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アルカディア13

全身の痺れも取れたため、立ち上がり体を動かす。特に問題なく動くことを確認すると、指を鳴らす。

「お呼びでしょうか?お嬢様。」

どこからともなく現れたリャナ。

「毒の処理お願いしてもいい?」

「種類は分かりますか?」

「完全新規。ストックにもないと思う。」

「そうですか。なら新しく作るしかないですね。」

スっと私に近づいてくるリャナに片腕を出す。慣れた手つきで何処からか注射器を取りだし、私の腕に刺す。

「少し多めに取っておきますね。」

2本分血液を摂ると、針を抜いてまた一瞬で消えた。

「これで死者は出ないでしょう。」

リャナが現れて消えるまで5分いないだろう。後は事情を話せばラースナー様の護衛さんが作ってくれるだろう。

「今のは一体?」

私のすぐ近くで事を見ていたラクスさんが不思議そうにこちらを見ている。

「話せば長くなるので、出来れば見ないふりをお願いしたいです。」

そう言うと、一瞬迷った顔をしたが諦めたように手を挙げた。

「わかったよ。今回は見なかったことにする。色々聞かれても答えないようにするよ。」

「ふふ、ありがとうございます。」

「ただ、一つだけ。」

スっと指を立てて私に近づいた。

「また見に来てよ。新しい視点も今の演劇部には必要だからさ。」

「・・・てっきり演劇部に入れって言われるかと思いました。」

「あっはは、そこまでのことは求めないよ。」

そんな話をしていると、校舎から先生がどんどん出てくる。その先生達に紛れるラースナー様。

「無事みたいだな。」

「どうにかね。まさかあそこまで強力だとは思わなかったけど。」

「お前から見てもそんなにか。」

「抗体は作らせてるので何時でも撒けますが、様子見しますか?」

「それで頼む。ストーリーは変えたくないからな。」

リャナに抗体が出来たら一時待機と指示する。その後ラースナー様に連れられて校舎の中に入った。

「さて、ここからが本編だ。」

ある教室を覗き込むと、そこには今にも死にそうな顔で苦しむ多くの人の姿とその姿を見て涙を流すエリィの姿だった。何が起きるのかと見ていると、突然エリィの体が光り始め、一瞬にして部屋全体を照らしだした。

