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アルカディア12

この日もいつも通り学校に登校していつも通りの授業を受けるつもりだった。私の教室の前に生徒会長が立ってさえ居なければ。

「おはようございます。」

その横を何事も無いように通り抜けようとする私の肩をガシッと掴まれた。

「残念ながらあなたに用があるのです。」

「・・・はいはい。何でしょうか?」

入口を塞いでいたので反対側の壁に寄りかかるとそう言って生徒会長の顔を見る。

「そういえば王子でしたっけ?」

「そういえばって、忘れてたのか?」

「元々興味が無いだけですよ。あくまで留学としてきているだけですし、終われば帰りますから。」

なんでもないことのように言ったが、他の子が聞いていたら色々問題になりそうだ。周りに人がいなくてよかった。

「その話は置いておくが、生徒会と各部の部長が交流するためのお茶会があるのは知ってるか?」

「話程度には。」

「なら、話が早い。実は今日の放課後に開催することになったんだ。」

「それはまた、随分と急ですね。」

「部長が決まらない部がひとつあってな。昨日ようやく部長が決定したんだ。本来ならもっと早く予定していたから少しバタついてな。申し訳ない。」

「謝らなくていいですよ。場所はどこですか?」

「学園内にあるサロンで予定してる。」

「わかりました。」

「急ですまなかったな。よろしく頼む。」

生徒会長は申し訳なさそうな顔で頭を下げたあと廊下を歩いていった。

「噂をすればなんとやら。」

呟くようにそう言った後教室に入った。他の子に色々聞かれたが、交流会だと言えばなるほどと納得していた。それと同時に部長をやっていることに驚かれたが。

「おつかれ。朝から大変だったな。」

「お茶会ですって。今日の放課後。」

「そっか。頑張れよ。」

ラースナー様が介入できない以上詳しい流れも把握しにくい。面倒に感じながらもやるしかない。

「はぁ〜・・・。」

思わずため息が漏れてしまった。こういう作法が見られる行事だと隠している地位がバレかねない。

「せめて顔見知りの人連れてかせてよ〜。」

放課後のことが気になってしまい、あまり授業に身が入らずボーッとしていた結果いつの間にか放課後になってしまっていた。

「それじゃあ頑張れよ。何かあったらすぐに行けるように近くにはいるから。」

「ん。頑張ってくるー。」

荷物をまとめ身だしなみを簡単に整えたら教室を出てサロンに向かった。

「あっ、サリス!待って私も行く!」

慌てたように私の後を追ってきたエリィ。そういえば生徒会メンバーだったなと思い出す。

「はぁー。緊張するー。」

「本当に。違った意味で緊張するよ。」

「へぇ、サリスでも緊張するんだー!」

「そこまで図太い性格してないよ。程よく緊張した方がいいと思うしね。」

そんな話をしているとサロンに着いた。既に何人も集まっていて話しているところを見るにお互い顔見知りが多いのだろう。エリィも生徒会メンバーの方に言ってしまったため1人きりになってしまった。時間までもう少しあるようだし、どこかに座って待っていようと壁際にある椅子を見つけて座った。

「ふぅ。」

一息ついて待っていると、こちらに近づいてくる人を見つけた。

「あれ?君はあの時の・・・。」

声をかけてきたのは演劇部を見学しに行った時話しかけてきた人だった。

「あなたは演劇部のところでお会いした。」

「良かった。覚えてくれていたんだ。あの時は自己紹介も出来なかったからね。改めて演劇部部長のラクスと言います。良ければ覚えて言ってね。」

「挨拶されてしまっては返さないと失礼ですね。古文書研究部の部長になりました、サリスと申します。今後ともよろしくお願いしますね。」

お互いニコッと笑って挨拶をする。

「古文書研究部と言うとかなり歴史のある部活だったよね。そんな部の部長なんて。惜しい人を逃したかな?」

「ふふ、ご冗談を。歴史はあっても人気はない部活ですからね。」

「そういえば、君がくれたあの言葉も古語だったようだね。訳すの大変だったよ。」

「訳してみて、どう感じましたか?」

「改めて見直したよ。確かに今の演劇では足りないものがあると気がついたよ。」

「それは良かったです。」

意外とラクスさんと話していると楽しくて盛り上がってしまっていた。そんなこんなで時間になったようでそれぞれの席に案内された。席は学年ごとに別れているようで、すぐ隣にエリィが座った。

