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95話「攻略再開」



 さて、やって参りましたダンジョン攻略のお時間です。……って、こんなノリで言ってたか、俺。



 とにかく、ゲロリー事件とグレッグ商会の立ち上げでできていなかったダンジョン攻略を再開する。たしか、十三階層途中のセーフティーゾーンからだ。



 だが、その前に十階層の森にある川に行き魔石英を回収する。最近本気で運動していないため、身体強化を全力で発動させてものの十分と掛からず数千個の魔石英を回収する。



 ダンジョンに来る度に、ここに寄っている気がするので、いつか自動回収できるようなシステムを導入したい。ゴーレムでも派遣しようかな?



 今日攻略する十三階層は、草原フィールドが主体で途中から洞窟になっていたはずだ。今日はそこからの再開となる。十三階層に出現するモンスターは、十階層に入ってから出現していたモンスターが群れを形成している形となっており、その確率も上がっているようだ。



 具体的には、オークやウルフリーダーなどといったDランクの上位からCランク帯のモンスターが主なラインナップだ。群れでの行動が主流となっているため、ダンジョン自体の攻略難易度は当然上昇しているのだが、化け物みたいなステータスを持っている俺の前では無力に等しい。



「ここが、ボス部屋か」



 進撃という名の理不尽な蹂躙劇が行われた後、すぐにボス部屋へとたどり着く。ちなみに他の冒険者の姿は見えず、すぐに戦うことができるようだ。



 十三階層のボスは、オークリーダーという種類のオークで、端的に説明すれば普通のオークの体がデカい版のやつだ。レンダークの街で戦った時に何匹か見たことがある。



 しかし、レンダークの時にいたやつよりも一回りの半分ほど体が大きいことから、どうやらダンジョン産のオークリーダーは天然物のオークリーダーよりも強いらしい。



「だが、俺の前では芋虫に等しい!!」


「ブヒィー」



 うん、瞬殺だっだよ? 考えてみてほしい。ボスとはいえトータル平均のパラメータの値がC判定そこそこのモンスターと、すべてのパラメータがS判定の俺では、まったくと言っていいほど勝負にはならないということを……。



 モンスターの死骸を回収し、そのまま出口付近にある転移ポータルを解放してから、その足で十四階層に突入する。



「はい、おしまい」


「キャイン」



 十四階層も特に問題なく、十三階層との違いはフィールドが森だったということと、ボスがビッグフォレストウルフというフォレストウルフの上位種だったということくらいだ。しかも、ボス自体の強さはオークリーダーよりも劣っており、取り巻きのフォレストウルフとの連携によって辛うじてオークリーダーと同じ難易度としての体裁を保っている感じだった。当然瞬殺であり、倒した後の死骸の回収の方に時間が掛かっているほどであった。



「次は、十五階層だな」



 十四階層出口の転移ポータルを解放した俺は、十五階層へとやってきた。今までのフィールドとは異なり、砂ばかりの光景が広がっている。そう、今回のフィールドは砂漠なのだ。



 どういう原理なのかはわからないが、おそらく魔法的な何かで作られている疑似的な太陽が体を照りつけ、体温が急激に上昇する。それに対処するため、風魔法で作った鎧を体周辺に纏わせることで、常に一定の体温を保つことができるようにした。



「これは、他の冒険者ならかなりの難所になるんじゃないか」



 過酷な環境に加えて、モンスターや罠まで待ち構えているとあっては、十分な準備をしていない状態で足を踏み入れることは自殺行為に等しいことだと素直に感じた。尤も、俺の反則的なスペックの前では無意味に等しいがな……。



 そのまま突き進んでいくと、索敵に反応がある。ちなみに、ここまでの道中索敵や隠密などを駆使しして無駄な戦いを避けながら進んでいるのだが、階層毎にどんなモンスターがいるのか調べるため初見のモンスターとは戦うようにしている。



