エピローグ
晴れ渡る青空の下、男は車から降りると忌々しげに空を見上げる。
殺人的な日差しに細められた瞳は、青碧色。
「今日はもう予定は入ってませんから、ごゆっくり」
運転席から降りた秘書を軽く睨む。
「ってか、日曜くらいゆっくりさせろよ。朝イチの会議なんて何のバツゲームだよ」
「はいはい。皆さんお待ちかねですよ。怖い顔してないで早く行ったらどうです」
あしらうような言葉に舌打ちすると、男は後ろに撫で付けていた蜂蜜色の髪を片手でかき回す。
「お前も寄ってけ、佐久間。もう仕事は終わりだ」
「ああ。チビ達に会うのも久し振りだ」
プライベートだと明言されて、秘書は口調を砕く。二人は肩を並べて歩き出した。
「ハル兄! お帰りなさい!」
リビングからウッドテラスを覗くと、いち早く気がついた少女が大きく手を振って駆け寄って来る。
白い肌に黒い髪、大きな黒瞳の少女を彼は抱き上げる。
「いい子にしてたか? 由布」
「うん!」
ベンチには兄と義姉、そして兄と姉に等しい友人が座っていて、その中心には生まれて間もない赤ん坊を抱いた父の姿もあった。
「あれ、将兄戻ってない? 一緒に会社出たんだけど」
「着替えてるよ。ほら」
兄に示されて振り返ると、腕に自分の腕の中の少女と瓜二つの少女を抱え、反対の手で少年の肩を抱いた長兄が歩いて来るところだった。
「あのね、由布はハル兄を待ってたの」
耳元で囁かれてその顔を見ると、じっと見つめてくる瞳は母譲りで強い。
微笑んでから少女を下ろすと、待っていたように少年がその手を取って外へと駆け出そうとする。少女はもう一人の少女を呼び、一緒に少年の後を追った。
芝生で駆け回る子ども達を、大人は微笑みながら見守る。
ふと、昔夢に見た情景と重なり、彼の口許が綻ぶ。
それは、温かい、温かい、幸せの象徴――――。
お付き合いありがとうございました。
シリーズにしていけたらと思っていますので、また読んで頂けると嬉しいです。
※18歳以上の方、既に「ムーンライトノベルズ」で同シリーズが2話完結しておりますので、そちらも宜しくお願いします。
18歳未満の方は申し訳ありません。また読んで頂ける話も書きたいと思っていますので、その時は宜しくお願いします!




