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ゲームに出てこないのに美形なのはなんで?  作者: 妖狐
序章 舞台登壇準備
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エルドラド 2

翌日。屋敷の敷地内にある鍛錬場に来ていた。お兄様と一緒に練習をするということで、動きやすい格好でお兄様と手をつなぎながら先生を待っていた。

「先生は皇都を守る騎士団に所属してるんだ。だからより洗練された外力を教えてくれるんだよ。」

お兄様は楽しそうにこれから来る先生について教えてくれた。そんな話をしていると、1人の男の人が鍛錬場にやってきた。

「こんにちは。今日から体験参加するサリス君だね。」

私に視線を合わせるように膝を着いたその人がおそらくお兄様が先生と呼ぶ人だろう。

「はい。よろしくお願いします。」

「うん。こちらこそ。じゃあまずは今どれくらい外力を使えるか見してくれるかな?」

先生はまず倉庫から鎧人形を出してきて鍛錬場の中心に置いた。おそらくこれに向かってやればいいのだろう。

「サリス君は確か放出型の力だったよね。じゃあこの人形に体の中から力をぶつけるような意識でやって見て。」

先生に言われるまま人形に向かって意識を集中させる。すると、湧き上がるように頭の中にどうすれば良いかが浮かんできた。浮かんできたその通りに腕を横に振り抜くと、腕を降った軌道に合わせて三個の結晶が生み出された。生み出された結晶はほんの数秒だけ空中に留まったあと3個ともが人形に向かって飛翔した。人形に当たると結晶は砕け散ったが、人形の方にも当たった場所に傷を付けていた。

「うん、最初にしては十分すぎる出来だね。」

見守っていた先生は人形に付いた傷を見ながらそう言った。お兄様の方は驚いたように私の方に走って来た。

「すごいよ!サリス!僕なんて最初は全く出来なかったのに。」

「レイト君は内蔵型で型が違うからね。力を外に出す放出型の方が力を認識しやすいから。内蔵型は1回認識出来ればあとは全身に均等に分けれるようにするだけで強力な力に変わるんだけどね。放出型の方はどうしても威力をあげようとすると消費が増えて、消費を減らそうとすると今度は威力が落ちるって言う難しい型なんだよ。」

先生は私たちにわかりやすいようにそう説明してくれた。

「レイト君は1回教えたんだけどね。忘れちゃってたかな?」

「えっと・・・、今思い出しました!」

若干目を逸らしながらそう答えるお兄様。あまり見ないお兄様の行動にふふ、と笑ってしまった。

「まぁ、レイト君はもうすぐ学院に入学だろう?そうしたらそこで詳しく学ぶといいよ。それに私が教えられることも少なくなってきたしね。」

先生はそう言うと私に少し下がっていてと言った。お兄様と先生は模擬剣を手にして距離をとって向き合った。邪魔にならないように端に置いてある椅子に座って練習を見守る。

「さて、先週言っていたことが身についているかの確認だ。レイト君からいいよ。」

「それなら、遠慮なく行かせてもらいます。」

お兄様がそう言うと、お兄様の姿が一瞬で消えた。と同時に先生の持った剣とお兄様の持っていた剣がぶつかった。一瞬のうちに距離を詰めたのだ。先生もその動きに反応してしっかりと受け止めている。

