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466話「世界を管理する者」



 少し間を置いてからナガルティーニャの説明は始まった。まず初めに彼女が説明したのは、この世界の支配者組織の図式であった。



「ローランドきゅん。質問するけど、村一つを管理しているのは誰かわかるかい?」


「ん? そんなもの、村長じゃないのか」


「ご名答。じゃあ、次。町一つを管理しているのは?」


「町長?」


「うん、そんな風に規模を大きくしていくと、領地一つが領主、国一つが国王といった感じで、ある一つのコミュニティにはそれを管理している存在がいる。では、世界一つを管理しているのは誰だかわかるかい?」


「そうだな。そんな存在がいるとすれば、それこそ神かそれと同等の人知を超えた存在じゃないのか?」



 ナガルティーニャの話にあった“一つの組織にはそれを管理する存在がいる”という話であった。会社で例えるのなら、平社員を纏めているのが主任や係長、営業課や人事課といった課一つの責任者が課長、営業部や人事部などの部一つの責任者が部長、それらすべてを纏めているのが専務や常務などといった取締役になり、最後に一つの会社の責任者が社長や会長といった具合になる。



 そして、世界は星の数ほど存在していてそれらを管理する存在、所謂【管理者】と呼ばれる存在がいるという話であった。



 その管理者は世界の均衡を保つために日々世界を観測しており、もし仮にその世界が何らかの理由によって維持できない場合、世界を構築するプログラム的な何かに介入してそれを修正している役割を担っているとのことらしい。



「それが【アカシックレコード】と呼ばれるもので、それに一時的に手を加えて世界の均衡を保たせているんだ。まあ、端的に言えばシステムエンジニアのようなことをやっているわけだ」


「なるほど」


「で、ここからが本題なんだけど。その管理者には世界を管理する上であるルールが設けられている。それは、世界の均衡が崩れた際、管理者が直接的に世界に介入することは禁止というルールだ」


「まあ、ファンタジーではお決まりのルールだな」


「でも、そのルールにも抜け道があってね。管理者は世界のプログラム的なものを操作することができる。それを利用して、世界に直接介入できる種族を生み出すことで、間接的な介入ができるらしいんだ」


「その種族っていうのが、あの羽の生えた頭のおかしい奴ってわけか」


「まあ、そうなんだけど。ローランドきゅんもなかなか言いますね」



 つまり、俺がボコボコにやられた相手というのは、その管理者が抜け道で生み出した世界に直接介入することを目的とした種族であるため、その強さも世界を救えるレベルに設定されており、その種族が全員チーターのようなものらしい。



 そして、そいつらが生み出された当初は、管理者の意図を汲み取り必要最低限の介入を心掛け世界の均衡を保ってきたのだが、よくある話としてそういったことを行っているうちに自分たちが特別な存在であることに対する優越感が芽生え始めた。



“自分たちは選ばれた特別な存在である”という事実が、次第に彼らの中に傲慢という感情を生むことになる。傲慢になった存在はそれ以外の他者を見下し、そのうちに自分たち以外の存在など塵芥に過ぎず、不必要なものであると考え始めた。



「それを察知した管理者が釘を刺す形で彼らに忠告したけど、返ってその言葉が彼らが特別であるということを強く認識させるきっかけとなった」


「神のような存在の言葉を直接聞くことができるから、自分たちは特別な存在だった。そうなったわけだな」


「ローランドきゅんの言う通りよ。そういった傲慢さが、彼らが狂い始めたきっかけになってしまったわけだね」



 会社でもよくある話なのだが、平社員の時に優秀な成績を残した営業マンがいた。会社の上層部はその功績を評価し、その営業マンを役職付きの社員まで昇格させた。それに気を良くした営業マンは、さらに会社に貢献するべく仕事に精を出すようになり、その功績がさらに認められ、最終的に部長という肩書きにまで上り詰めた。



 だが、営業マンとしては優秀な社員でも部下を統率する管理職としては三流だったようで、部下に仕事を割り振ることが多くなったその社員は次第にこう思い始めた。“部下たちを顎で使える自分は、会社から認められた特別な存在である”と……。



 その社員は面倒なことは部下に押し付け、部下たちが得た功績はさも自分がやったかのように会社に報告し、部下たちの成果を奪うようになってしまった。そんなことをされて黙っている部下たちではなく、当然社員たちは上司である部長に抗議をした。だが、一度傲慢になった人間が下の人間の言葉などを素直に聞き入れるわけもなく、さらにその行為はエスカレートしていった。



 最終的に、部長の目に余る行いに一致団結した部下たちが、部長の普段の言動を録音するなどの証拠となるものをかき集め、上層部に直訴する大事にまで発展する。そして、最後には管理職として不適格という判断を下され、降格と僻地への左遷が決まってしまったという末路が待っていた。



 こういった類の話を、よくネットの動画サイトで【スカッとした系動画】としてアップロードされていたのを思い出したが、その中で「何故こういった無能な人間が課長や部長になれたのか?」というコメントが書かれていたが、その実態は先ほど上げた事例ということになる。



 つまりは、野球やサッカーなどの競技において実際にプレイをする選手としては優秀な人材だが、選手に指示を出す監督として優秀かと問われれば、必ずしもそうではないということである。



「そんなわけで、奴ら……種族名を翼に人と書いて【翼人】と呼ぶのだけど、本来世界を安定化させる役目を持っていたそいつらが、管理者の意図しないところで世界をあらぬ方向へと動かし始めているってわけ」


「翼人ね。翼じゃなくて欲深い人と書いて欲人の間違いなんじゃないかと言いたいね」


「上手い! 山田君、座布団一枚」


「その返しに対して座布団没収だ」


「くぅー、ローランドきゅん辛辣過ぎるよー!」



 などど、一時話が脱線しかけたものの、すぐに話を元に戻して改めてナガルティーニャが説明してくれた内容を頭の中で整理する。



 世界一つを管理する管理者がいて、そいつは直接世界に介入するため、自身の手で生み出した【翼人】という種族に直接世界に介入させていたが、いつからかそれを特別な存在として勘違いするようになってしまった。そればかりか、管理者の望んだ方向とは全く違う方向に世界に対して介入するようになってしまい、本来の目的を失念してしまっているといった

ところだ。



「話の内容は大体把握した。そこでだ。それを踏まえてお前に頼みがある」


「何かな?」


「俺をもう一度鍛え直してくれ」



 いきなり現れた強敵によって、完膚なきまでに叩きのめされてしまったローランド。己の実力不足を一体どう解消するのか? 俺の戦いはまだ始まったばかりだ。ローランド先生の次回作にご期待ください。



「ローランドきゅん、話が終わっちゃってるよ!? まだ終わらないらね?」


「じゃあ次の新作は二年後とかかな」


「富〇義〇じゃないんだから、そんなに読者は待ってくれないよ!?」


「そもそも、これは現実であって、漫画でも小説でもないから読者もくそもないだろ?」



 こうして、舞台はいよいよ修行編へと移行するのだった。

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