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470話「さらに上へ」



「ところで、俺をボコボコにしたあいつはどれくらいの強さだったんだ?」



 組み手を再開しつつ、俺の拳を涼しい顔で受け流すナガルティーニャがさらりと答える。



「そうさな。精々がSSSS+止まりってところかな」


「その言い方だと、あいつが雑魚みたいな扱いなんだが?」



 SSSS+といえば、当然だがあの時の俺の限界値でもあるSSS+よりも上であり、確実なる格上であることは間違いない。だが、ナガルティーニャの言い方が何やら含みのある言い方であったため、詳しい話を聞いてみることにした。



「そうだね。翼人の中では弱い……というか最弱クラスといっても過言じゃないかな」


「あれで最弱なのか? じゃあ最強クラスはどうなってんだよ……」


「そもそも、翼人には下級翼人・中級翼人・上級翼人って位があって、さらに三つずつの階級で区分けがされてるんだ。下から順にエンジェルズ・アークエンジェルズ・プリンシパリティーズ・パワーズ・ヴァーチューズ・ドミニオンズ・オファニム・ケルビム・セラフィムって具合になってて、ローランドきゅんが戦った翼人は最下級のエンジェルズの位を持ってたね」


「だから最弱クラスってわけか。そう考えたら翼人ってやつはとんでもない連中だな」


「ちなみに、今のあたしたちの強さを翼人に当て嵌めるなら、ローランドきゅんがプリンシパリティーズで、あたしがヴァーチューズ辺りじゃないかな」


「SSS+でもボコボコにやられるわけだ。じゃあ、ますますもってさらなる修行が必要じゃないか。てことで、ペースを上げるぞ」


「わあ、急に本気出さないでおくれよぉー!」



 聞きたいことを聞き終えた俺は、ナガルティーニャに全力で向かって行く。俺の攻撃を唯一受け止めることができる存在であり、俺をここまで強くしてくれた師匠でもある彼女に、俺のありったけをぶつけていく。



 通常であれば、肉体が粉々に爆散してもおかしくないほどの威力を持った攻撃だが、それをいとも簡単に片手で受け止めている姿を見て、やはり俺はまだこのロリババアには勝てないことを自覚する。



「……こいつがいてくれて本当によかった(ボソッ)」


「そうかぁ~、あたしがこの世界に居たことがそんなに嬉しいかぁ~」


「ああ、だから甘んじて俺の思い(拳)を受け入れろ!」


「だが断る! このナガルティーニャの最も好きなことは。自分がつよ――」


「北〇百裂拳!! あぁーたたたたたたたたたたたたたたたた。ほわちゃぁー」


「最後まで言わせてぇー!」



 といった具合に、いつものコメディ展開となるオチになってしまったが、それから俺たちは互いを高め合う修行を行い、更なる実力を高めていった。そして、一区切りついたところでバルバトス帝国との約束の時間前日となったのだが、そこでとんでもない相手とかち合うことになってしまった。






     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~






 俺たちが修行を開始してから元の世界で九日が経過していた。その一方で、結界内では百年以上の時が経過し、俺もすっかりお爺さんに――。



「いや、ローランドきゅん。一回ヨボヨボになり過ぎて修行にならないからてことで結界の外に出たよね?」


「あの体が若返っていく感覚は新鮮だったな」



 さすがの俺も、結界内とはいえ何十年も時を過ごせば、年老いて体が言うことを聞かなくなっていく。一度本当に修行にならないほど年老いてしまったため、一旦体を若返らせるために結界の外へと出たのだ。



 その時の感覚は俺にとってとても不思議な感覚で、まるで古くなった部品が新しいものへと変わっていくようなそんな感覚だった。



 というのも、ナガルティーニャが張った結界は少し特殊なしようとなっており、結界内と結界外の時間軸の帳尻を合わせるため、一度結界内で過ごしたあとで結界の外に出ると、その時間差を無くそうとする能力が働き、結界に入った時の年齢にまで若返るのだ。



