アルカディア6
午前の授業が終わり昼食の時間私はラースナー様と一緒に中庭が見おろせる場所に来ていた。
「ここで最初のキャラクター紹介がある。」
「こんな中庭でですか?」
「それはゲームのシナリオなんだから仕方ないだろう?」
私たちが見下ろす中庭では事前に聞いていたゲームの登場キャラが勢ぞろいしている。
「順番に紹介していくと、主人公のエリィとこの国の王子のレオ。んで次はカナリア、ハナマ、カナルだね。ここからだと少し隠れてるけどあの木の下にいるのがエスズっていう主人公のライバル令嬢かな。その従者のミューダも攻略対象。」
「なかなか面倒くさいですね。名前がごちゃごちゃになりそう。」
「まぁ、積極的に関わることはないから安心していいんじゃない?」
中庭を見下ろしながらここに来るまでに買っておいたパンをかじる。
「まさか、国のトップになる人がこんなところでパンかじってるって知ったらみんなビックリするよね。」
「でもこっちのが気が楽だしここにいる間はいいんじゃない?」
「それもそうか。そっちのパン一口いいか?こっちのもあげるからさ。」
私が差し出したパンにラースナー様が、反対に差し出されたパンに私がかじりつく。
「ふむ、これは蜂蜜ですかね?」
「正解。こっちはなんだろバター?」
「半分正解ですかね?クリームらしいです。」
「わかんねぇー。」
お互いわいわい言いながらパンを食べ終えるとラースナー様に聞いてみた。
「この後ってまだ何かイベントあったりします?」
「いや、ランダムイベントだから確実ではないけどあるかもしれないね。部活に入るか入らないかの分かれ道だったはず。ルートとしてはハナマだっけな?演劇部だったはず。」
「そうなると、授業後ですかね。場所って分かりますか?」
「その場所がランダムなんだよね。まぁ、今日は部活見学があるから二手に別れるのも手かもね。」
「演劇部が活動してるところと、もう1箇所だよね。どっち行く?」
「サリスは演劇部の活動場所に。他のところはこっちで見るよ。」
「了解。じゃあお願いします。」
一通り打ち合わせが終わったので私たちは教室に戻って午後の授業の準備をし始めた。
「というわけで選択授業だったけど思いっきり離れましたと。」
今日最後の授業は選択式の授業で、座学ひとつと実技ふたつのうち1つを選択する方式だった。ラースナー様が実技を取ったと言っていたので私も実技を取ったのだが見事にお互い違うほうを取っていてこうして離れてしまった。
「はぁ・・・。」
完全に私の落ち度だが、ため息が出て仕方ない。
「はーい。若干1名ブラックオーラ満々だけど始めるよ。」
少し苦笑いで私のことを見ながらそういう先生。
「それじゃあまずこの授業だけど、召喚を教える授業ね。それで、1回目の授業ではさっそく契約をしてもらいたいの。」
先生の言葉に生徒全員がザワついた。
「落ち着いて。そこまで慌てなくても、全員が契約できるように簡単な契約も用意してるから。でもその前に1回は通常の契約を試してみようか。」
そう言って先生は地面に置いてあった絨毯を広げた。そこには円形の模様が刻まれていて、魔法陣のように見える。
「さて、我こそはっていう子はいるかな?」
先生のその問いに一番最初に答えたのはエスズという昼にラースナー様に教えてもらでた令嬢だった。少し背伸びをすればミューダという子も見えた。
「お、それじゃあエスズ君。円の中心に行ってくれるかな?」
「分かりましたわ。」
ズンズンと進んでいくエスズ。その堂々さはさすがは貴族の令嬢と言ったところか。
「やり方はわかるかい?」
「本で読んだだけなので、分かりませんわ。」
「じゃあまずこのナイフで少し血を取ってくれるかな?」
先生が渡したナイフを少し躊躇ったあと指先に当てた。エスズは少し痛そうな顔をした。その指先からは赤い血が数滴絨毯に落ちた。
「そのナイフを足元においてくれるかな?後は反応してくれのを待とうか。」
