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アルカディア14

部屋の中にいる人全員が声を出すのに躊躇う中で唯一表情を変えずに私の方を見つめる国王。

「アルカディア皇国とは長い付き合いがある。その中で、サリス嬢の家に毒の完全耐性があるという話は聞いている。」

「・・・その話、場合によっては大変なことになるというのは理解してますね?」

「当たり前だろう。だからこそ他の誰にも漏らしていない。」

「では、この状況は?」

おどけるように両手を広げる。部屋の中にいる人を指しているることはわかるだろう。

「サリス嬢がどういった人物かはそこにいる者以外理解している。そのうえで話すやつはおらん。」

「ふふ、その言葉信じますよ。」

一旦この場を切り抜けたことを理解したのだろう。部屋全体の空気が緩んだ。

「国王様、彼女は一体何者なのですか?」

学長は探るような視線で私を見たあとそう口を開いた。

「サリス嬢か?エルドラド皇国からの留学生というのは知っているな。」

「それは耳にしております。珍しいことで驚きました。」

「だろうな。彼女はエルドラド皇国の次期皇妃という立場にある方だ。」

国王の言葉にバッと私の方を見た学長。

「その反応は当たり前だな。だが、彼女が一言攻撃しろと言えば一瞬で国が滅ぶだろうな。本当に末恐ろしい奴だ。」

「別に気に入らないからで攻めたりしないからね?」

そこまで凶暴な性格では無いので少しムスッとして国王を見る。

「わかっている。それにサリス嬢だけでこの国は滅ぼせるだろうしな。」

「そんな凶暴じゃないって!まぁ、否定はしないけどさ?」

国王はふははと笑っているが、他の人にとってはそんな余裕はないだろう。

「さて、本題に移ろうか。」

一息つくと国王としての顔に戻った。

「今回の事件については大きな後遺症を残すものはいないだろう。ならば、事件の解決について話したい。サリス嬢は今回の毒について何か分かるか?」

「残念ながら。今まで私が飲んできた毒の中に同一のものはありませんでした。」

「そうか・・・。」

「ですが、毒の情報はあります。無味無臭で、極少量でも致死性がある。さらに即効性もある。」

毒を飲んだ時の状況や周りの反応などから推測できるものを話す。

「最初の情報だけなら暗殺に使われる毒かと思ったが、即効性がある毒はあまり汎用性の面から使われないと聞いていたが。」

国王はそう言いながら隣にいる男性に声をかけた。

「はい。彼女の見解が正しいとするならば暗殺者から得た情報を含めても現状特性の一致する毒物は記録されていなかったかと。」

少し考えながらそう話す男性。国王は思い出すように彼がこの国の防衛などを担当しているものだと教えてくれた。

「毒物の種類が分からないとなると、犯人に絞りようがないな。」

「さらに言うと、標的も絞れませんね。あそこには有力貴族もいましたので。無いと思いますが私の場合もありますし。」

その一言に全員が凍りついた。

「・・・彼女が地位を隠してなかったら、この国滅んでましたね。」

「それに関しては私も同感です。地位を隠していて良かったです。」

そんな話をしていると、勢いよく扉が開かれた。その音に全員が扉の方を見たが、私は学長の影にスッと隠れる。

「伝令!教会より、聖女の誕生が認められました!特待生のエリィという女性です!」

さらなる衝撃が部屋をかける。国王は入ってきた男から紙を受け取ると下がらせた。

「・・・まさかこんなことになるとは。」

国王は顔を両手で覆って項垂れてしまった。

「聖女の誕生ですか。」

部屋にいる全員が呆然とした顔をしてしまっている。

「えっと・・・、おめでとうございます?」

「今はありがとうと言っておく。また、大変なことになるな。」

国王は少し考えたあとため息をついた。

「今度時間を設けるからその時でいいか?」

今は私がいない方がいいと言うのは理解した。ならば、ここで粘る意味もないので私はさっさと退散することにした。学長はエリィのことで残る必要があるそうなので、迎えに来てくれたメールと一緒に馬車で寮に戻る。

