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アルカディア1

時は流れ、5年後。私とラースナー様はアルカディアに向かう馬車に揺られていた。

「国を出てはもう3日。予定では明日の朝に着くらしいが・・・。」

「そう文句を言っても早くはなりませんよ?外の国に行くには馬車を使うしかないのですから。」

窓の外の景色を眺めながらボーっとして文句を言ういるラースナー様。

「はい!わたしはお母さんと一緒で楽しいです!」

私の膝の上でパッと手を挙げたのは私が契約をしている精霊さん。見た目は完全に子供だが、年齢で言えば上だろう。

「そうだね。私も楽しいよ。」

よしよしと頭を撫でると、嬉しそうに笑う。この子との出会いは少し特殊だった。皇城にいる時、一部地域でのみ急激な気温低下があるということでその原因を調べに行った時だ。国境近くにあったその地域に、他国から追われてきたこの子がたどり着き自身を守るために結界を貼っていたのだ。その結果周辺の気温低下が起こった。

「もっと便利なものを知っていると、ここまで退屈なんだな。」

「そこまで退屈なら飛ばしましょうか?」

「いや、このままでいい。それこそ見られたら大変だろ。」

ラースナー様は少し寝ると言って目を瞑った。私としては楽しい旅だが疲労も溜まるだろう。できるだけ静かにしていようと窓の外に目を向けた。

「ねぇお母さん?少し外に行ってもいい?」

「外に?」

「うん!」

少し迷ったが、ずっと馬車の中だと退屈なのは私も一緒だ。ということで、少し外に出ることにした。一応リャナに伝えておいてから精霊さん、セイと一緒に馬車をおりた。

「それじゃあ行ってくるね。国境に着く前には戻るよ。」

手早く変装を終えた私はセイの手を取って移動をした。

「どこか行きたいとこあるの?」

「あのね?少し先に小さな町を見つけたの!そこに行きたい!」

「町ね。了解。」

そういうと、人が乗れる氷を生み出してその上に飛び乗った。セイを抱き上げて乗っても問題ないことを確認してから町に向けて移動し始めた。

「セイはどうして町に行きたかったの?」

「美味しそうな匂いがしたから!」

「そっかー。じゃあ食べてみないとね。」

しばらく平原を飛び進むと遠くの方に建物が見え始めた。少し高度を上げて町に続く道を見つけたのでそこで氷を降りた。

「ここから少し歩こっか?」

「はーい。」

町に向けて歩いていると、門の前に並んでいる人の姿が目に入った。その最後尾に並んでいる人に話しかけてみた。

「すみません。これってなんの列ですか?」

「ん?これか?どうも警備が厳重になったとかでな。色々調べてるらしい。」

「なるほど。」

「見たとこそこまで荷物ないみたいだし、話せば通してくれるかもだぜ?」

そう教えてくれたその人にお礼を言ってから私は列の横を通り門の前まで来た。

「おや?町に入りたいなら列に並んでもらわないと・・・。」

近づく私たちに気がついたその人は何故かピタッと止まってしまった。

「?どうかしましたか?」

「あ、いや。なんでもない。えっと、随分軽装だな。」

「少し先の村から来ましたので。」

「そうか。」

その人は少し待てと言って1度門の内側に姿を消した。数十秒で戻ってくると、紙を私たちにくれた。

「それだけ軽装なら問題ないとの事だ。入っていいぞ。」

そう言って私たちを通してくれた。図らずも国境を超えてしまったのでこのまま内側で合流する方がいいだろう。そう思いリャナに向かって手紙を飛ばしておく。

「さて、こうやって入り込めたわけだけど。」

「お母さん!あっちから匂いが。」

「はいはい。そう走らないの。」

セイを落ち着かせながら町を歩く。国境に接する町としては少し小さめな町なので歩けばすぐに街の中心に着いた。

「これは、何かあるのかな?」

少し開けたような場所に多くの人が集まっており、何かを待っているようだった。

「あ!お母さん、あそこに!」

セイがそう言って指さした方には屋台が出ており、美味しそうな料理が並んでいた。セイが気に入った屋台で料理を買うと、店主が話しかけてきた。

「始めてみる顔だが、旅人かい?」

「まぁ、そんなとこです。運動がてらに歩いてきたんです。」

「元気だねぇ。俺はもう足が痛くてよ。」

大きな声で笑う店主に人混みについて聞いてみた。

「あれか?実はよ、この村から特待入学の子が出てな。その子を盛大に送り出そうって張り切ってんだ。」

「へぇ。それはおめでたい。」

「ははっ!全くだ!」

特待入学についてはよくわからなかったが、何となくで話を合わせたが、間違いではなかったようだ。

「ごちそうさまでした。」

「おう、また食い来てくれよ。」

店主にお礼を言ったあと私はセイと一緒に町を練り歩いた。どうやら特待入学が出たことは相当おめでたいことのようでそこらじゅうでお祭りみたいになっていた。セイも楽しそうだったので良い息抜きになったようだ。

「さてと、今日はここで泊まることになるだろうし、早めに探しておかないと。」

できるだけ静かな場所にある宿屋に入ると、部屋をとった。宿の人の話では、夜もこのお祭り騒ぎは続くそう。それなら少し覗くのも悪くない。

「さて、セイ。ここからはいつも通りお願い。」

「はい!」

セイは元気よくそう答えると、私の腕につけたリングに触れた。するとセイの体が薄く光り、リングに吸い込まれていく。

『どうですかー?』

「うん、聞こえてるよ。」

セイに問題ないことを確認して私は夜の町に出た。人通り問題多く、昼間よりも屋台が出ている。そんな通りを歩いていると、後ろから声をかけられた。

「あれ?君は昼間の。」

振り向くとそこには門で会った男だった。

「ああ、あの時の。」

門でのことでお礼を言うと、仕事をしただけと流されてしまった。

「それでさ、そのー・・・。」

「?どうかしましたか?」

「この後、ご飯でもどうかな?」

まさかの申し出に驚いてしまった。だが、15の子供を誘うとは。

「ふふ、驚きました。まさか、そんな誘いをされるとは。ですが、申し訳ございません。お断りさせてもらいます。」

「そ、そうだよな。すまなかった。」

「いいえ。大丈夫ですわ。それと、まだ15の子を誘うのは問題があるのでは?」

最後にそう言って笑うと私は男の元を離れた。あれ以上そばにいたらセイが何をするかわかったものじゃない。また声をかけられる訳にも行かないので、宿に戻ることにした。

翌朝、日が差し始めた頃に宿を出た。リャナの返事では昼前にはアルカディアの王都から迎えが来るそうなので、その前に着けるよう早めに移動を始める。変装ができているか確認したあと町を出た。

「さて、飛んでいけばすぐだしゆっくり行きますかね。」

伸びをしたあと座れるぐらいの氷を生み出してその上に腰掛けた。

「後は・・・。」

ポケットからリャナから送られてきた手紙を取り出す。

「それじゃあ、案内よろしくね。」

手紙を放り投げると、どんどんと形を変え紙でできた鳥に姿を変えた。紙の鳥はそのままスーッと飛んでいくので、私もその後を追うようにして飛んでいく。このまま着いていけばすぐに着くだろう。ふと眼下を見ると先程いた町から1台の馬車が出てくるのが見えた。あれがおそらく特待入学に選ばれた子を乗せているのだろう。

「まぁ、私には関係ないか。」

そう判断し視線を戻した。

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