476話「再修行の成果」
「ほ、本当に何もなかった……」
「何かある方が問題だと思うんだが?」
バルバトス帝国との契約が完了してすぐにナガルティーニャの首根っこを引っ掴んで結界での修行を再開した。実質的にそこから十日間、結界内時間換算でさらに百五十年ほど修行を行い、圧倒的な強さを手に入れた。
今ならば、あの最高位の翼人でもワンパンで倒すことができるだろう。さっそくその成果をお披露目しよう。これだ、ワンツースリー。
【名前】:ロラン(ローランド)
【年齢】:十三歳
【性別】:男
【種族】:人間
【職業】:元領主の息子・冒険者・大賢者の弟子・人外の英雄・人類最強?(依頼屋・SSランク)
体力:45683460000
魔力:78506750000
筋力:S×11A+
耐久力:S×11A+
素早さ:S×11A+
器用さ:S×11A+
精神力:S×11B+
抵抗力:S×11B+
幸運:S×11A+
【スキル】
極解析Lv8、真闘気術Lv9、悟りLv9、魔導の深淵Lv9、魔導学Lv9、戦闘術・改Lv9→戦闘術・極Lv7(NEW)、神思考Lv9、
全進化率上昇LvMAX、分離解体・極Lv2、極威圧Lv9、イノグジェニッククリエイターLv3、ホームワーカーLv5→ホームワーカー・改Lv9(NEW)、
プロダクションマスターLv8、パラメータ上限突破Lv7→パラメータ上限突破・改Lv3(NEW)、限界突破LvMAX、
毒無効Lv5、麻痺無効Lv5、幻惑無効Lv5、睡眠無効Lv5→(毒無効・麻痺無効・幻惑無効・睡眠無効が統合)→全無効Lv5、
物理耐性Lv8、魔法耐性Lv8→(物理耐性と魔法耐性が統合)全耐性Lv7、超再生LvMAX
【状態】:なし
もはやいろいろと何かを諦めたかのようなステータスだが、とりあえず一つ一つ見ていこう。まずは、パラメータだが大台というべきか見たことのない数字へと変貌を遂げている。その数四百五十六億と七百八十五億だ。そんな数字国の予算の内訳額とかでしかみたことがない。
続いて筋力以降の数値が×○○という表記に変わっているが、Sの個数が十になった時点で×10という表記に変貌した。パラメータも何かを諦めたご様子だ。
次にスキルについてだが、いくつかのスキルがとうとう打ち止めになったらしく、MAX表記となった。他のスキルもレベル9なので、このまま鍛錬を続けていけばカンストする可能性は大いにあるだろう。
そして、スキルに関して気になっていた点が一つあったので、この機会に検証してみた結果、ある結論を導き出した。それは○○無効という無効スキルだ。その名の通り何かしらの異常状態を引き起こすものを無効化するというものだが、そのスキルにレベルの概念があることが気になっていた。そこで調べてみると、レベルは異常を与える度合いによって無効化できるかどうかが変わってくるというものだった。
毒状態を例に挙げるのなら、手足のつま先や口などの先端部分が痺れる程度の毒ならばレベル1でも無効化可能だが、腹痛や各部位に痛みを伴う毒はレベル2でなければ無効化できないといった具合だ。尤も、元々耐性スキルから進化したスキルであるため、大抵の毒は軽減してしまうので、無効化スキルに進化したところであまり気にするものでもない。
そんな無効化スキルもいよいよ統合され【全無効】というスキルになってしまい、ますますもってどうなっているんだ状態になっているが、もはや他のスキルも似たような状態になりつつあるので、そこも気にしたら負けである。物理と魔法の耐性も同じである。普通は各種異常耐性から全耐性を経て無効になるんじゃないのか? あと、異常状態って四種類しかないのか? もっとあるんじゃないのか? おっと、気にしたら負けね。負け。
というのは嘘で、無効スキルと耐性スキルは今回の再修行によってあらゆる異常耐性を獲得しており、上記以外の状態異常を無効化するスキルも手に入れている。説明が面倒であるため、詳細は割愛させていただきたくござ候。
とにかく、化け物が怪物になり、怪物がさらに進化して最終的に人間をやめてしまった感が否めない。前回はスルーしてしまったが、職業一覧にいつの間にやら【人外の英雄】という理解し難いものが加わっているし、挙句の果てには【人類最強?】と問い掛けられてしまっている始末だ。この二つは明らかに職業ではない。
だが、安心要素があるとすれば、我が師にして一緒に修行をしていたナガルティーニャはどうなったのかといえば、俺よりもさらに悲惨なことになっていた。
「それにしてもS+15か。また突き放されてしまったな」
「あたしとしては、今までのままでよかったんだけどなー」
「それじゃあ俺がこれ以上強くなれない。これは仕方のないことなのだ。そう、仕方のないことなのだ……」
「なんか、自分に言い聞かせているみたいに聞こえるよローランドきゅん?」
「それよりも、今回の修行は助かった。ありがとう」
「なっ、なんだい、いきなり改まって」
改めてナガルティーニャに頭を下げる。今回の修行については、彼女の力がなければここまで強くなることはできなかった。普段はおチャラけていても、魔族からは厄災の魔女として恐れられ、その実力は確かなものがある。彼女がその気になれば、俺ですら傷つけることはおろかまともに攻撃を当てることすら難しいだろう。
まあ、おふざけで俺の攻撃をわざと食らっているが、本人に曰く「ローランドきゅんの愛を受け止めたいんだ」という訳の分からない頭のおかしいことを宣っていたりするのだが、それを差し引いても、彼女から受けた恩恵は大きなものである。
「お前がいなければ俺はここまで強くなることはできなかった。結果的には、まだまだお前に追いつけていないが、俺らクラスの実力を持った存在はそうそう出てこないだろう」
「そんなこと言ってると、本当にそういう存在が出てくるかもしれないよ?」
「できれば、そうならないことを祈ろう」
「ところでさ。ローランドきゅんがあたしに感謝しているのはわかった。だったら、感謝の印にここは一つチュウを――」
「キッ」
「ごめんなさい。調子に乗りますた」
また頭のおかしいことを言い始めたナガルティーニャに拳を片方の手で打つ仕草をしながら近づいていく、その剣呑な雰囲気に早々に降参のポーズを取って謝るナガルティーニャ。そして、そのまま彼女に近づくと、殴られると思ったのかギュッと目を閉じ衝撃に備えている無防備な頬に俺は――。
「えっ」
突然のことに惚けた態度を取るナガルティーニャを鼻で笑いつつ、頬が熱くなる。それを隠すために、俺は精一杯の虚勢を張って往年の有名な台詞を言ってやった。
「じゃあな。風邪引くなよ。歯磨けよ」
そう言って、俺は逃げるように瞬間移動でその場を去った。後に残ったナガルティーニャはしばらく呆然としたのち、誰に聞かせるまでもなく、ぽつりと呟いた。
「こ、これがマジモンのツンデレというやつか……。いい……良すぎるぜ。しばらく、顔を洗わないでおこう」
すでにその場には誰もいなかったため、突っ込まれることはなかったが、そこにローランドがいれば確実に拳が飛んでくる気持ちの悪い一言をナガルティーニャが口にする。
ナガルティーニャとの再修行は大成功に終わったが、まだ片付けなければならないことが残っている。そのため、ローランドはある場所へと向かうことにしたのだった。
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