エルドラド9
お昼ご飯を終えた私はラースナー様を迎えるために、服を変えて身支度をしていた。リャナに手伝ってもらいながら進めていると、門の前に車が止まるのが見えた。最後に確認してもらってから、私は玄関に向かった。扉の前で待っていると、ガチャっと扉を開けてラースナ様が入ってきた。
「お久しぶりです、ラースナー様。」
「ああ、サリスも元気そうでよかった。」
お互い、軽い挨拶をしたあとラースナー様を私の部屋に招いた。扉を閉めて、しっかりと鍵をかけたあとラースナー様に向き直った。
「そちらの調べは?」
纏っていたお嬢様オーラを脱ぎ捨てると、ラースナー様にそう聞いた。
「お、おい。私以外にもまだいるんだぞ?」
部屋にはリャナが残っていたのに、私が取り繕うのを辞めたからだろう。ラースナー様は驚いたようにそういった。逆にリャナは急に雰囲気が変わったのと、ラースナー様への態度に驚いている。
「それなら、大丈夫。リャナには前世の記憶があることバレてるから。あと、リャナ。何となく理解してるかもだけど、ラースナー様も前世の記憶があるから。」
サラッと色々暴露した影響で2人とも放心状態になってしまった。このまま固まっていると、時間ももったいないので氷を作ると2人の首に押し当てた。
「うひゃ!?」
2人とも体をビクッとさせて意識が戻ってきた。
「ほら、そんなことより調べたこと。」
私が椅子に座って見つめていると、やれやれと言った感じでラースナー様が向かいに座った。
「まぁ、サリスいいなら何も言わないけど。」
「そうですよ。それでいいんです。」
ラースナー様は持ってきたカバンから1枚紙を取りだした。
「正直、簡単なことしか調べられなかった。サリスとの婚約で色々やらないといけなかったからな。合間合間で調べたのはまとめたけど。」
渡された紙を見てみると、そこにはエルドラドの歴史が調べられていた。
「でも、皇国としての歴史はラースナー様の方がより真実に近いでしょうし、十分ですよ。」
ラースナー様を紙を返すと、今度は私が調べたことを書いた紙を取り出してきてラースナー様に渡した。しばらく、紙を読んでいたラースナー様がふと顔を上げた。
「この国の名前。前世で聞いたことあるのばかりだな。」
「ええ。どれも神話や伝説とかに関係していたはずです。ゲームとかで聞いたことあるだけで、そこら辺は詳しくないんですが。」
ラースナー様にそう言って笑いかける。だが、ラースナー様は真剣な顔で紙を見つめている。
「なにか気になることあった?」
「・・・ねぇ、サリス?このアルカディアっていう国について、少し教えてくれない?」
ラースナー様は紙に書かれた1つの国名を指さした。
「少々お待ちを。」
私は本棚に置いてあるアルカディアに関する本を引っ張り出してきた。
「えっと、何が知りたいんですか?」
「多分だが、アルカディアの王都に1つ学校があるはずなんだが。」
「学校ですね。・・・あっ、ありました。名前は・・・」
「アルカディア王立学園。」
「・・・正解。なんだ、知ってたんですか。」
開いていた本を閉じて、ラースナー様の方を向くと、何故か小さく震えていた。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。それよりももう一箇所調べて欲しい場所がある。」
場所ということで、今度は地図を開いた。
「王都から少し離れたところに、アスルという街があると思うんだ。その中のアスル霊園を探して欲しい。」
ラースナー様に言われた通り探すと、王都から海辺の方に言った場所にアルスという地名があった。別ページにあったアルスの街の詳しい地図を開いた。
「アルス霊園でしたっけ?」
「あぁ。見つかったか?」
「ありましたね。それにしても、よくこんな場所知ってますね。海沿いの霊園なんて、ここに入れたら良さそうだなー。」
勝手に景色を想像して話した。
「良くは無いだろうな。そこは、犯罪に手を染めた者を忘れ去るための霊園だからな。」
「・・・そんなに詳しかったんですか。」
私がそんなふうにに驚いていると、ラースナー様は首を振って答えた。
「詳しいんじゃない。知っているんだよ。前世の頃からね。」
今度は私が放心する番だった。
「えっ、今なんて?」
「前世の頃からだ。私は知っているんだよこの世界を。正確に言うと、アルカディア王国のことを。」
ラースナー様は一呼吸置いてから驚きのことを言った。
「この世界は、ゲームの世界だ。」
「・・・ゲームの世界?ですか?」
「おそらくな。ゲームのタイトルは『アルカディア王立学園〜貴族たちの恋戦〜』」
「アルカディア王立学院って、この学校の名前ですよね?」
私が先程開いていた本に乗っている名前を指さしながらそう聞いた。
「最初は偶然だと思った。サリスが学校を見つけたと言った時も、半分冗談で言ったんだ。そしたらまさかの正解。さらにアルス霊園が存在しているんだ。ここまで条件が揃っていれば、まず間違いないだろう。」
ラースナー様は両手で顔を覆ってため息をついた。そんな様子を頬杖をついて眺めている。
「なんだよ、その顔は。」
「いーや?ラースナー様も可愛いとこあるなーと思って。」
「殴るよ?」
「出来ないくせに。」
ラースナー様は少し悔しそうに私のことを見つめた。
「それにしても、あなたも所謂乙女ゲー?だっけ?やるんだね。」
「それ、どういう意味?」
「だって、前世のあなた美人で性格も良かったからモテたでしょうし。こういう恋愛もしてたのかなって。」
あくまで他人から見た印象だが、前世のラースナー様は美人で間違いはなかったはずだ。
「逆だよ。そのせいで外面だけの奴が多かったの。そう言う奴を相手してたらそりゃゲームの恋に逃げたくなるよ。」
「ふーん。そういうものなんだ。」
「そう言うあなたはどうだったの?」
「私?オタ活で友達になった人と夜まで話すはあったけど、それ以上はないね。」
前世でもゲームで知り合った人と遊ぶことはあったがそこから発展することは無かった。
「はぁ、そういう好きなことを思いっきり語れる友達がいるだけうやましいよ。」
若干ヘラってきたラースナー様を置いておいて、ゲームのシナリオについて聞いてみた。
「そのゲームってどんなシナリオなんですか?」
落ち込んでいたラースナー様だったが、私の質問で一気に立ち直った。
「えっとー。王道系ではあるのかな?プレイヤーは一人の女の子になって、登場するキャラクターを攻略していく感じ。」
「やったことないから王道かは分からないけど、まぁ想像した通りかな?」
「そんで、主人公の女の子は普通の貴族の子だけど、少し複雑でね。両親が事故で死んじゃった影響で、父親の姉の家に入ったみたい。家族からも大切にされてるけど、ほかの貴族からはあんましよく思われてないっぽいね。」
「ちなみに、その理由は?」
ラースナー様にそう聞くと、公式設定でもないし、あくまで考察の範囲だがと前置きをしてから話し始めた。
「主人公の両親が実は犯罪者だからではって話。さっきのアルス霊園についてのシナリオに進むと、主人公の状態にマイナスが入るってこと。さっき言った通り、アルス霊園に入るのは犯罪者だからっていうのからね。」
「そこまで揃ってたらもう確定じゃないですか?」
「それがなんとも言えないから考察なの。」
ラースナー様は考察の域を出ない理由を話し始めた。




