表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/110

アルカディア8

私の前に立った先生。

「改めて、ようこそ。古文書研究部の部屋へ。」

「古文書研究部?」

「ええ。この部屋もれっきとした部室よ。まぁ、部員はあの子ひとりだけど。」

そういうと若干悲しそうな顔をした。

「えっと、どうして私を呼んだんですか?先生。」

「そんな固くなくていいわよ。私のことはトウコでいいから。」

そういったトウコ先生は1冊の本を取り出して私に差し出した。

「これは・・・。」

本の中身を見て驚愕した。そこにあったのはエルドラドの自宅で読んだものと全くおなじ内容が記された本だ。だが、この本は持ち出し禁止のはず。

「すごいでしょ。実はその本持ち出し禁止なはずなんだけど、いつかの大戦の時隠して持ち出したらしいのよ。返そうにもその事実がバレたら国の関係が悪くなるってことで放置されてたの。さすがの貴方でも読んだことないんじゃない?」

確かにこの本は私たち位の地位がなければ読んだことは無いだろう。だが、内容的には言い伝えと変わらないのでエルドラドの国民にはそこまで重要ではないだろう。だが、それ以外の国では外力を理解するのに有用なもののように感じる。

「ええ。確かに普通なら読んだことは無いでしょう。」

「そうでしょう!・・・いま普通って言った?」

「ええ。トウコ先生。残念ながら私はその普通からは外れてしまっています。」

ゆっくりと本を閉じる。すぅっと目を細めながら笑みを浮かべてトウコ先生を見つめる。

「は、はは・・・。」

少し恐怖するように後ずさった先生。

「?どうして逃げるんです?本についてお話しましょうよ。」

私がゆっくりと近づくと、一瞬の隙をついて先生は私の横を通り抜け、扉を開けようとした。

「ちょ!なんで開かないのよ!」

逃げようとすることは想定済み。ならば先に扉や窓を閉じておけば逃げ道はなくなる。

「逃がしませんよ?」

指を扉に向ければ扉の隙間を埋めるように氷が生まれる。窓の方も同様だ。

「そうですねー。このままエルドラド皇国に連行してもいいのですが、それでは将来的に私の望む形には落ち着かないでしょう。もちろんラースナー様も。」

「じゃ、じゃあどうするつもりよ!」

「簡単な話です。卒業する時、私と一緒に来なさい?そうすれば私が何とかしましょう。」

「何とかするって、そんなこと国のトップじゃないと出来るわけないでしょ!?」

トウコ先生のその言葉に私は髪につけていた変装用の道具を外した。

「ふふ、それができるから言っているのですよ。」

「できるって、いや、そんなはずは・・・。」

おそらく可能性に気がついたのだろう。いくら謎がある国とはいえ、隠している訳では無い。そのため調べればいくらでも出てくるだろう。そして、私と同じ歳の子が現皇帝にいることや、婚約者の発表があったことも。

「改めまして。リヨン家令嬢のサリスと申します。以後お見知り置きを?」

「リヨン家って、あの?」

私の家をどういう家として認識しているか分からないが、エルドラド皇国のリヨン家と言えば恐らく答えは決まってくる。

「さぁ。その答えは保留にしておきましょう。」

持っていた本をもう一度開いて先生に聞いてみる。

「それで?どこまで解読できたんですか?」

「どこまで解読って?どういうこと?」

「長いことこの本はここにあったのでしょう?なら解読も進んでいるはず。なんせ古語で書かれた本なんですから。」

ペラペラと本のページを進めていくとまだあまり開かれていないのか綺麗な状態のページがあった。

「なるほど、ここまでですか。」

「えっと、どうしてそんなこと聞くんですか?」

「決まっているでしょう?入るからですよ、古文書研究部に。」

私がそう言うと、トウコ先生は驚いた顔をした。

「入るんですか!?ほんとうに!?」

「ここにいた方が管理しやすいでしょう。それに、誰にも邪魔されない場所も欲しかったですしね。」

慌ててトウコ先生は1枚の紙を取り出して私に手渡した。

「この紙に、名前だけ書いて!」

言われるがまま名前を書くと、トウコ先生は慌ただしく部屋を飛び出して行った。

「なんなの?いったい。」

その様子をボーッと見ていたが扉にへばりついていた氷を見て、力を流していないから弱まっているとはいえ、どれだけの力でこじ開けたのかと苦笑いをした。そのまま部屋で待っていると、嬉しそうな顔をした先生が帰ってきた。

「ありがとう!これで部として継続できるよ!」

いきなりの発言に思わず吹き出しかけた。

「継続って、もしかして廃部寸前でした?」

「あはは、実はね。部員がさっきの子しかいなかったから。」

「それでよく今まで持ちましたね。」

「まぁね。今はこんな感じだけど、学園開校の時からある歴史ある部だからね。どうにか繋げてたみたい。」

とりあえず、今日のところは時間も遅いし帰ることになり、また後日詳しい説明をしてくれるらしい。そんなこんなで寮に戻った私はラースナー様と今日の事を報告しあっていた。

『えっと、じゃあトウコ先生には正体がバレたかもってこと?』

「あくまで可能性ですが。少なくとも私のことは知っているようでした。」

向こうからため息のようなものが聞こえた。

『一応相談して欲しかったな。まぁ、そっちは任せるけど。』

「了解です。そういえば、イベントの方はどうだったんですか?こっちでは起こってなかったみたいですが。」

『発生したとこは見逃したが、恐らく起こってると思う。2人が一緒にいるの見たから。』

「そっか。じゃあこれからは?」

『分かんない。どのルートに行くかで変わるからあんまし確実なことは言えない。』

「じゃあさ。確実に起こるイベントはないの?」

私がそう聞くと、少し間があったあとラースナー様が1番近いイベントを教えてくれた。

『確か、お茶会があったはずだ。部活動の部長と新生徒会メンバーの顔合わせだったはず・・・。』

何故か少し含みのある声で話すラースナー様。

「何かあるんですか?」

『いや、実はこのお茶会中に毒殺未遂事件が起こるんだよ。もし、参加したとして今後に影響するかもだろ?』

「毒自体は私なら問題ないですが、ゲーム的な問題と私たちの身分的問題ですね。」

『ああ、最悪身分は隠してるからどうとでもなるが、問題はゲーム的な方だろう。』

ラースナー様が頭を悩まず問題。薄々察しは着いているが、犯人はゲームの登場キャラなのだろう。それに気がついた主人公が〜的なシナリオだろう。

「まぁ、完全傍観に徹すれば問題ないでしょう。」

『毒で苦しむ演技もな。』

「あら、初めての毒だと私も倒れますよ?」

『お前が倒れる毒が今この世にどれくらい存在してると思ってるんだよ。』

「いや、量によっては普通に寝込むからね?」

『寝込むで済んでる時点でおかしいのよ?』

耐性を持っている以上仕方ないことだろう。と言うと、今度は耐性持ってることが異常と言われてしまった。解せぬ。

「はぁ、どうせ部長になれば参加できるし、その時がきたらまた考えるよ。」

『はいはい。』

ラースナー様はそう言って切った。私も浮かばせていた物を引き出しにしまう。

「サリス様。そのお茶会での犯人、こちらで確保しておきましょうか?」

「いや、大丈夫。」

「そうですか。分かりました。」

私のことを思っての発言だろうが、ここは大人しくしていてもらう。

「また、必要になったら動いてもらうからさ。」

そう言って笑いかけておけば安心してくれるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