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506話「久々の冒険者活動 with 元奴隷組」

残っているストックがあることに気付いたので、投稿することにしました。



「ふむふむ」



 最後に対処した竜刻の時から数日後、俺は冒険者ギルドにやってきていた。当然だが、相変わらず熱烈なアプローチをしてくるロックドラゴンを昏倒させ、再び数週間の冬眠期間に入ってもらっている。



 今回の目的は、かねてよりおざなりになっていた冒険者活動をやっていこうという腹積もりであり、端的に言えばただの暇つぶしとも言える。



 すでに一生分の資金は稼ぎ終わっており、あとは自堕落な引きこもり生活を送っても何ら問題はない。だが、せっかくの第二の人生を貰ったのに、ただ引きこもっているなどもったいない。であるからして、久しぶりに依頼をこなしてみることにしたのである。



「コカトリスの討伐に、ロックゴーレムの素材採集とグレーターマンティスの討伐か……。ピンとこない依頼ばっかりだな」


「ご主人様じゃないですか!」


「ん?」



 どんな依頼を受けようか悩んでいると、突如として背後から声を掛けられる。振り向いてみると、そこにいたのはメランダたち元奴隷組の面々であった。



 メランダたちには、フィルフナルド本店と支店を順々に護衛してもらっており、その合間に以前から行っているオラルガンドのダンジョンで資材の調達を任せていた。



 彼女たちの仕事量が増えるため、冒険者ギルドから応援として冒険者に護衛依頼を出す案を提案したことがあったが、全員に却下された。一店舗当たりの護衛としては三、四人もいれば問題はないので、三つに分かれている彼女たちのグループをさらに四つに割れば問題なく護衛が可能であるため、一応は彼女たちにすべて任せている。



「こんなところにどうしているのですか?」


「一応俺も冒険者だからな。たまには、依頼を受けておこうと思っただけだ」


「でしたら、ご一緒させていただけないでしょうか?」


「まあ、構わんが」


「あ、ありがとうございます!」



 特に急ぎの仕事があるわけでもなく、ただの気分転換的なものであるため、メランダたちの同行を許可する。目に見えて嬉しそうにするメランダたちを尻目に、俺はBランクから順々に依頼を確認していく。



「ローランド君、ちょっといいですか?」


「ムリアンか。なんだ?」



 俺が依頼の張り出されている掲示板とにらめっこをしていると、またまた俺に声を掛けてくる人物がいた。巨乳眼鏡お姉さんのムリアンである。



 冒険者ギルドには顔を出しているが、彼女と話すのは久々であり、なんだか懐かしい気分になる。そんなことを考えていると、突然彼女顔が呆れたような顔になった。



「なんでローランド君が掲示板で依頼を見ているんですか?」


「ん? 冒険者が依頼を受ける時は、掲示板で依頼の内容を確認するのが常だろ?」



 例え低ランクの駆け出し冒険者であっても、どんな依頼を受けるかという選択肢は冒険者自身が決めることであり、仮に指名依頼であっても強制はできない。もっとも、断れば心証が悪くなるという場合があるということと、冒険者にとって指名で依頼をされるというのは一種のステータスであるため、余程条件の悪い依頼でなければ基本的には断らない。



 それは、高ランク冒険者であっても例に漏れず同じである。そのため、依頼が張り出されている掲示板から手頃な依頼を見繕っていたのだが、どうやらムリアンからすればそれがお気に召さなかったご様子だ。



「現最高ランクであるSSランク冒険者が、掲示板に張り出されている依頼を受けるなんておかしいと思いませんか?」


「思わないが?」


「じゃあ今度からはおかしいと思ってください。そして、依頼を受けてくれるならそれに相応しい依頼があります。こちらへどうぞ」



 そりゃあ、実力的に最高位の冒険者がBランクやAランクの冒険者でも達成可能な依頼を受けられたら、他の冒険者にとっては依頼を横取りされたと思われても仕方ないとは思うが、今回は暇つぶし的な要素があったので、掲示板に張り出されている依頼でいいやという安直な考えで見ていただけだ。



 半ば強制的に応接室へと連行された俺たちは、ムリアンが提示してきた依頼を受けることになった。その内容は、以前俺が受けたことのある五年依頼や十年依頼と同等クラスの依頼ばかりであり、依頼的に明らかに俺以外には達成が困難なものも含まれていた。



「この短期間でまた五年依頼や十年依頼が増えてないか?」


「それだけ、ローランド君に期待しているということですよ。こっちの依頼の束なんて、全部君の指名依頼ですからね」


「こんなにか……」



 ただの気分転換でやってきたというのに、まさか俺指定の指名依頼がこんなに溜まっているとは思わず、俺は困惑した顔を浮かべる。



 依頼の詳細を見てみると、そのほとんどがオラルガンドの深層部……特に人類未到達の階層から素材を持ち帰ってきてほしいというふわっとした依頼ばかりであり、その実他の冒険者ではとても達成が困難な内容であった。