「サリス様、お話としてはどうでしたか?」

馬を操りながらメールがそう聞いてくる。日も完全に沈み、月明かりだけが白く照らす町を見ながら窓枠に手を置いて答える。

「今のところは何もわからないで終わったよ。それにあんなことがあったんだし、しばらくは進展ないだろうね。」

変装用の髪留めも外して隣の席に置いてある。今後の事を思いながら頬杖をつきながら外の景色を見る。

「どちらにせよ、私には関係の無いこと。傍観に徹するよ。」

「変に首を突っ込まない方が良さそうですからね。」

メールがそう言いながら笑う。それにつられて笑顔を見せていると、離れたところから馬車の走る音が聞こえてきた。かなりのスピードで走っているのが音からもわかり、一瞬で私たちが乗る馬車とすれ違って行った。ほんの一瞬窓から見えたのは三人ほど乗っていることだけだった。

「なんでしょうか。」

「さぁね。」

「随分とあっさりしてますね。」

「関係ないことへの興味のなさはメールも知ってるでしょ?」

「ええ。それはよく知っていますよ。あと、合理的すぎて冷酷に思われることも。」

冗談っぽくそう言うメールに若干呆れながら苦笑いをうかべる。しばらく走れば寮に到着した。ラースナー様によると明日は休みになる可能性が高いらしいので、部屋に篭もるだろうと考えながら寮の自室に入った。

翌日寮の中は昨日起こったことで朝から騒がしかった。学園が休みだと言うのは朝全部屋に通達されたため、その時は何をするかと言った話をしている人が多かったが、掲示板に昨日のことが張り出されるとそんな事を話している人はいなくなり、今の状況になった。

「予想以上に騒がれてますね。」

外からの声に少し驚くような反応を見せているメール。

「仕方ないよ。毒なんて身近にないものだし、その犯人も捕まってないんだから。」

朝食を食べ終えた私は机の上に器具を並べ始めた。簡単な物しか持ってきていないが、できるだけはやろう。

「リャナ、毒のサンプル持ってる?」

「はい。こちらに。」

瓶に入っている液体をリャナから受け取り器具に取り付ける。

「さて、あなたはどういう毒なのかな〜?」

器具に付いているボタンを押したり、栓を開けたりしながら毒を細かく分離していく。

「どういうことでしょうか・・・。」

しばらくして器具の中に分離された毒素を見ながら私たちは困ったような顔をしていた。

「まさか、どの毒とも共通の毒素がないとは。」

「さすがに私もこれは予想してなかったな。」

器具の性能が低い以上分からないものも出てくるだろうと考えていたが、ここまで何も分からないのは予想していなかった。

「現状では何もわからなそうですね。」

「そうだね。幸い、抗体は作ってあるから私たちは問題ないだろうけど。」

私はリャナにそう答えながらも、最悪のケースを考えていた。

「ちょっとラースナー様のところに行ってくる。」

そう言い残すと、毒素のことをまとめて記した紙を持って寮を出た。同じ敷地内とはいえ、少し距離のある男子寮に向かっていく。入口で要件を伝えると、応接室に通された。

「おまたせ。何かあった?」

応接室で待っていると少し眠そうなラースナー様が入ってきた。

「やっほー。会うのは久しぶりだね。」

眠そうなラースナー様とは反対に朝から元気なマナスさん。

「おはようございます。早速ですが、毒についてです。」

持ってきた紙を机に置くとラースナー様はサッと目を通した。

「・・・完全新規だとは聞いていたが、どの毒とも共通していないとはな。」

「ゲームでも何かわかったりしなかったんですか?」

「特になかったはずだ。もしかしたら忘れてるだけかもしれんが。」

「そうですか。この結果は国にも送っておくのでまた結果が出たら持ってきます。」

「わかった。」

「さて、要件も終わりましたし街歩き行きますか?」

突然の私の発言に固まるラースナー様とノリノリのマナスさん。正反対の反応を見せる2人を連れて私は寮を出た。

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