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アルカディア15

特に行先も決めずに寮を飛び出してしまったが、街の中を歩いているだけでも色々なものが見られて楽しめていた。

「いきなり連れ出されたが、良かったのか?」

「何が?」

「いや、てっきり毒について調べると思ってたから。」

「もっと詳しく調べられたらね。持ってきてるのはそこまで高性能じゃないからこれ以上は調べても意味ないの。」

通りに並ぶお店を見ながらそう話す。

「サリス様が分からない以上私達も手出しできませんしね。」

少し笑いながら私の後ろを歩くメール。マナスさんも同意するように頷いている。

「それに、今は噂の聖女様がいるからね。」

聖女の話は一瞬で街に噂として広がった。教会側も否定していないことから本当だろうということになっている。

「それにしても波乱の人生だね、エリィは。両親が死んで親戚の貴族家に貰われて学園に入ったと思ったら聖女になっちゃうなんて。」

「喜ぶ人は少ないだろうね。なんせ、貴族から嫌われてるんだから。」

「あの子の住んでた街の人だけだろうね。でも、それもいつまで続くか。」

大きな力が働けば、あの街の人もどう変わるか分からない。そうなった時にエリィがどうなるか。

「ふふ、これからまた面白いことになりそうだ。」

「・・・ひとつ聞きたいが、このままエリィがゲームの通りに進んで行ったとしたらどうなると思ってる?」

「ゲームの通りですか?そうね〜、このまま上手く進んで王子と結婚して終了かな?」

ラースナー様は私の話を冷静に聞いたあと、静かに話し始めた。

「普通だとね。でも、今ここには私たちというイレギュラーが居る。このまま普通に行くと思えないんだよね。」

「と言うと?」

ラースナー様は周りの状況を確認するように見渡したあと冷静に話し始めた。

「多分、私たちの地位はいつかバレる。そうなった時どうするの?」

「タイミングにもよるでしょう。」

「場合によっては戦いになりそうだな。」

「蹂躙の間違いでしょう。たとえ相手がエリィでも容赦はしませんよ。」

「責任もって私たち二人で相手するしかないか。」

「そうならないようにはしますがね。」

たった2人の会話。まるで世間話のようなテンションで話す私たちにメールとマナスは冷や汗をかいていた。

「それで、何処行きましょうか。」

「どこか行きたかったんじゃないのか?」

「いえ、ただ外に来たかっただけですよ。」

道行く人に流されるように街をぶらぶらと歩いていると私たちは1つの教会前にたどり着いた。

「教会ですね。」

「見ればわかる。ゲームと一緒だな。」

見上げるようにしているラースナー様がそう呟いた。

「入ってみますか?」

ラースナー様の手を引いて教会の中に入る。一般の人がいつでも入れるように扉は開かれていて、中には数人だが人がいた。

「すごいな・・・。」

「ええ、本当に立派ですね。」

外から見た時はそこまで大きく見えなかったが、中から見上げるとかなりの高さがある。ステンドグラスも煌びやかなものがはめられている。

「サリス、これ見て。」

建物の内装に目を奪われていた私にラースナー様がそう声をかけた。

「久しぶりに見た。」

ラースナー様が見ている場所には透明な箱に入れられた古い書物だった。

「これって、エルドラドの皇室に置いてあったやつじゃない。なんでこんなところに?」

「そこに説明がある。」

書物の横にプレートがたっていた。それを読んでみると、大戦が終わったあとにエルドラドから送られたものらしい。

「ふーん。なるほどね。」

「こんなとこでも繋がってるんだな。やっぱりゲームとは違うか。」

書物について話していると後ろから声をかけられた。

「そちら、気になりますか?」

振り返るとそこには箒を持ったシスターが立っていた。

「驚かせてしまいましたかね?あまりそちらの書物を興味深くご覧になる方はいらっしゃらないので気になってしまいまして。特に学生の方は。」

そう言うとニコッと笑うシスター。

「そうなんですね。私たちは国で見たことがあったので少し懐かしく思いまして。」

「国でですか?この本はこの国の中ではここにしかないと思うのですが?」

