アルカディア16
結局学校は一日だけ休みで翌日には再開された。私もラースナー様もいつも通り学校に登校し教室にいた。
「やっぱり警備が強くなってるな。」
窓の外を見下ろしていたラースナー様がそう言って指さした。その方向を見ると制服を着ていない人が武装した状態でたっている。
「現状だといつ何が起きても対応できるようにするしかないからね。それででしょう。」
だんだんと生徒が集まり始め、私たちも仲の良い子達と一緒に話をしていた。が、その時教室に入ってきた1人の女子生徒の影響で賑やかだった教室を沈黙が包んだ。
「お、おはようございます。」
全員の視線を受けて一瞬たじろいだエリィ。視線から逃れるように自分の席に着いた。たった一日でここまでエリィに対する態度が変わったのは聖女に関してだろう。
「はーい、みんな集まったね。じゃあ席ついて。」
先生が入ってきてそう言うとゆっくりとそれぞれの席に着いていく。
「みんな知っての通り、先日の件を受けて学園内に警備の人が配置されることが決まった。少し窮屈に感じるかもしれないが、みんなの安全を守るためだ我慢して欲しい。」
簡単な連絡事項や覚えておいて欲しいというものを話すと先生は出ていった。1つ目の授業まで少し時間があるので、私は購買に何か食べ物を買いに教室を出た。
「あの、サリス!」
私を追うようにエリィが教室を出てきた。足を止めることなくそのまま歩くと今度は後ろから私の腕を掴んできた。
「何ですか?エリィさん。」
後ろを振り返らず前を向いたままそう聞く。
「あの、私何が何だかわからなくて、それで、サリスなら何かわかるんじゃないかと思って。」
私はエリィが掴んでいる手を振り払うと数歩前に進み振り返った。
「ごめんなさい。私はまだ死にたくないの。だからこれ以上私に関わろうとしないでくれる?」
放心状態のエリィを置き去りして私は購買までの道を歩いていった。食べ物を買った帰り道には既にエリィの姿はなく教室の自分の席に座っていた。
「はい、頼まれたものです。」
「ありがと。エリィに何か言ったな?帰ってきた時すごい顔してたぞ。」
「当たり前のこと言っただけです。関わるなと。」
「その言葉を正確に理解できるのはこの学園で数えるくらいだろうな。」
なんやかんやで先生もやってきて今日も退屈な授業が始まった。今日のエリィとの一件は今後色々な形で関わってくるがまだ私たちは知らない。
午前の授業が終わり、ようやく一区切りが着いた私達はお昼ご飯を食べに食堂に向かった。多くの生徒が通うということで、3つほど食堂があるので席がないと言う事態はあまり頻繁には発生しない。予想通り今日も空いていた席をとってご飯を取りに行く。
「今日も魚か?」
「でいいんじゃないですか?私たちにとってはあまり馴染みのない食材ですし。」
「こう毎日だと飽きてくるよ。」
「なら、味付けが違うの食べればいいじゃないですか。どれも美味しいですよ?」
そんな話をしながら料理を受け取ると席に戻って食べ始めた。
「そういえば、エリィとは距離置きましたが他の人ともある程度関わりを持たない方がいいですよね?」
「その方がいいだろうが、それ以前にあんまし関わり持ってなくないか?」
「エスズとは授業が一緒です。そう言う意味では関わりはあるでしょう。」
「なるほどな。大きく問題はないと思う。」
「少し様子見だけするよ。」
「わかった。こっちでも観察しておく。」
食事を食べ終えた私たちは午後最初の授業が選択の授業だったため、教室で別れて自分の授業の場所に向かった。
「こんにちはサリスさん。」
召喚の授業場所である演習場でのんびり本を読んでいるとそう声をかけられた。
「こんにちはエスズさん。座りますか?」
そう勧めると少し間を開けて座った。座る姿勢も様になっている。
「1つお聞きしたいことがあるんですが。」
「何でしょうか?」
「サリスさん。中身ありますよね?」
エスズさんの一言で私は読んでいた本を落としてしまった。中身とは国でリャナにバレた時にも言われたことだ。恐らく今回もそういうことだろう。