 この結界の利点としては、年を取っても外に出ることで若返ることができ、尚且つ結界内で経験したことは元の時間の長さと変わらないところである。これぞまさに――。



「精神と時の――」


「ストップ。ローランドきゅん、それ以上はいけない」


「なんでだよ。別に誰が見聞きしてるわけじゃないし問題はないだろう? それとも、俺らの話が漫画やアニメになるっていうのか? それなら、そういったことには配慮すべきだろうがな」


「それはそうでけど」


「それに精神と時のルームが先に世に出ただけであって、もし俺たちが経験していることが物語として先に世に出ていたら、逆にあの部屋がお前の結界をパクったって言われてただろうな」


「なるほど、ス〇ムダ〇クと黒〇のバ〇ケと同じ関係性か」


「そういうことだ。その二つの作品だって、たまたまス〇ムダ〇クの方が先に世に出ただけであって、逆だったら黒〇のバ〇ケの方が新たなジャンルを開拓した先駆者として評価されていただろうな」



 世の中やったもん勝ちとはよく言ったもので、先に世の中に出してしまった方が後に出てきたものよりも尊重される傾向にある。特許然り漫画やアニメなどの著作権を持ったもの然りだ。



 個人的には後に出てきたものが先に出ているもののパクりと見なされることがあるが、どちらの作品にも異なる点や良い点悪い点などがあるため、俺としてはどちらも受け入れるべきものだと考えている。



 先に例として挙げたス〇ムダ〇クと黒〇のバ〇ケで言うならば、黒〇のバ〇ケの作者が「黒〇のバ〇ケは現代のス〇ムダ〇クです!」と自ら公言してしまっている。読者ではなく作品を生み出した作者本人がである。



 卵が先か鶏が先かという言葉にもある通り、鶏が増えるには卵が必要であり、卵が産まれるには鶏が必要なのだ。どちらがより重要かではなく、どちらも重要なのである。



「ていうか、異世界でこういった話をするラノベとかあったけど、実際に話してみると風情も何もないね」


「そりゃあ、文明力の低い異世界でサブカルチャーの話は似合わないだろうしな。みんな明日を生きるのに必死なんだろう」


「“今日より明日なんじゃ”ってやつだね」


「それはまた別の意味だな」


「名言なのにっ」


「お前が言うと、名言が迷言になるからやめて差し上げろ」


「なんか、修行を経てローランドきゅんがさらに辛辣になっちゃったよー」


「だが、それがいい」



 などと、またいろいろと話が脱線したが、現状把握のためにここからは真面目に考えていく。



 現在、バルバトス帝国に脅し……もとい、圧力を掛けてこれ以上他国にちょっかいを出さないための契約を打診しており、約束の期日まであと一日といったところだ。おそらくバルバトス帝国は連日その結論を出すため熱い議論を交わしているだろうが、俺が要求していることは他国に戦争や政争をしかけるなという一点のみであるため、それができないということはないと考えている。



 実際にシェルズ王国やセイバーダレス公国も自国から他国に侵攻した歴史はなく、大抵の場合隣国のセコンド王国やバルバトス帝国が戦争の皮切りとなっている。



 他国に侵攻しなくとも国としてやっていける実例があるため、それを理由に帝国が逃げることはできない。ましてや、軍事国家の気質として内政に力を入れている国は、他国に武威を示すことができない軟弱な国として見下す傾向にある。だが、国として重要なのは侵略行為ではなく、国の地盤を固める内政であるのは明白であるため、バルバトス帝国は今後の考え方を改めねばならない局面に立たされることになるだろう。



「ともかく、今日は一旦屋敷に戻ってそれから――っ!?」


「ローランドきゅん!?」



 それは、僅かに漏れた殺気。だが、意図的に隠されたそれはこちらにそれを察知させる気がない意志を示しており、裏を返せばそれが成せるほどの実力を持っているということだ。



 だが、その僅かに漏れた殺気によって相手の攻撃に気付くことができ、ぎりぎりのところで回避することに成功する。そして、ナガルティーニャもまたその攻撃に気付いていた。



「へぇー、今のを躱すのか。ミカロケルビスがやられたのも、あながち間違いではなかったってわけだ」



 声のした方に目を向けると、そこには真っ白な装束に身を包んだ翼人が腕を組んで佇んでいた。

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