 十五階層で出会った最初のモンスターは蟻型のモンスターで、解析で調べても【サンドアント】というそのままの名前だった。普通の蟻と異なり、甲殻の色が白みがかった色をしていて、できるだけ熱を逃がす様な進化を遂げたのではないかと推察できる。ランクはCランクで、能力の平均はC-そこそこと低めだったが、スキルの欄に招集という能力があった。詳細は、読んで字の如く仲間を呼ぶスキルらしく、戦っているうちにどんどんと仲間を呼ばれて大変なことになるのではないかということが容易に想像できる能力であった。



「ギギギ」


「よし、蟻んこよ。仲間を呼ぶのだ!」



 招集のスキルの効果を確かめるべく、蟻をけしかけてみた。すると、突如として砂の中から数匹の蟻が這い出てきた。まさか、呼ばれるまでそこで待機してたわけじゃないよね? 出待ちですか?



 とりあえず、招集スキルも拝ませてもらったので、身体強化からの剣の一閃でサンドアントの首を刎ね飛ばし、一撃のもとに沈めた。それに恐れをなしたのか、他のサンドアントたちが招集スキルを連発し仲間を呼び出しまくってくる。そのあと最終的に倒したサンドアントの数は三十を超え、かなりの労力を強いられることになった。



 モンスターの強さはそれほど大したことではなかったものの、一匹一匹を相手にしているとその分戦闘に時間を取られるため、次からは見つけても倒さないようにしよう。



 ちなみにサンドアントの攻撃手段は、その発達した大きな顎による噛みつきと、尻から吐き出す蟻酸と呼ばれる酸によるという蟻型モンスターにありがちな攻撃だった。



 すべてのサンドアントをストレージにしまい込み、そのまま進んでいくと再び初見のモンスターと出くわす。それはよく見れば大きなミミズのような見た目をしており、女性的な言い方だと生理的に受け付けないといったところだ。



 赤色の強いピンク色の体にうねうねと気持ち悪く蠢く姿は、大きなミミズが暴れているようにしか見えない。その口も特徴的で、まるでヤツメウナギのように鋭い小さな歯が生え揃っており、噛まれたらすごく痛そうだという感想を抱かせる。



「ギャース」


「こいつは特に変わったスキルはないな。精々砂を潜る時に使う【潜水】くらいか」



 このミミズは【サンドワーム】という名前のモンスターで、Dランクのモンスターではあるものの、筋力の値がB-もある。噛みつかれたらそのまま食いちぎられそうではあるが、それとは反比例するように耐久力はE-と脆いため、噛みつき攻撃と砂に潜ってからの奇襲に注意すれば、ランクの低い冒険者でも対処は十分に可能だ。



 そのまま剣で一撃をお見舞いし、全滅させたあとストレージに収納していく。オンラインゲームみたいに自動で収納してくれる機能とか付かないだろうか? 付きませんか、そうですか。



 そこからさらに進んでいくと、新たに蠍型のサンドポイズンスコーピオンというモンスターと、ダチョウのようなすらっとした長い脚と短い羽根が特徴的なサッピーという鳥型のモンスターと出会った。



 蠍の方は、名前にもある通り毒持ちだったが、十階層にいたポイズンマインスパイダーのように糸を出すわけではないため、あまり有益なモンスターとは言えなかった。サッピーは……うん、もろダチョウだったよ。



 とにかく、蠍とダチョウをケチョンケチョンにしたあとでさらに突き進んでいくと、砂漠のど真ん中にオアシスのような場所があった。どうやら、ここが十五階層のセーフティーゾーンらしい。さっそく転移ポータルを解放し、適当な場所に腰を下ろしたところで昼食を取っていなかったことを思い出し、少し遅ればせながら昼食を取ることにした。



「そうだ、あのダチョウの肉は美味いのか?」



 もはや俺の中で、完全にダチョウと成り下がってしまったサッピーの肉の味を確かめるべく、ストレージからサッピーの肉を取り出す。ちなみに、分離解体のレベルが上がったことで、ストレージ内からでも解体が可能となっている。いちいち解体してから収納しなくてもよくなったので、便利だ。



 ひとまず、肉そのものの味を確かめたいので、味付けは塩のみの焼き鳥を作ってみることにする。肉の見た目的には、鶏肉のそれなのだが果たしてどんな味なのだろうか?