「私も中身ありなんです。どうしてサリスさんがそうなのかと思ったかですが、まず美人すぎるからです。なんですかその顔は。誰でも堕ちますよ。あとは行動ですね。この世界がゲームの世界だと知っている動きでしたから。ちなみにラースナーさんもですかね。」
私だけに聞こえるように小さな声で淡々とそう話す。
「・・・はぁ、また後で話すでいい?」
「もちろん。いつにしますか?」
「放課後、図書館奥の部屋に来て。」
「わかりました。」
エスズさんはそう言うと立ち上がって離れていった。
「単純に考えればそうだよね。私たちだけとは限らないか。」
場合によっては消すことも考えなければいけないだろう。
「はぁ〜。面倒臭いなーもう!国消すかー?」
顔の上に本を乗せてボーッと考える。
「仲間に入れるのが1番か。」
結論を出せばあとはやるだけ。ということで授業開始時間になったので集合している場所へ歩きながら腕のリングに触れてセイを呼び出す。
「呼ばれましたー!」
リングから飛び出したセイをキャッチすると片手で抱き上げる。
「元気そうでなにより。」
キュッと抱きつくセイを連れて先生が見える位置に移動した。
「さて、みんな準備は出来たかな?今日はみんなの子達と協力して課題をしてもらう。それぞれでやって貰ってもいいし、友達同士で協力しあっても大丈夫。課題の内容は街の中にあるものを隠してきた。そこにあるものを見つけて来るというもの。」
先生の言葉にある生徒がどうやって探すのかと質問した。
「この箱に隠し場所のヒントと探すものが書かれた紙が入ってる。1人ずつ紙をとって探す感じだね。みんな違うものを探すことになるからどう探すかは個人の自由だ。ちなみに速さは評価しないからな。どれだけ協力しあったかを見るから。」
生徒を見回して質問がないことを確認すると、順番に箱から紙を取らせた。
「制限時間は授業が終わるまで。そこまで難しい場所には隠してないから頑張ってな。それじゃあ始め!」
先生の合図とともに多くの生徒が走り出した。私も歩きながら紙を開く。
「えっと、探すのはサファイアの指輪か。」
紙には宝石が着いた指輪の絵とその隠し場所のヒントが乗っていた。
「青の中に紛れる赤・・・。この赤が多分指輪のことだけどじゃあ青ってなんだろ。」
とりあえず街に出て青色を探そうと思い学園を出る。
「セイ、なにか青いもので紛れ込んでも分かりにくそうなのあったら教えて?」
セイを抱えるようにして街の中を練り歩く。時々セイが見つけてくれたものに近寄って探してみるが特に何も見つけられなかった。
「いやー、無いね。」
少し疲れたので広場の噴水に腰掛けて買ってきた飲み物をセイと飲んでいた。
「そういえばお母さん。探しているのって赤い指輪だったよねー?」
「そうだよ。ヒントが青の中にあるって言ったから探してたんだけどね。」
「そうですかー。赤い指輪噴水の中にあるんですけど違いますかね?」
セイはそういうと噴水に手を入れた。すると噴水の中から赤い指輪が吐き出されるように私に向かって飛んできた。
「これは・・・。」
手のひらでキャッチした指輪は神に描かれていた指輪と同じデザインのものだった。
「青って水のことを指してたのね。ありがとう、セイ。おかげで見つけれたよ。」
優しく頭を撫でてやるとえへへと笑った。手に入れた指輪を持って学園に戻る。既に何人か課題をクリアして戻ってきている人がいた。
「おかえり、それじゃあ課題の紙と見つけてきたものを見せてもらえるかな?」
先生に言われたふたつを渡す。
「うん。大丈夫そうだね。じゃあみんなが帰ってくるまでは自由時間だから。あっ、見える範囲にはいてね。」
「わかりました。」
芝生の場所に移動するとそこに腰を下ろした。
「少し歩いたから疲れたね。」
セイも眠そうにしていたので今日のところは還した。そこで思い出したが、さらに疲れそうなのがまだ残っていた。
「今日はよく寝れそう。」
近くの木に寄りかかって体力回復に務めたのだった。