「眩し!」

思わずそう言って目を瞑ってしまう。光が納まったのを確認するとそこには先程まで苦しそうな顔をしていた人達の表情が変わっている光景だった。

「今のは・・・。」

「良かったな。聖女の誕生だ。」

ラースナー様はそう言うと寄りかかっていた壁から離れて廊下を歩き始めた。

「ねぇ、エリィって設定だと犯罪者の子供の可能性が高いんじゃないの?それが聖女なんて。」

「それが主人公を謎にしてる原因。どっかで言われてたのは彼女の両親が嵌められて偽の罪を被せられたのではって話。」

「・・・やっぱりよく分かんない。」

「知らないかもだが、今でもサリスが離れてから嫌味言われたりしてたぞ?」

「あれ?そうだったの?」

特に気にしていなかったというのもあるが、気が付かなかった。

「特にストーリーには関係ないが、傍観者としてはあんましだとは思う。」

「そういうことなら早く言ってよ。そしたら少し避けたのに。」

こっちはゲームを知らないからどんなことがあるのか知らないのだ。少しは教えて欲しい。

「いや、今のタイミングで言っても離れる理由無かったろ?今回はいいタイミングになったんじゃないか?」

「いいタイミング?」

「聖女かもしれないやつと仲良くする他国の留学生なんて、何するか分からない危険人物指定されそうだからな。」

確かにエルドラドのような国とは違い、治す力は貴重だろう。そんな人物と私が話していれば拉致されるかもという懸念は高まるだろう。

「ふむ、確かにそう考えるととてもいいタイミングですな。」

そうと決まれば早速行動。翌日からは自然にエリィと距離を置こうと決めたのだった。

「明日は学校休みになるだろうし、久しぶりにゆっくりするかな。毒の研究もしたいし。」

「まぁ、そうするかな。なにか手伝うか?」

「サンプル足りないし、大丈夫。」

本来ならどう言った毒か調べる必要があるが、器具も無いためどうにもならない。ということで手伝いは遠慮しておく。

「そっか。じゃあサリスはいったん戻った方がいいかもな。」

「どうして?」

「逃げたと思われるぞ?」

「帰りまーす。」

ラースナー様にそう言うとすっ飛んで元の場所に戻った。突然現れた私にラクスさんが驚いていたが気にしないことにする。

「おかえり、何かあった?」

「いえ、もうそろそろ戻ってこないとと思って。」

そう話していると、先生達が出てきて残っていた人全員を校舎内の一室に集めた。

「すまんな、いきなり。」

しばらくした後そう言って入ってきたのは学長と呼ばれていた男性だった。

「当時の状況を説明してもらいたいのだが。」

学長の言葉に遠慮しながらラクスさんが話し始めた。

「えっと、最初はみんな普通に飲んでました。ただ、最初に口にしていた会長に異変が起きたと思ったらすぐに全員に異変が。」

「ふむ、ここにいるものは偶然飲んでいなかったのか?」

見渡しながらそう言う学長。と、そこに1人の先生が慌ただしく入ってきた。

「学長!王城から迎えの馬車が来ました!」

「迎え?何故そんなものが?」

「それとこれを!」

先生が手渡した紙を受け取ると、学長は顔色を変えて私の方を見た。

「?何かありましたか?」

「すぐにお前を連れてこいとのことだ。だが、何故自らの息子より先にお前の心配なんだ?一体お前は何者なんだ?」

色々困惑している様子だったが、騎士さんが部屋に入ってきて私たちを囲むようにして連れ出した。変な噂が立たないように何とか言いくるめられたと思うが大丈夫だろうか。・・・ラクスさんには後で話しておこう。

「それにしても、誰がやったんですかね?」

「最初はお前かと思ったが、どうやら違いそうだな。」

「そんなことするわけないでしょう。」

「はぁ、王城から連れてこいと言われたんだぞ?普通は疑われるのは必然だからな?」

馬車に揺られながら王城まで外の景色を眺める。こうして外の景色を眺めるのも久しぶりなので意外と楽しかった。

「まもなく到着します。ご支度ください。」

同乗している騎士さんの言葉にササッと身だしなみを整える。

「なんだか不思議だな。」

「何がですか?」

「会って数回の生徒とこうして王城を歩いてると考えるとな。」

騎士に案内されながら王城の中を進んでいく。やがてあの時も通された扉の前に着いた。

「どうぞ、お入りください。」

「はい、ありがとうございます。」

躊躇いもなくガチャっと扉を開ける。今回は急だったこともあり、部屋にいるのは数人だけとなっていた。

「いきなり呼んですまなかったな。」

国王は少々緊張したような顔をしながらそう話しかけた。

「学園内で毒殺未遂があったと聞いてな。詳しい状況を教えて欲しい。話は聞いているが、当時者としてな。」

国王はそう言うと私の方を見た。確かに当事者だが、私でよかったのかは気になるところだ。

「別に話すのは構いませんが、どうして私なんです?あの場にはこの国の有力貴族もいたでしょう?」

腕を組みながら国王を見つめる。しばらくお互い沈黙した後に諦めたように国王が話し始めた。

「あくまで私の予想だが、サリス嬢はその毒を飲んだのだろう?」

国王の言葉に学長は驚いたような顔をする。

「へぇ、どうしてその意見にたどり着いたか。しっかり聞いてみたいものですね。」

少なからず私の地雷を踏み抜いた可能性に気がついたのだろう。部屋全体に緊張が走った。

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