「どれどれ……はむ、もぐもぐ」



 食感は鶏肉だ。特に臭みもなく実に淡白な味と言える。これならば、チキンサラダや他の料理に入れても問題なさそうだ。それでは、ここでひと手間加えて美味しくいただくとしよう。



 まず、サッピーの肉を炒め塩と胡椒で味を整える。ポイントは少し胡椒を多めに使うようにする。そこににんにくと唐辛子を加え、スパイシーな風味を追加していく。用意しておいたパンに切り込みを入れ、そこにできあがった鶏肉とレタスを一緒に挟んでやれば、なんちゃってチキンサンドの完成である。



「実食……はむっ」



 少々歯ごたえの強いパンの中に、シャキシャキのレタスと肉厚の鶏肉がひょっこりと出迎えてくれる。にんにくと唐辛子によってスパイシーな味わいが食欲を刺激され、辛みと旨味が口の中に広がっていく。



「美味である。鶏肉だけで食べたらビールが欲しくなる味だな……未成年だけど」



 それから、充実した昼食を満喫した後、少し休憩をして攻略を再開する。しばらく、広大な砂漠を疾走し続け、時折見かけるサッピーを狩りつつボス部屋を目指す。ちなみに、ザッピーを狩ったのは鶏肉を手に入れるためだということは言うまでもない。



 しばらくすると、洞窟が見えてきたので中に入ってみると、すぐにボス部屋に通じる扉が見えてきた。扉の先は、天井や壁は今まで通りの岩肌だが、何故か地面には今日散々見てきた砂が敷き詰められていた。その理由はすぐに判明することになる。



「グギャアース」


「こいつがボスか、それにしても……」



 そこに現れたのは、巨大なミミズだった。基本的にボスは、その階層に出現するモンスターの上位種が多いが、どうやら今回はあのサンドワームの上位種らしい。念のため、解析を使って調べてみると、こんな結果が表示された。





【名前】:モンゴリアンサンドワーム


【年齢】:0歳


【性別】:♀


【種族】:ワーム種


【職業】:なし(Bランク)



体力:3500


魔力:1200


筋力:A-


耐久力:B-


素早さ:C+


器用さ:C-


精神力:B


抵抗力:C+


幸運:C-



【スキル】


 突進Lv4、咆哮Lv3、潜水Lv4、身体強化Lv3、噛みつきLv5



【状態】


 警戒(中)、空腹(中)




「お前のどこにモンゴルの要素があるんだよ!!」



 確かに見た目は、あのUMAとして有名なモンゴリアンなデスワームにそっくりだわ。だが、この異世界ファンタジーのモンスターであるお前のどこにモンゴリアンな部分があるんだ?



 俺の罵詈雑言を理解していないため、こちらを威嚇してくるばかりで俺の質問に答えやがらない。まあ、答えたくても答えられないだろうがな……。



 もはや、名前ですべてを持っていかれてしまったため、能力云々関係なく瞬殺してしまった。俺の解析に掛かった労力を返してほしい。



 一応、ステータスを見た考察をするのなら、Bランクで筋力がA判定であるため、物理特化のモンスターだと言える。スキル構成的に、突進を使った体当たりと潜水からの奇襲及び噛みつきによる攻撃が強力なのだろう。



 ストレージに死骸を収納し、十五階層出口の転移ポータルを解放したあと、そこから十階層へと向かい夕方になるまで魔石英の回収と鉱山での採掘並びに糸を集めて回った。



 様々なことがあったが、今日だけでなんとか十五階層まで攻略できたため、今までの遅れは取り戻せたと思いたい。

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