「うん、しっかり力の分け方が均等になってるね。それに余った力を無駄にせず腕に分けられてる。」

おそらく全力をかけてお兄様も戦っているだろう。それでも先生の剣を押し返すことは出来ず、ジリジリと押し戻されている。すると、先生が突然力を抜いて剣を逸らした。

「うわっ!?」

急に力を抜かれたお兄様はそのまま剣にかけていた力に引っ張られるように前のめりになった。その隙を見逃さずに、先生は足を引っ掛けるようにしてお兄様を転ばした。

「今後は絡め手も含めて練習していくからね。」

地面にうつ伏せになっているお兄様に向かって先生は楽しそうにそう言った。寝転がったままのお兄様のところにとたとたと駆け寄っていく。

「お疲れ様でした、お兄様。かっこよかったですよ。」

お兄様の近くでしゃがみこみ声をかけると、ガバッと起きがり嬉しそうな笑顔で私を見てきた。

「本当!?やった、サリスにかっこよかったって言ってもらった!」

そこに喜ぶのかというツッコミは置いておいて、抱きついてこようとするお兄様をサッと避ける。

「ああ、そうだった。サリス君の先生だけど実は私じゃないんだ。」

私に避けられて落ち込んでいるお兄様を慰めていると先生が思い出したようにそういった。

「そうなのですか?」

「うん、型が違うからね。それに、同じ女性の方が緊張しないんじゃないかって話し合いで決まったんだ。」

「それじゃあ、練習はもうしばらく先になりそうですね。」

「大丈夫。来週にはサリス君の先生も来るようになるから、長くはかからないよ。」

「来週ですね。わかりました。」

ここからはお兄様の練習に入るということで、私は迎えに来たメイドに連れられて鍛錬場を後にした。部屋に戻って、部屋着に着替えた。少しメイドには1人にして欲しいとお願いをして出ていってもらい部屋から十分離れたのを確認してから私は今まで我慢していた喜びを発散させた。

「マジで?あんなことを私がしたって言うの?嬉しすぎるんだけど!散々ゲームでやってきたことが今、本当になってる!しかもそれを私が使ってるとか!ほんとに信じられないんだけど!」

ベッドに飛び込んだ私は枕に顔を埋めたまま先程の快感を思い出して自然とニヤけているのがわかった。

前世の記憶が戻ったとはいえ、10年はサリスとして生きてきたのだ。いつも通りの生活が変わる訳では無い。が、今回ばかりはオタクの前世が顔を出してきて、力を使った時は大興奮で叫びそうになるのをどうにか我慢したので、もしかしたら先生にはれない。まぁ、疑問に思われた程度だと信じたい。

「とりあえず落ち着こう。」

ひとしきり吐き出して落ち着いた私は乱れた服を整える。昨日持ってきた本の残りを本棚から引っ張り出してきて続きから写し始める。

「それにしても、この本はなんのために書かれたんだ?どうにも、意図が読み取れん。歴史かと思ったら今度は理論になるし。そのあとは天候?さすがに話が飛びすぎだよ。」

昨日同様辞書と睨めっこしながら読んでいくが、正直役立つと思ったのは数箇所だけでどうやっても意味を読み取れなかった場所ばかりだ。

「これは諦めるしかないかな。」

最後まで気合いで読み切ったが、もう一度読もうとは思えなかった。自室の本棚に適当に突っ込んで置いて、次の本を開いた。

「ん、普通の言葉だね。」

書かれているのが旧語じゃないことを確認して本を読み始める。今度の本は国の歴史が記されている本で、国の誕生から事細かに記録されていた。

「ふむ、エルドラドを建てた人は沿岸から逃げてきた人達なのか?それならほかの国を作ったのはどんな人なんだろ。」

疑問に思ったことなどもまとめていきながら読んでいくと、ふいに本に書かれたひとつの単語に目が止まった。

「これは・・・。」

そこに書かれていたのは前世の言葉。つまり、日本語だった。たった一言『あい』とだけ書かれている。ただ、模写して書いたのかそれとも似せて書いたのか分からないが蛇のようにふにゃふにゃしている。

「いったん前後を読むか。」

その単語が書かれている前後を注意深く読みといていく。

「なるほど、私と同じように本を読んでたら偶然隅に書かれていたのを記録して置いたと。ん〜これじゃわかんないな。」

少し面白くなりそうだと期待したが、過度な期待だったようだ。一気に冷めてしまったのでこれ以上本を読む気力が起きなかった。

「そういえば・・・。」

椅子にゆったりと座って寛いでいた時、ふともう一度来ると言っていたラースナー様のことを思い出した。

「忘れないうちに。」

手早く本を片付けた私はその足でお父様の部屋に向かった。

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