッと雰囲気が変わるエスズ。恐らくこれがゲームのエスズなのだろう。ガチャっと扉を開けて中に入るエスズ。
「返事は待って欲しいかな。」
「ごめんなさい?早く伝えておきたくて。」
エスズの後ろから顔をのぞかせるとそこにいた全員が驚いた顔をした。そして、エリィは怯えるように私を見る。
「どうも、呼ばれたので来ました。」
「先日伝えた班に参加する子ですわ。」
エスズがそういうとバッと私の方を見てきた。