「私たちは他国からの留学生なんだ。だから小さい頃に母国で見たんだよ。」

「そうだったんですね。ちなみに、何処の国かお聞きしても?」

「エルドラド皇国です。」

「へぇー、エルドラド皇国から。・・・え?」

「どうかしましたか?」

「エルドラド皇国って本当にあのエルドラド皇国ですか?」

少し手元を震わせながら私たちに聞いてくるシスター。

「本当も何もエルドラド皇国はひとつしかありませんよ。」

「あの!」

ガシッとラースナー様を掴んだシスター。その勢いに若干ラースナー様は引いていた。

「お話、聞かせて貰えませんか!」

シスターはそう言うとラースナー様の答えを聞く前に引っ張って行ってしまった。仕方ないので残された私達もついて行く。たどり着いた部屋には他にもシスターや牧師の方がいたが、全員驚いている。

「いきなりすいません!でも、どうしても話を聞きたくて!」

「まぁ驚きましたけど、良いですよ?」

「ありがとうございます!いで!」

ラースナー様を引っ張って来たシスターが部屋にいた他のシスターにゲンコツを落とされた。

「急に入ってきたと思いましたら、何をしているんですか!」

「うぅ、だって・・・。」

「言い訳はやめなさい!いきなりで本当にすみません!」

無理やり頭を下げられるシスター。助けを求めてラースナー様が私の方に顔を向けたがどうしようもない。

「話だけでしたら大丈夫ですから。特に予定もないですし。」

「いえ、そういう訳にはいきません。」

「そ、そんな!あの書物を読んだことある人なんですよ?しかもエルドラド皇国で!」

シスターのその声に部屋にいた教会の人たちの動きが止まった。

「そういえば、あの本って複製分もエルドラドの文字でしか書かれていなかったような?」

「えっ、そうなの?」

ラースナー様のつぶやきに初耳だった私は思わず聞き返していた。

「そうなんです!あの書物もエルドラド皇国から新しく送られたものがあったのですが、当時の重役が読めない謎の本として処分してしまっていて・・・。」

「バカ!そんなこと言うんじゃありません!」

とんでもない爆弾発言が飛び出た気がする。聞かなかったことにしよう。

「えっと、もしかしてエルドラド皇国の方でしょうか?」

「そうですよ。なので読んだことがあるんです。」

「まさか、原本をですか!?」

「いえ、複製されたものです。ゲンポンジャナイデス。」

相変わらずのごまかしベタに吹き出す私とマナスさん。

「失礼なことは承知しています。その本の内容についてお話いただけないでしょうか?」

先程とは違い冷静な口調でそういうシスター。周りにいる人も真剣な表情でラースナー様に視線を送る。

「わかりました、お話します。」

ラースナー様が少しづつ本の内容を思い出しながら話し始めた。

「あの本には大陸の生まれた起源について記されています。ご存知の通り大陸は4人の精霊によって生み出されたというものです。この精霊は一定周期で若返り続けるというのも恐らく伝わっていると思います。」

「そうですね、我々もそう伝え聞いております。」

「この精霊たちはそれぞれ亜人たちとの繋がりが深いので、亜人たちからは特に信仰されているんですよ。」

みんな何度も頷いて話を聞いている。

「この本にはそうした亜人たちが伝えてきた話をまとめていまして、時間が無いので全ては話せないので、水の精霊についてお話しましょう。」

「水の精霊ですか?」

「はい。水の精霊は海に暮らす人魚の方達と繋がりの深い精霊です。好奇心が強くて時々人間の住む街にも現れますね。」

膝の上に紙を置いて熱心にラースナー様の話を書き記していくシスター達。

「他にも全ての精霊について記されているので部分的でも読み取れるといいかもですね。」

「わかりました。貴重なお話ありがとうございます。」

満足してくれたようなので私たちは長居したことと時間を取って申し訳ないと謝ってから教会を後にした。

「これからどうする?」

「そろそろ戻ろう。気分転換になったし。」

時間も午後になろうとするぐらいなため私たちは人混みの中を寮に向けて帰るのだった。


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