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477話「翼人女の体臭」



 ナガルティーニャと別れた俺は、ある場所へ向かっていた。正確にはある人物を探しているというのが正しいところだが、目的はある場所へと行くことなので、どちらでも同じである。



 その目的の人物とは、アルヴァトスに止めを刺す際に割って入ってきた翼人ガブリエルであり、もっと言えば目的の場所とは翼人が本拠地としている場所である。



「……いた」



 圧倒的にレベルアップした察知能力によって、すぐさまガブリエルを捕捉する。そして、そのまま瞬間移動を使って奴の元へと移動をした。だが、こういった時にタイミングが悪いというかお決まりのイベントというか……。



「なっ」


「おっと、失礼。風呂に入るところだったか。それにしても、なかなか素晴らしいスタイルだ」



 転移した先にいたのは、一糸纏わぬ姿をしたガブリエルだった。その肌は透き通るように白く、まるで陶磁器のように洗練されている。そして、スラリとしたスレンダーな体と控えめだが確かな存在感を示す二つの膨らみは、芸術的なエロチシズムを醸し出している。妖艶な腰のくびれと食べ頃の桃のような熟れた膨らみのある臀部のもまた、男を欲情させるには十二分な魅力を含んでいた。



「い、いつまで見ているんだ! 早く外に出てってくれ!!」


「これは、失礼。あまりにも綺麗だったので、思わず凝視してしまった」



 翼人といえども女であることに変わりはなかったようで、裸を見られて恥ずかしかったらしい。本来ならセクシャル的な問題で訴えられても文句は言えないところだが、残念ながらこの世界にセクシャルハラスメントを規制する法律は存在しないため、そういった意味ではやりたい放題なのだ。もちろん、それを悪用するつもりはないがな。



 尤も、圧倒的な力を持っている翼人の裸を見たとあれば、次の瞬間消滅させられる可能性の方が高いため、俺という存在は翼人の裸を見ても生き残ることができる世界でただ一人の男と言えなくもない。



 念のために言っておくが、俺は確かにそういったことに目覚めてはいるし、その気になれば女性とそういった行為もできなくはない。だが、今はまだそれ以外にもやりたいことがたくさんあるため、優先度が低いというだけなのだ。



 しばらくして顔を赤くしたガブリエルが浴室から出てくる。整った顔立ちをした女性のブスっとした顔は、見ていてとても可愛らしいものがあるが、今はそれを堪能している場合ではないと気を引き締め、彼女に話し掛ける。



「今日やって来たのは他でもない。お前たち翼人が犯した罪を問い質すためだ」


「罪?」


「お前たちは勘違いをした。翼人が管理者に選ばれた特別な存在であり、本来守るべきはずの世界と人々を壊そうとした。それは決して許されることではない」



 ナガルティーニャから聞いていた話では、翼人はこの世界の歴史の中で度々出現しており、その都度世界を混乱の渦に巻き込んだとされているらしい。翼人によって多くの大地が焼かれ、何の罪なき人々の命が散り、翼人に抗うため戦った人間もその理不尽なまでに圧倒的な力の前になす術がなかった。



 では、その圧倒的な翼人がどうして今まで自分たち以外の種族を滅ぼしてこなかったのかといえば、神……管理者の存在が大きい。管理者は翼人が行動を起こそうとする度に彼らに神託を降ろしており、神の言葉である管理者の制止によって寸でのところで翼人たちを押さえ込んでいたのだ。



 それでも、思慮の欠けた比較的若い翼人たちはそんな管理者の言葉を無視して強行に出る者もいた。だが、それを止めていた存在もいた。それが、翼人の長である。



「では、我々に罰を与えると?」


「それを話し合うためにきた。ひとまずは、お前たちの長と会わせてもらおうか?」


「いや、だがしかし……」


「ああ、そうか。風呂に入る途中だったな。そっちを先に優先するか?」


「言い渋っていたのはそこじゃない! 私が風呂に入る入らないなど、些末なことだ!!」



 長に会うための橋渡しとして彼女にその役を頼んだが、どこか言いにくそうな顔をしたため、風呂に入ることを優先すべきなのかどうかで悩んでいたのかと思い気を遣ってみた。だが、返ってきた答えはそれを否定する言葉であった。それを聞いた俺は、風呂に入るという日本人にとってとても重要なことを蔑ろにされた気がしてさらに言葉を続ける。



「だが、汚れたけがらわしい体で長に会うのも礼を失する行為だと思うが?」


「そこまで汚れてはいない!! 確かに、完全に清潔とは言い難いが、誰かに会えないほどではない!!! 臭くもない!! ほら、嗅いでみろ? 臭くないだろう!?」


「い、いや。遠慮しておく」


「その反応だと、本当に私が体臭のきついやつだと思われるじゃないか! いいから嗅げ!!」


「えぇ……」



 ガブリエルのあまりの剣幕に若干引きつつも、彼女のお望み通りに匂いを嗅いでやった。首元の襟を大っぴらにするものだから胸元がちらりちらりとしてしまい、思わず目がそこに行きそうになるのを全力で阻止する。



 結果を言うなら、確かに体臭はきつくはなく、フローラルな花のような香りが漂っていた。女性特有のフェロモンのような匂いに些か動揺しながらも、俺は彼女が望んでいるであろう感想を述べる。



「確かに、臭くはないな」


「そうだろう!」


「であれば、今度こそ長のところに案内してもらうぞ?」


「うっ……仕方がない。ついてこい」



 いろいろとひと悶着あったものの、結局ガブリエルが折れる形で長のところへと案内することになった。

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