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492話「候補地、君に決めた!」



「候補地が見つかったようだな」


「ああ」



 スタンピードから数日後、国王から呼び出しがあった。その内容は、言わずもがな今回起こったスタンピードを解決した褒賞として、国が所有する土地のどこかを貰うというものだ。



 個人的には、そのようなものは必要ないのだが、国王として功績のあった者に褒賞を与えないのは、国を治める人間として他の者に示しがつなかいという理由から、俺が折れる形で受け取る褒賞を土地にしてほしいと要望を出していたのだ。



 ちなみに、目下の目的である【竜刻の時】についての対応は、ロックドラゴンの情報ではまだ余裕があるということで、先にこちらを優先する形を取ることにしている。



「候補地は三つある。好きなものを一つ選んでくれ」



 そう言いながら、国王は地図を取り出し一つ一つ説明し始める。地図にはシェルズ王国全土が記載されており、シェルズ王国のすべての地形が丸わかりだ。俺としては、この地図を貰うだけでも十分な褒賞になる気がするが、国の重要機密である地図をそう易々とくれてやるのは具合が悪いというのは理解できるため、地図については諦めることにした。



「一つは、シェルズの北東に位置する場所で、ちょうどおまえに貸している土地から地続きになっているところだ。ああ、言い忘れていたが、今回の褒賞と合わせて今貸している土地はおまえのものとしてくれて構わない」


「じゃあ、もしこの土地を貰うことになったら、後で連れてくる身代わり……いや、貴族候補の男にその旨を伝えてやってくれ」


「ふっ、その男も今後苦労しそうだな。まあいい、次は――」



 そう苦笑しながら、残り二つの候補地も挙げていく。残った二つのうちの一つはセコンド王国との国境にある場所で、ちょうどバイレウス領とマルベルト領に隣接する場所でもあるらしい。



 以前はバイレウス家とマルベルト家は半分ずつ所有していた土地らしいのだが、周辺に点在する森に生息するモンスターたちが強大であることを理由に、一度領地を切り取って王家へと返上している場所であった。



 実質的な管理はバイレウスとマルベルトの両家が行っており、毎年隣接する地域に限ってモンスター狩りが行われているが、森の奥についてはまったくの手付かずとなっているらしい。



 最後の三つ目の場所は、王都から真東に行ったところにある場所で、シェルズ王国が確認できているのはその途中までであり、実質的な未開の地となっているらしい。詳細については把握しきれていない部分が多いものの、最終的には【ウルグ大樹海】の西部と繋がっていることが確認できたとのことだ。



「この三つが候補地となる。好きな場所を選んでいいぞ」


「そうだな……」



 国王の言葉を受け、改めて三つの候補地の中から一つを選ぶため、頭の中で考える。



 まずは、俺が借りているモンスター農園となっている隣の土地だが、これは領地拡大という意味では有効的な場所と言える。だが、モンスターたちがそこで農作業を行っていることは秘密にしており、その近くを領地にした場合、それがバレる危険性がある。ここはなしだな。



 次にセコンド王国国境近くの土地についてだが、セコンド王国については結界で封じ込めているため、戦争を仕掛けてくるような心配はない。問題は、土地の位置的にバイレウス領とマルベルト領に近いことが問題だ。



 仮にここで領地経営を行えば、十中八九バイレウス家のローレンや妹のローラが頻繁に押し掛けてくるのは目に見えている。下手をすれば、弟のマークも暇を見つけてやって来る可能性だってあるのだ。……いや、間違いなくやって来るだろう。



 となってくれば、消去法的にはシェルズ王国の真東にある未開拓地が最も無難な選択であり、後々の面倒を避けることができる。



「ここをもらおう」


「【ミステット平原】か、本当に良いのか? はっきり言わせてもらうが、街も村も何もないぞ?」


「だからいいんだよ。じゃあ、手続きを進めておいてくれ」


「わかった。ところで、おまえが見つけてきたという貴族候補は何者なんだ?」


「ああ、ギルムザックっていうSランク冒険者だ」


「なるほど、聞いたことのある名だな。了解した。すぐに叙爵の手続きを行っておく。早ければ、二、三日でかの者のところに呼び出しの使者を送ることができるから、そのつもりでいてくれ」


「わかった」



 元々Aランクの冒険者だったギルムザックたちは、その時からシェルズ王国の中でも名前が知れ渡っていた冒険者パーティーだったこともあって、どうやら国王の耳にもその名が届いていた様子だ。



 俺が選んだ候補は国王の眼鏡に適ったようで、話が早いとばかりにすぐさま叙爵の手続きを始めていた。

 そんな彼の行動を見届けた俺は、一度ギルムザックのところへと赴き、国王とのやり取りを告げると、呆れた様子で俺を見る三人と憧れの眼差しを向ける一人の顔があった。



「まあ、師匠ですものね」


「国王と顔見知りなのは当然ではあるけど、まさかこんなに早く事が進むなんて」


「普通貴族になるための準備って、貴族の呼び出しにも時間がかかるから、一月くらいはかかるって聞いたことがあるんですけど」


「さすがは先生です!!」



 とにかく、ギルムザックたちにも告知は済んだので、ギルムザックたちとはそこで別れた。



 とりあえず、俺一人だけでも先行して土地の内見に向かおうということになり、そのまま透明状態になる魔法と飛行魔法を使って、目的の場所へと向かった。

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