アルカディア2
迎えが来る前にみんなと合流出来たので、リャナに手伝ってもらいながら支度をしていると、大きな影が出来た。ふと上を見上げるとそこには大きな飛行船が飛んできていた。
「デカイな。」
「ええ。民間用の倍くらいないですか?」
同じように見上げているラースナー様と話す。
「あれが、迎えということでいいんですかね?」
「まぁ、そういうことじゃないか?」
最初こそ驚いたが、明らかにうちの国が持つ飛行船と違うところがある。
「・・・遅くない?」
「ああ、遅いな。あれだけ大きければもっと早く動けそうだが。」
ゆっくりゆっくりと進んでくる飛行船を待っていると、段々と高度を提げてきているのがわかった。
「どうやって乗るんだろう。私たちは飛べるけどさ?」
「さぁな。」
そんな話をしていると、飛行船から縄で吊るされたゴンドラが降りてきた。
「お迎えに上がりました。」
ゴンドラから降りてきた鎧姿の男が軽く頭を下げた。
「わざわざご苦労さま。それでは行きましょうか。」
ラースナー様と並んでゴンドラに乗り込んだ。リャナ達も一緒に乗り込むとゆっくりとゴンドラが登り始めた。
「長旅ご苦労さまです。ここからは我々が護衛をさせていただきます。もしご質問等あれば我々に。」
「そうですか、では早速ひとつ。この飛行船、速度を抑えているんですか?」
「ラースナー様?深入りすぎでは?」
「ははは。問題ございませんよ。お察しの通り速度を抑えております。何分動かす機会もありませんので、我々も慣れていなくて。」
「なるほど。そうでしたか。」
ラースナー様がそう言って見上げていると、男が何かを聞きたいような感じだったので話しかけてみた。
「何か聞きたいことありましたか?」
「え?あ、いえ大丈夫ですよ。」
少し慌てたようにそう答えたが、しばらく黙ったあと申し訳なさそうに話し始めた。
「無礼を承知でお聞きしたくて、御二方は飛行船を動かせるのですか?」
男の質問に私の方を見たラースナー様。その反応に私は両耳を覆うような仕草をした。
「動かせるかという問いなら答えは『はい』です。」
「そうなんですね。」
男はもう少し聞きたそうだったが、これ以上は失礼がすぎると思ったのか聞いてこなかった。
「到着です。王都までは数時間ほどです。ご自由にお過ごしください。」
「ええ、ありがとうございます。」
私はラースナー様と別れて艦首の方まで歩いていった。私の後ろをリャナと皇城で私の先生をしてくれたメールさんが着いてきた。
「こうして来てみるとエルドラドとは全く違いますね。」
「そうですね。国境を超える時の検査もそこまで厳しくなかったですし。」
「先程の男もだが、この船に乗っているものなら全員倒せそうだな。」
艦首から見下ろしながら小さく呟いた。2人も色々感じたようだ。
「まぁ、今回の目的は敵情視察じゃないからいいけどね。」
「でも、サリス様なら一瞬では?」
「やる意味ないでしょ?」
「冗談ですよ。それよりも、飛行船なんて持ってるのは驚きですね。」
メールさんが飛行船を見渡しながらそういった。
「多分、かつての大戦中にエルドラドが使ってた飛行船の改良型だよ。」
「そうなんですか?」
「確証はないけどね。羽を回してる動力から音が出てるから昔の吸引型の方だと思う。」
私が指さした方には定期的に高い音を出している動力があった。
「そういえば、国で使ってる飛行船では聞かない音ですね。」
「完全循環型になってるらしいね。あんまし詳しく知らないけど。」
飛行船は高度を上げたあと少しスピードを上げて飛び進んだ。道なりに進む馬車と比べると倍以上の速度で進めるため、あっという間に目的地が見えてきた。
「こうして高いところから見ていますが、あれが海なんですね。」
遠くの方を見ながらそう呟いたメール。王都の向こうに見える太陽を反射して輝く海。
「近そうに見えるけど、実際はかなり距離あるんだろうね。」
