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アルカディア18

「教会が否定してないから疑問を持ってる人は少ないと思うんだけど、私の家も今は見極めるって言ってた。」

小声でそう言いながらエリィの方をちらっと見た。

「確か、ヒナの家って商家から貴族になったんだよね?だから見極めてるってこと?」

「そうみたい。正式な発表が無いのに動くのはまずいらしくて。私も見極めて来いって言われてる。」

「あっ、聖女って言うのはね。病気とかを治す力を持った人の中でもより強力な力を持つ人のことを言うの。」

「ありがとう、カリナ。」

思い出したようにそう説明してくれたカリナにお礼を言ってから少し考えて話し始めた。

「つまり、その強い力を持っているかもしれないのがエリィではないかってこと?」

「そうみたい。前見た魔力の授業でも私たちとは違ったしそこからも否定しきれないのよ。」

「・・・確かに慎重にはなるよね。私も近づかない方がいいかな。国同士の争いになりそう。」

私のつぶやきに一斉に首を縦に動かすみんな。

「でも、この学園内だと今のところ私たちの立場は少ないと思う。大体の貴族は聖女のことを認めてないから。」

驚いたようなことをヒナは言った。

「そうなの?」

「ええ、エルドラド皇国ではどうか分からないけどこの国では教会の力はあまり強くないの。病気とかを直してくれる場所程度の認識しかしてなくて。」

「なるほど。エルドラド皇国でも似てはいますが、少し違いますね。教会はあるだけで極小数しか信じてないでしょう。エルドラドは精霊信仰ですし。」

私の言った精霊信仰がどういうものか分からないみたいでみんな首を傾げた。

「まぁそこまで内容は変わらないよ。信仰してるものの違いだけ。」

そんな話をしていると先生が入ってきた。

「さて、みんな聞いてると思うけど今日は2個目の授業まで古語だから少しみんなで考えてみようか。」

そういうと少人数でグループになるように言った。私はラースナー様を授業前に集まって話していたグループに引き入れて作った。ちなみにエリィはなんとかグループに入れて貰えたようだ。

「やってもらいたいのは文の翻訳と読み方の考察。古語自体が発展途中の学問だからそこまで難しく考えなくても大丈夫。翻訳の方法は特に指定しないから図書館使ったり辞書使ったりしていいよ。ただし、サリスさん達に聞くのは禁止。答えになるからね。2人はヒントだけね。」

先生の言葉に少し残念そうなグループの子たち。それぞれに配られた課題の文章をみんなで見る。

「サリスは読めるの?」

文章自体は簡単に読めるものだったが、いつの時代のものかによって読み方が変わる単語もあったので正解かどうかは分からなかった。

「まぁ、読めると言えば読めるな。」

同じように微妙な反応をするラースナー様。

「とりあえず、図書館行こ。あそこなら何かヒントあるでしょ。」

課題の紙を持って教室を出た。同じように図書館に向かうグループもあったが、少数だった。

「確か古語の本はこっちにあったはず。」

図書館につくとカリナが思い出すようにそう呟きながら棚を見始めた。

「あっ、あった。けど届かないか。」

カリナが見上げる先に少し色が変わっている古い本があった。

「あの本?」

私が指さすとカリナは頷いた。周りを見てグループの子たち以外に目がないことを確認してから軽く地面を蹴って飛び上がり目当ての本を取り出した。

「はい、どうぞ。」

「あ、ありがとう。」

少し驚いた様子のカリナだったが、切り替えて本を開いた。

「うん。どこかで見たことあるなと思ったけどやっぱりこの物語の1文だ。」

横から覗き込んでみると、そこには課題の紙に書かれた文章がそのまま載っていた。

「後は物語のストーリーから予測しながら古語を訳せば良さそうね。」

「よく知ってたね。」

「この本、ここだけ古語で書かれてて。ずっとなんて書かれてるのか気になってたの。それで読めなくても形だけ覚えちゃった。」

予想外のことに私たちのグループは他のグループより1歩先に出ることが出来た。後はみんなで一つ一つ辞書を使って調べていった。途中私達も手伝おうとしたが、最初は自分たちで考えて本当に分からなかったら手伝ってと言われてしまった。なので、辞書を探してきたりする雑用をやっていた。

「あとこの単語だけ。」

しばらく経って9割ぐらい翻訳が完成したが、そこで詰まってしまっていた。

「どこの辞書にも載ってないし。」

文書に残った単語は意味が時代によってわかれる単語だった。他にもあったが、それらの単語は前後から当てはまる意味を使えばよかったが、この単語は前後から読み取れないらしい。

「しょうがない。」

私は椅子から立ち上がると図書館奥の部屋。つまり古文書研究部の部屋に向かった。部屋の中に入るとある本を探した。以前来た時にちらっと見た本だが、その本に訳とともにその単語が載っていたはずだ。

「あった。これだ。」

動かされていなかったのか少しホコリが乗っていたので表面を軽く叩いて落とす。

「真ん中ぐらいにあったはず・・・。」

本を開いて目的のページを探していく。目的の単語はすぐに見つかった。が、少しばかり問題があった。

「どうしようか・・・。」

そう悩んでいると不意に人の気配を感じ反射的に急所になる首と胸部を氷で覆った。

「驚いたな、まさか反応されるとは。」

次の瞬間には私の首に細い紐が巻かれていた。すぐに反応しなければ切り落とされていただろう。

「・・・何者ですか?」

「そちらこそ。ここにある物にどんな用が?」

ギュッと紐を締めてくる。

「とりあえず、あなたがこの国の人間なら今すぐ解放した方がいいとだけ言うよ。」

「残念ながら、その要求は呑めないな。俺はこの場にある本を監視するためにいるからな。」

そう言いながらさらに紐を締め上げる。

「・・・私が何者かでしたね。いいでしょう。」

空いている手を動かしていいか許可を貰ってから髪留めを外す。

「もしかしたら、あなたにとって最悪の結果かもね。」

本来の明るい茶髪に戻っていくのが視界の端で見てわかった。後はメガネを取ればわかるだろう。

「さて、あなたが今拘束しているのはどこの誰でしょうか?」

私の顔が見えるように鏡面になっている氷を浮かべてやれば男の顔が段々と青ざめていくのが見てわかる。

「紐を外してくれますか?」

最高の笑顔でそう脅してやれば直ぐに首に巻かれていた紐が無くなった。

「とりあえず1回殴るね。」

そう言い終わらないうちに私の拳が男の腹に刺さった。

「変装した姿ぐらい見抜きなさい。」

私の前に腹を抱えて倒れる男。

「やってたのは監視でいいのね?どこの部隊?」

「諜報部です・・・。」

「あそこの部隊ね。よっぽどこの国は大丈夫だと思うけど。」

「監視は必要だと思うので。」

髪留めを付けて髪の色が変わったのを確認しながら話す。

「今回はさっきの殴りで無かったことにする。今後は気をつけてね。」

部屋に男を残して当初の目的だった本を持って出た。

「お待たせ、多分これでわかるんじゃないかな?」

残った単語を調べていたみんなに本を渡した。訳が終わっている本では無かったので苦労していたがなんとか見つけ出して課題の翻訳を終わらせることが出来た。


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