「サリス!演劇部の部長さんと仲良かったの!?」

「仲がいいって、見学に行った時少し誘われただけだよ。しっかり話したのは今日が初めて。」

「それでもすごいよ!」

「はいはい。一旦落ち着く。」

若干興奮気味のエリィを落ち着かせていると、それぞれの前に紅茶の入ったカップが置かれていく。

「そういえば、何杯目に入れられるのか聞いてなかったな。」

「?何か言った?」

「いや、何にもない。」

私の呟きに反応したエリィを流しておく。すると生徒会長が立ち上がって話し始めた。

「今回こうして集まってもらった皆はそれぞれが人数が違えと人を纏める者だと思う。これからも良い学園を作っていくのに協力をお願いしたい。それではお茶会を楽しもう。」

生徒会長の言葉に集まったみんなが拍手を送る。軽く頭を下げたあと生徒会長は紅茶を飲んだ。それに続くように他の子達もミルクを入れたり砂糖を入れたりして紅茶を楽しみ始めた。私もストレートでは少し苦手なのでミルクを貰い少し入れてかき混ぜる。

「あっ、私も1つお願いします。」

隣にいたエリィもミルクを貰い紅茶に入れていた。

「どうしてもそのままだと飲めなくて。」

「私もですよ。楽しんで飲むには少し苦手なので。」

さすがは王子が居るだけはあり、紅茶からはほんのりとだが優しい香りが香ってくる。その匂いだけで高級な茶葉だとわかるぐらいだ。香りを堪能したところで一口口に含む。国が違えばここまで味も変わるのかと思い驚きながら二口目を口に含んだ時、少し離れたところからガチャン!という音が聞こえた。ふとそちらの方を見ると、最初に紅茶を飲んだ生徒会長が青白い顔で机に倒れ込んでいた。

「か、会長!?」

とっさに近くにいた人が立ち上がり近寄ろうとしたが、その人たちがことごとく膝をつき倒れていく。どう見ても毒が混じっているのは明白だ。

「全員紅茶を吐き出せ!毒だ!」

すぐにこの状況を理解した人がそう叫んだが、既に半数以上の人が意識を失っている。残っているのは紅茶よりも先にお菓子を食べていた人や手をつけていなかった人だけ。

「サリス!大丈夫!?」

「・・・え、えぇ。」

体を蝕む毒を解毒しながら何とかそう答える。そこまで強い毒とは考えていなかったため、かなり辛い。

「と、とりあえず先生に連絡!動ける人は救助に回って!」

何とか冷静を取り戻した人が周りに向かってそう指示をする。その声でハッとした人が校舎内に走っていく。他の人は意識のない人を地面に寝かせる。

「大丈夫かい!?」

椅子に力なく座る私に気がついたラクスさんが駆け寄ってきた。軽く手を挙げて応えると自らの肩を貸して地面に寝かせてくれた。

「一体誰が・・・。」

未だに困惑が多いようで、ボーッとしている。

「無差別的なものでは無いでしょう。」

解毒が進み普通に話せるくらいにはなってきた。

「毒が少なかったようだね。良かったよ。」

ホッとした様子のラクスさん。

「まさか、私がここまでの状態になるとは。驚きです。」

手足の自由も聞いてきたので体を起こす。ラクスさんが心配そうに見つめてきたが笑いかけておく。

「毒に対して完全耐性がある私をここまでにするとは、一体どんな毒なんでしょうね。」

独り言のようにそうつぶやくと、指に着いていた紅茶を舐めるとる。程よく痺れる舌にフッと笑った。


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