そんなことを話していると、飛行船は少しづつ高度を下げ始めた。
「このまま王城の裏手にある離着陸場におります。その後は国王様の元にご案内します。」
先程の男が私たちに近づいてそう説明してくれた。
「わかりました。」
支度をすると言っても、乱れたところを直すだけでいいのでそこまで時間はかからない。飛行船が着陸すると、ゴンドラで地面まで降りて男の案内で王城に入った。国王の部屋というのは中々遠いところにあるようで、長い廊下を歩いたと思ったら階段を昇ったりとしばらく歩かされた。
「この奥に国王様がお待ちです。私はここまでなので、どうぞお入りください。」
男はそういうと端によった。ラースナー様と並んで扉の前にたった。
「緊張してる?」
「少しだけな。」
ゆっくりと息を吐いた後扉を押して部屋の中に入った。
部屋にはこの国の重鎮であろう人達が数人ほど私たちのことを見ていた。そんな視線を浴びながら私たちは国王の近くまで歩いていった。
「初めまして。エルドラド皇国からまいりました、サリスと申します。」
「同じく、ラースナーだ。突然の事だったが受け入れてくれたこと感謝申し上げたい。」
それぞれが軽く挨拶をして頭を下げた。
「顔を上げてください。こんな機会を逃すほどの愚か者ではございません。」
中央の椅子に座っていた男の人が立ち上がりながらそういった。ゆっくりと近づいてきたと思ったらその人は私たちの前で膝を着いた。
「ようこそおいでくださいました。エルドラド皇国次期皇帝様、皇妃様。」
男がそういったことで部屋にいる人全員にどよめきが走った。
「今の反応を見る限り伝えてなかったんですか?」
「ええ、どうせ信じないと思いましたので。」
「相変わらずですね。驚く顔が見てみたかったのでは?」
「ふはは、やはりサリス嬢にはお見通しでしたか!」
先程までの話し方とは違う崩れた口調で話す私たちに今度は困惑の表情を浮かべている他の人たち。
「そろそろ説明してあげては?」
「それが良さそうだな。この御二方は先程言ったように次期皇帝と皇妃のラースナー様とサリス様だ。今回は身分を隠してエルドラド皇国からの留学生として学園に入ってもらうことになった。」
ザワザワしている人たちの中でひとりが手を挙げた。
「国王はどうしてそのような方とお知り合いなのですか?」
「知り合いの理由か?数年前に招待された場で今回のことを相談されただけだ。断る理由がないだろう?」
いまいち理解ができていない様子のその人。
「そうか、エルドラド皇国がどういう国が知らない者も多いんだったな。」
そういうと国王は集まっている人を見回した。
「おそらく、多くはかつての大戦で共闘した国という認識だろう。だが、王家ではその時代より繋いできた記録がある。もちろん私も読んだ。それを伝えることは出来ぬが、読んだあとの感想は常識が違うな。だ。」
「常識が違う、ですか。」
「まぁ、実際に話を聞いた方がいいだろう。少し頼めるか?」
国王はそう言って私たちを見た。話すのはいいが何を話すか考えていると、飛行船について話してくれと言った。
「飛行船ですか?機構とかについては詳しくないので話すことは控えますが、私から言わせてもらうとしたら、『時代遅れ』ですかね。」
私の言葉でそこにいる人全員が驚いた顔をしている。
「サリスの言葉に補足しますと、我々の国エルドラドではあの型の飛行船は何年も前に廃止してます。詳しくは明言出来ませんが、新しい動力を使った飛行船が一般的です。」
私の言葉を引き継ぐ形でラースナー様が話してくれた。
「ということだ。少なくとも私自身を含めてエルドラド皇国について知らないことが多いという事だな。」
国王はそう言って絞めた。その後は部屋の前で待っていた男に連れられて学園の寮に入った。入学式は明日の朝行われるそうで、一般の学生は既に寮に入っているらしい。では、一般では無い生徒はどうなのか。それは翌日の午後に明らかになった。