エスズは言われた通りナイフを足元においた。すると直ぐに絨毯が光り、何かが飛び出した。強い光だったので、思わず腕で顔を隠してしまったが光が収まり腕を外すと、私ですら驚くことが起きていた。
「これは、驚いたな。ハーピーか。」
エスズの前には半人半鳥のハーピーが立っていた。
「契約を受けました。これからよろしくお願いします。」
ハーピーのその人はエスズに膝を着いて姿勢を低くした。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね。」
エスズは少し興奮した様子だがそれでも落ち着こうと頑張っている。
「さて、どんどんと行こう!」
エスズの契約成功を受けて次々と生徒が召喚に挑戦して言った。だが、成功したのはその半分ほどであとの子は完全ではなかったり失敗したりしていた。失敗した子は先生が用意したもうひとつの絨毯で契約をしていた。そんなことをボーッとみていると後ろから声をかけられた。
「もし?後は貴方だけですわよ?」
「え?あっもう私の番か。」
いつの間にか近くに来ていたエスズにそう声をかけられて気がついた。
「順番が来るのが早すぎたかな?」
「いえ、ボーッとしてました。」
「やり方は見てたからわかるか?」
「ええ、何となくですが。」
先生は頷くとナイフを渡してきたが、それは断っておいた。
「どうも、必要なのは血の量なんですよね?なら大丈夫です。」
先生にそう言って絨毯の中心に立つと手首に歯を立てて噛み付く。鈍い痛みがして口を離せばしっかりと歯型に皮膚がえぐれていて血が出ている。
「さぁおいで。」
血がボタボタッと絨毯に着いた瞬間エスズの時と同じように光り何かが飛び出した。
「呼ばれましたー!」
飛び出したのは予想通りセイだった。飛び上がったセイはそのままの勢いで私に向かって抱きついてきた。
「よいしょー!」
上手く衝撃を逃してセイを捕まえる。
「よしよし、元気そうでよかったよ。」
「えへへー、お母さんもだよー。」
腕に着けたリングで繋がっているとはいえこうして姿を見ないと分からないこともある。見たところ問題は無いようだし大丈夫そうだ。
「ほんとに今年はすごいな。交流ができる子と契約できる子がこんなにもいるとは。」
「この後はどうするんですか?」
セイを胸に抱きかかえながら先生にそう聞いてみた。
「今日はこの後はそのまま交流の時間にするつもりだから特にすることは無いぞ。」
「なるほど、そういうことなら。」
私はセイを連れて学園の中庭に来た。
「前来た時静かな場所だと思ったからセイも連れてきたかったの。」
中庭の木の下であぐらで座ってセイを膝の上に乗せる。私の体に寄りかかるセイを撫でていると誰かが近づいてくる気配があった。
「隣いいですか?」
声をかけられた方に顔を向けると、そこにはエスズとハーピーの2人が立っていた。
「どうぞ。私もゆっくりしているだけなので。」
少し動いて隣に座れるぐらい隙間を空ける。
「ありがとうございます。」
隣に座ったエスズは1枚の紙を取り出して鳥人に質問を始めた。
「えっと、名前がまだないとの事でしたね。こちらで決めても宜しくて?」
「はい。契約者に付けてもらうのが決まりですので。」
「分かりました。と言ってもすぐに思いつかないので、後々決めましょう。次に、得意なことは何でしょうか?」
「ハーピーですので、風を操ることです。後は空を飛ぶことができます。」
ボーッとしながらエスズとハーピーのやり取りを聞きながしていると、ちょんちょんとセイ呼びかけてきた。
「お母さん。あの羽、モフモフしたい。」
「ふふ、やんちゃだねー。でもダーメ。」
「はーい。帰ったらモフモフしよっと。」
少し悲しそうな顔をしながらも帰ればモフモフの子がいるとわかっているからか我慢してくれた。そんなセイを見ていると再び声をかけられた。