「ほとんど迷宮都市関連の依頼ばっかりだな」


「逆に言えば、それだけあの迷宮にはお宝が眠っているということですね」



 まあ、俺としても具体的な依頼よりもこういう不明慮な依頼の方がありがたい。それに、依頼の内容のほとんどが依頼達成の期限がなく、精々が“依頼主が死ぬまで”という気の長い達成期間が設けられていた。



 とにかく、今回の俺のミッションは指名依頼をこなしてギルドに素材を納品するということで決定した。



「とりあえず、指名依頼は全部受けるとしよう」


「そうしてもらえると助かります」


「残りの納品する素材が指定されているものは、手に入った時に依頼を受けるということでいいか?」


「それで問題ありません」


「じゃあ、それで頼む」


「かしこまりました。では、お気をつけていってらっしゃいませ」



 ムリアンに見送られながら冒険者ギルドを後にした俺は、マチルダたちを伴ってそのままオラルガンドのダンジョンの八十六階層と八十七階層の中間の場所まで転移する。



 事実上のオラルガンドの最高到達階層は八十六階層となっており、表沙汰になっている情報ではこの階層が今まで人類が到達した最高地点となっている。



 だが、実際のところオラルガンドの最深階層は三百階層あり、そのうちの二百五十階層で生活していたどこぞの馬鹿がいることを考えれば、実際のところオラルガンドの最高到達階層は三百ということになる。



 ちなみに、マチルダたちも密かに八十六階層以降のダンジョンには到達しており、このことは冒険者ギルドに報告していない。彼女たちも日に日に到達階層記録を伸ばしているらしく、そろそろ百階層に手が届くだろうと自慢気に語ってくれた。



「ご主人様、ここは我々が」


「そうか。なら、任せる」



 この辺りのモンスターでは、俺の脅威になり得ないため、ここは一緒についてきたメランダたちに任せることにする。俺の指導の賜物なのか、機敏な動きで的確に相手の弱点を突きつつ、モンスターたちを仕留めていく。一方の俺はといえば、彼女たちが倒していったモンスターの亡骸を回収してストレージ内で解体するという地味な作業を行っていた。



 第三者の視点から見ると、メランダたちが激戦を繰り広げた後、俺がとことことモンスターの死骸に近寄って回収し、また彼女たちがモンスターと戦って、その死骸を俺が回収するというなんとも言えない光景に映ることだろう。



 しかも、メランダたちがモンスターを倒すまで手出しは一切せず、安全になってから死骸を回収するという美味しいところだけいただいていく卑怯な存在に見えなくもない。



 もし、仮にこの場に他の冒険者たちがいれば、俺に対して「おまえも少しは戦ったらどうだ?」という抗議の声が上がっていたかもしれない。本当のところは、メランダたちが俺の手を煩わせず志願して自らの意志で戦っているのだが、そんなことは傍目から見ればわかるはずもない。



 とにかく、メランダたちが戦闘、俺がモンスターの回収という作業を繰り返していき、依頼に見合った素材の確保を行っていった。



 ちなみに、この辺りに出現するモンスターはAランク中位からSランクのモンスターが分布しているため、メランダたちの実力であればそこそこ楽しめる相手となっている。さすがに、Sランク上位クラスともなれば苦戦はするものの、決して勝てない相手ではない。それくらいの実力まで鍛え上げたつもりだ。



「ご主人様、このあとはいかがいたしましょうか?」


「そうだな、昼休憩にしようか」


「かしこまりました」



 それから、ある程度時間が経ったので、昼休憩を取ることにする。昼のメニューはパスタとミートソースを使ったミートソーススパゲッティにデザートはアイスクリームとした。



 ダンジョンで食べる食事としては些か小洒落たものではあるが、食にうるさい元日本人としては、日々の食事のクオリティは常に高くなければならないのである。



「すごく美味しいです!」


「それはなによりだ。おかわり自由だから足りなかったら遠慮なく言ってくれ」



 もちろん全員がおかわりをし、最後のデザートもぺろりと平らげてしまった。あれだけ食った胃袋のどこにそんな余裕があったのだろうかと不思議に思わなくもないが、デザートは別腹という昔からある言葉もあるため、そんなものだろうと無理矢理納得することにした。恐るべし、女の胃袋……。



 さらに階層を進めていき、九十三階層辺りにやってきたところで、時間的に夕方になったので、一度王都へ帰還することにした。

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