アルカディア5
見事に吹き飛んだ人形を二人で驚いて見つめる。とりあえずラースナー様の近くに行こうと思い、軽く飛んで移動した。
「・・・何割の力だしたのよ。」
「それはこっちのセリフだが。」
どうしたものかと困っていると先生が慌てたように近づいてきた。
「お前ら!怪我してないか!?」
「怪我はしてないんですが、人形が・・・」
「そこは気にするな!換えはいくらでもあるから。それよりもだ。1回付いて来てもらってもいいか?」
先生にそう言われて半ば強制的に校舎の中に連れられ1つの部屋に入れられた。
「学長、今年は大豊作ですね!特待生の子たちの他にこの子達も!」
「入っきて早々意味わからんこと叫ぶな。まったく。」
部屋にいた人は頭が痛そうな顔をして見ている。学長と呼ばれていたからそういうことだろう。
「それで?先程の音は大方お前が関わってそうだな。」
「その件ですが、この二人が練習用の人形を吹き飛ばしました。」
急に真面目な口調になった先生と驚いた顔をしている学長。
「は?吹き飛ばした?あの人形をか?」
「ええ、しかも根元以外残ってないです!」
「それはもう、消し飛ばしただろうが!」
先生と学長のやり取りに置いていかれる私たち。どうしようかと思っていると学長から質問が飛んできた。
「まぁいい。二人とも、本気でやったのか?」
「いえ、4割ほどですかね?半分は行ってないです。」
「同じくらいだな。全員本気でやって無いようだったし、力の制御とか見てたんだろう?」
ラースナー様の意見には私も同意した。レベルで分けるとの事だったが、力の制御を見ていたように感じた。
「あれで、半分行ってないのかよ。」
「当たり前です。あそこで本気でやっていれば校庭無くなってますよ。」
「というか、あれくらいなら誰でも出来るのでは?少なくともエルドラド皇国に住んでいて、ある程度学んでいればあれくらいできるはずだが。」
「ええ、私もラースナー様も10才の頃には既に出来ましたから。」
なんでもないように話していると何故か本当に驚いたような顔をされてしまった。
「エルドラド皇国では当たり前なのか?」
「そう言ってるでは無いですか。」
「・・・この国ではそれは当たり前では無いのだよ。」
絞り出すようにそういう学長。
「庶民どころか国を守る騎士であろうと、お前たちのしたことは絶対に出来んだろう。」
今度は私たちが驚いた顔をした。たしかに事前知識として外力を多く使っていないとは知っていたが、あんなことすら出来ないとは完全に予想外だった。が、それで納得した部分もある。
「なるほど、迎えに来ていた騎士さんたちが弱そうに感じたのもそれが影響してたんですね。」
「騎士が弱いだと?」
「ええ、だって私の護衛として着いてきた騎士がそう言ってましたのだ。」
「ちなみに聞くが、その騎士の強さはどれくらいなんだ?」
少し思い出すようにメールの強さがよく分かるエピソードを探した。
「えっと、私が本気で張った氷の壁を一撃で壊されましたね。あっ、氷の壁はラースナー様が殴っても壊れなかったです。」
「お陰でこっちが怪我したがな。」
学長と先生はため息を着くと、今日はもう大丈夫だと言って私たちを部屋から出した。次の授業まであと数分という時間になっていたので、私たちは急いで教室に戻った。その後の授業では特に国で学んだことと変わりなかったので普通に授業を受けて寮に戻った。
男子寮と女子寮で別れているので一緒にはいることが出来ないが渡してある氷を通せば話せはする。
「個人的に少し気になったので街の方に出てみたのですが、やはり街中で外力を使っていないようでした。」
メールが街で見てきた物について話している。リャナの方も寮の中に警報機らしいものはなく、試しに外から侵入してみても誰にもバレなかったという。
『当たり前のように侵入してるの面白いね。こっちのソキとマナスも同じ意見らしい。』
『メール様とは少し違う区画の方を見てきたのですが、街灯に使っているだけのようです。』
ラースナー様に着いてきている騎士のマナスさんと従者のソキさんも同じように街を見てきていたらしく、そう報告してくれた。
「外洋に繋がる以上ある程度防衛力は欲しいところなんだよなー。」
『だが、教えたとしても使えるの?エルドラドにある技術は全部外力を使える前提で作られてるし。』
「どうせ学園に通っている間でやろうとは考えてないよ。あくまで未来の話。」
『その方がいいね。明日からはメインストーリー始まるし。』
少し楽しそうにそう話すラースナー様。話によると今日はゲームのオープニングと後の話に出てくるとこをやったらしい。
「今日はもう寝るでしょ?」
『そうだな。いい時間だし。』
私はそう言って繋がりを切った。1回だけ伸びをしたあとメールを連れて寮の庭に出た。
「国で見た星とは違うね。」
あかりが少ないおかげか強い夜空に浮かぶ星がよりくっきりと見えている。
「サリス様。」
「ん?なにー?」
「そのお姿は、他の方には見せない方が良いとだけ伝えておきます。」
「よくわかんないけど、わかったよ。」
しばらく星空を見たあと満足した私は部屋に戻りリャナが用意してくれていたベッドで休んだ。
翌朝ボーッとする頭を振って無理やり覚醒させたあと学園に行く支度をし始めた。必要なものを鞄に入れて変装用の道具を髪につけて寮を出る。学園に向かって歩く生徒たちの中をスタスタ歩いて校門前まで来た時後ろから声をかけられた。
「あっ、やっぱりそうだ!昨日生徒会室に来てた子だよね!」
ふっと声の方に顔を向けるとそこには昨日あった男子が立っていた。
「えっと・・・。」
「あぁ、自己紹介がまだだったね。カナリアだ。リアって呼んでよ。」
「リアさんですね。おはようございます。」
「うん、おはよー。いやーまさか生徒会に勧誘したのも驚いたけど、それを断ったのもさらに驚きだね。」
「そうなんですか?」
「うん、この学園の生徒会にいたって言うだけで能力の高さを証明してるものだもん。」
「なるほど。」
「まぁ、過去にいなかったわけじゃないからね。」
教室への道が違ったためここでリアさんとは別れて自分の教室に向かった。
「おはよー!」
教室に入って自分の机で静かに外の景色を見ていたらエリィさんがそう言って近寄ってきた。
「あぁ、おはようございます。」
「眠そうですね?」
「どうにも朝は苦手でして。」
出かけた欠伸を我慢していると、エリィさんがじっと私のことを見ていることに気がついた。
「?どうかしましたか?」
「え?あっいやなんでもないの。えっと、その首のアクセサリーが気になってね?」
「これですか?」
首につけたチョーカーに触れるとエリィさんがそうそれ。と言った。
「これは国で買ったものですよ。」
「国って言うと、エルドラド皇国?」
「ええ。数年前に買ったものです。」
「そうなんだ!私も買いに行きたいなー、なんて。」
「まぁ、まず無理でしょうね。他国の国王ですら入れない場合が多いのですから。」
「だよねー。」
すこし残念そうな顔をしたエリィ。だが、すぐにいつも通りの顔に戻って他の子のところに行ってしまった。
「なんだったんだろう。」
「どうかしたか?」
「いや、何もない。」
いつの間にか来ていたラースナー様を誤魔化しておいて授業の準備を始めた。




