484話「社員研修スタンピードの倒し方その2」
「【フレイムテンペスト】」
「【ダイタルウェーブ】」
「【サイクロントルネード】」
「【シャキードアイシクルゼロ】」
「【アースレイン】」
「【ダークネスエクスプロージョン】」
「【マルチプルホーリーレイ】」
火・水・風・氷・土・闇・光というありとあらゆる魔法が飛び交った。
ただの魔法と侮るなかれ。その一つ一つは、各属性魔法の中でもレベル7以上でなければ使うことができない上位のものばかりであり、まさに広範囲かつ高威力な魔法そのものだ。
しかもすべてが基本魔法ではなくその上位となる魔法であり、それだけでもどれほどの威力なのかは容易に想像できる品物だ。
火の魔法が敵を焼き払い、水の魔法で押し流し、風の魔法で切り刻み、氷の魔法で凍り付かせ、土の魔法で押し潰し、闇の魔法で吹き飛ばし、光の魔法で貫く。
ありとあらゆる処刑……もとい、攻撃が披露される魔法の品評会が開催される勢いだが、その魔法を受ける側であるモンスターにとっては堪ったものではない。
「よし、なかなかの攻撃だ。今ので大体六、七千は削れたな」
残念ながら、すべてのモンスターが魔法の射程範囲内にいたわけではない。それでも、有効範囲内にいるモンスターたちは掃討され、全体の約三割程度のモンスターがいなくなった。
だがしかし、そう楽観視できない状況でもある。魔法によって被害を受けたのは、低ランクのモンスターばかりであり、未だ後方には高ランクのモンスターが控えている。
「全員覚悟はいいな? ここからは接近しての乱戦だ。注意点は一つ、バラバラに行動せずある程度固まって戦うこと。一人で対処できないモンスターがいた場合、二人以上で事に当たれ。では、レッツゴー!!」
号令に従って、それぞれが動き出す。かなりの数のモンスターが倒されたものの、残存するモンスター数は優に二万を超えている。まだまだ予断を許さない状態だ。
「はあっ、やあっ」
「邪魔だ! どけ雑魚共!!」
「邪魔ですのん」
「【フレイムジャベリン】【トルネード】! 私の魔法が火を吹き唸る。おまえらを倒せと、輝き叫ぶ!!」
それぞれが得意な攻撃手段を用いてモンスターと戦っている。一部どこかで聞いたような台詞が聞こえてきたが、星の数ほど存在すると言われている世界で、似たようなことを言う人間が一人二人いても不思議ではないだろう。かく言う、この俺も前の世界で有名だった台詞を何度か口にしているし。
ソバスたちの攻撃は激しく、それはまさに蹂躙の一言に尽きる。低ランクとはいえ、こうも簡単にモンスターが倒されていく様子は、異常であり異質であった。
「お、おい。あれって人間の仕業かよ」
「【サーヴァントナイツ】と【白銀の団】が組んで戦ってるんだ。そこらのCランクやBランク程度のモンスターじゃ話になんねぇだろうよ」
「両方ともこの国を代表する戦闘集団だからな。なんと全員がSランク冒険者の資格持ちだしな」
彼らの戦いぶりを見ていた冒険者からそんな感想が漏れ聞こえてくる。それにしても、メランダたちのクランはわかるが、まさかソバスたちにも組織名が付いていたとは思わなかった。サーヴァントナイツね。使用人騎士団?
とにかく、ソバスたちの猛攻はとどまるを知らず、確実にモンスターの数が減っていく。わずか数十名の集団による蹂躙劇が繰り広げられていたが、ここでいよいよモンスター側の主力が登場する。
「ブモォォォオオオオオ」
「グォォォオオオオオ」
「皆さん気を付けてください! オークキングとゴブリンキングの群れです!!」
「しゃらくせぇ!」
「アタイらの邪魔をするんじゃないよ!!」
そこに現れたのは、あらかじめ視認していたゴブリンキングとオークキングの群れだった。そう、群れである。
こういった群れの場合、キングを頂点としその下にいくつかの下位の同種が固まって行動するのだが、今回は群れすべてがキング種で構成されている。
もちろん、下位種もいるのだが、特にキング種で固まって行動している集団が目立っており、その光景はかなりの威圧感を放っている。
ソバスの警告にも臆することなく元奴隷組が果敢に攻めかかる。さすがのキング種ということもあって、一撃で沈めることは難し――。
「グガッ」
「次!」
「グモッ」
「次はおまえだ!」
……どうやら、俺の予測は外れたようで、キング種たちを千切っては投げ千切っては投げという実力者にのみ許されたことを平然と行っていた。
特に傭兵団の隊長を務めていたというメランダと副官のカリファが凄まじく、彼女たちの通ったあとには胴体から首が切り離されたキング種の死体の山が形成されていた。おまえら、どこの首狩り族だ?
他の面々も、臆することなくモンスターと戦い続けている。そして、そのほとんどが苦戦することなくモンスターを倒していた。
「なんか、余裕かも」
「私たちってこんなに強かったの?」
モンスターをもろともしない状況に、彼女らの中でようやく強者としての自覚が芽生え始めてきたようだ。
もっとも、一部の人間はまるでとち狂ったバーサーカーのように最初から戦っていたが、特に言及することはせず、見なかったことにしよう。
それから、あっという間にモンスターは数を減らし、残すは最後尾にいたモンスターのみとなった。そこで、本日一番のモンスターが現れることになる。
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