471話「上級翼人」
そこにいたのは、やや好戦的な顔をした軽薄そうな雰囲気を持った翼人であった。明らかにこちらを見下したような視線は、翼人の標準装備ですとでも言わんばかりで、とても不愉快極まりない。だが、内在する魔力は相当なものであり、その態度に見合った実力は兼ね備えているらしい。
「一応聞くが、ミカロケルビスを殺したのはどっちだ?」
「ミカロケルビス?」
「ローランドきゅんをボコボコにした翼人だよ」
「ああ、あいつか」
横柄な態度で翼人が問い掛けてきた内容を聞いて、一瞬誰のことを言っているのかわからなかったが、ナガルティーニャの指摘に最初に出会ったあの翼人だということを思い至り納得する。
今となっては、あの程度の奴にボコボコにされてしまったのかと半ば黒歴史のような扱いとなってしまったため、記憶の片隅にまで追いやっていたようだ。おのれ翼人め、ちょっと顔が良いからって調子に乗りおって。……ん? 顔が良いから調子に乗ってたんじゃない? じゃあ、なお悪いわ!
「どうやら、ミカロケルビスを殺したのはお前らで間違いないようだな。じゃあ、とりあえず、死んどけや!」
「よっ。いきなり攻撃してくるとは実に不躾な奴だ。どうやら、翼人は躾のなっていない子供らしい」
「っ!?」
仲間がいなくなった原因が俺たちであると理解するや否や、奴がナガルティーニャに向かってエネルギー弾を放ってきた。すぐさまそれに対処しようとしたナガルティーニャだったが、その間に割って入りエネルギー弾を蠅でも追い払うかのようにいなす。
自身の攻撃がいとも簡単にいなされたことに驚愕の表情を浮かべる相手だったが、そうシリアスをさせてくれないのが、ナガルティーニャというものであって……。
「ロ、ロロロ、ローランドきゅん! あたしを守るために割って入るなんて、ナガルティーニャ感激!」
「はあ? 何を勘違いしている? 奴の攻撃がどの程度のものなのか確かめるために決まっている。それにだ。妖怪ロリババアがあの程度でくたばってくれるわけないしな」
「最近あたしに対する態度が辛辣過ぎるよローランドきゅん!」
「最近ではない。出会った瞬間からこうだ」
「さらに辛辣ぅー! でも、そんなところも好き――」
「死ねぇー!!」
俺とナガルティーニャが漫才をしている最中、それを遮るかのように奴の怒号が飛んでくる。そして、先ほどのエネルギー弾とは比べ物にならないほどの魔力量が籠った攻撃が飛んでくる。
そのまま躱すことは簡単だったが、地表に落ちた時の被害を考慮して空中へ飛ばして魔力を霧散させることで大地への直撃を防いだ。それもまた奴の気に障ったらしく、端正な顔立ちを歪ませる。
「くっ、俺の渾身の攻撃をああも簡単に弾くとは。これは、ミカロケルビスが相手にならないのは当然だな」
なにやらぶつぶつと独り言を口にしているようだったが、ここで奴のことを解析していなかったことに気付き、改めて奴に【極解析】を使ってステータスを覗き見てみた。その結果がこれだ。
【名前】:アルヴァトス
【年齢】:五百六十二歳
【性別】:男
【種族】:翼人
【職業】:上級翼人・オファニム
体力:2123460000
魔力:2506750000
筋力:SSSSSSSB-
耐久力:SSSSSSSB+
素早さ:SSSSSSSC-
器用さ:SSSSSSSA+
精神力:SSSSSSSD-
抵抗力:SSSSSSSD+
幸運:SSSSSSSA+
【スキル】
超解析Lv8、真闘気術Lv2、感覚操作Lv9、魔導の深淵Lv4、魔導学Lv5、戦闘術・改Lv8、神思考Lv3、
極威圧Lv2、パラメータ上限突破Lv7、限界突破LvMAX、毒無効Lv7、麻痺無効Lv7、幻惑無効Lv7、睡眠無効Lv7、
物理耐性LvMAX、魔法耐性LvMAX、再生LvMAX
【状態】:なし
言うなれば“圧巻”の一言である。驚くべきはその圧倒的なまでのパラメータであり、スキルも今まで出会ってきた相手よりも遥かに充実している。これが、管理者が生み出したという種族に与えた世界に直接介入するための力というものなのだろうか。
さらに、こいつよく見てみれば上級翼人のオファニムという階級持ちであり、ナガルティーニャの話では上から数えて三番目に高い階級を所持しているようだ。
「危険だ。この俺の攻撃を簡単に対処してしまったこともそうだが、たかがゴミ種族である人間如きがこれほどの力を所持していることが問題だ。このようなことがあってはならない。許されない……」
「何をぶつぶつ言ってるんだこいつは?」
「それよりも、ローランドきゅんとのイチャイチャラブラブタイムを邪魔してくれちゃって。どうお仕置きしてやろうかこのすっとこどっこい!」
「おい、ロリババア。少し、黙ろうか?」
こいつの解析結果に思うところがありいろいろと考えていたが、明らかにこちらに敵意を向けてきている以上、このまま何事もなかったかのように去って行くなどということはないだろう。
いつでも動けるようにアルヴァトスの動きに注視していると、なにやら奴の中で結論が出たらしく、不意にこちらに視線が向いた。
「お前たちの強さは、人間如きが持ち合わせて良いものじゃねぇ。よって、ここで死んでもらおう」
「最初から殺すつもりだったと記憶しているが、どうやら翼人という存在はあまり頭の出来が良くないらしい」
「その減らず口。今すぐ叩けなくしてやる」
不意にアルヴァトスの体内の魔力が高まっていくのを感じる。そして、右腕の手首を左手で掴みながら手の平をこちらに向ける仕草を取った。
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