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463話「完全敗北」



「あ、あれは!? ぐはっ」



 突如として現れた存在は、さらに突風で追撃を行ってきた。通常であれば躱すことくらいはできた攻撃だが、魔力の大半を消耗したことと片腕を失ったところに奴の攻撃を肩に受けてしまっており、小さな風穴が開いてしまっていた。そんな状態では、回避することもままならず攻撃をもろに受け、そのまま地面へと叩きつけられる。



 幸いなことに、吹き飛ばされた場所は溶岩地帯となっているところから少し離れた場所であったため、二次的な被害を避けることができたものの、依然として正体の知れぬ相手に奇襲を受けている状況に変わりはない。



 なんとか、上体だけでも起こし相手の攻撃に対応できるようにしていると、そいつがゆっくりと降りてきた。そして、開口一番にこう言い放つ。



「まさか、アレを一人で倒してしまうとはな。出来損ないの人間にしては、マシな方か」


「誰だ?」



 そこに現れたのは、白を基調とした装いをした中性的な顔をした男とも女とも取れる見た目をした人物だった。声の低さから辛うじてそいつが男であることは察しがついたが、特質すべきは背中に生えた一対の白き翼だ。どうやら、魔法的な能力ではなく魔力を使ってその翼で飛行しているらしく、今も異様な雰囲気を漂わせたまま顔を歪ませながらこちらを睨みつけている。



「これから死ぬ逝く者に名乗る名などない。大人しく私に殺されろ」


「くっ」



 こちらの問いに答えるつもりはなく、奴の魔力が高まっていくのを感じる。本当に俺を殺すつもりのようで、魔力に混じって凄まじいほどに強い殺気が飛んでくる。



 そんな状態になって、初めて俺はようやく自分の持つスキル【超解析】の存在に思い至る。教えてくれないのであれば、無理にでも見るだけだと考えた俺は、超解析のスキルを使ったが、すぐに使ったことを後悔することになった。





【名前】:?????


【年齢】:?????


【性別】:?????


【種族】:?????


【職業】:?????



体力:?????


魔力:?????


筋力:?????


耐久力:?????


素早さ:?????


器用さ:?????


精神力:?????


抵抗力:?????


幸運:?????



【スキル】



 ?????



【状態】



 ?????




 な、なん……だと? ステータスが見えない。ということは、圧倒的なまでの格上か俺の超解析をもってしても暴くことができないほどの隠蔽能力を持っているかのどちらかだ。



 少なくとも、不意打ちとはいえ俺の身体に傷を付けられている時点で弱いわけはなく、寧ろその攻撃力は先ほど戦っていたドラグニール以上だと予想している。



「ん? 看破系のスキルを使ったか。小賢しい。だが、貴様程度の実力では私の名前すら見ることは叶うまい。もっとも、貴様にとっては返って見なかった方が楽に死ねたかもしれないな」



 これは、かなりマズい状況だ。俺がこの世界にやってきてからいくつもの修羅場があった。だが、今回は過去一でヤバい状況だ。こう見えても、俺はステータスに関しては上から数えた方が早い程の高いステータスを持っている。現時点で、ロリババアことナガルティーニャを除けば俺よりも強い存在など皆無だと無意識に考えていた。今回戦ったドラグニールと今目の前にいるこいつに出会う前は……。



 だが、上には上がいるという言葉があるように、今の俺は井の中の蛙大海を知らずよろしくまだまだ実力不足な人間だったらしい。



「さて、もう気は済んだだろう。こう見えても私は忙しい身の上なのだ。さっさと死にたまえ」


「ぐああああああ」



 そう吐き捨てると、俺を不意打ちで貫いた光線が奴の指先から放たれる。放たれた光線は俺の左目を貫通し、突如として激しい痛みと左側の視界がブラックアウトする。俺にとって幸なのか不幸なのかはわからないが、地面に伏した俺を上空から狙ったため、目は潰されたがその光線が脳に直撃することはなかった。奴がいた場所からは角度的に狙えなかったと思われる。



 だが、ダメージは深刻で今まで受けたことがないほどの重傷を負ってしまっており、このままでは逃げることも困難である。何とか右腕で立ち上がると、そのままなりふり構わず奴のいる方向とは反対の方向に走り出す。



 そのスピードはかなりのものであったのだが、逃げた先に腕を組んだ奴が待ち構えていた。おそらく転移ではなく、身体的な能力差によるものだろう。



「軟弱な人間風情が、あまり私の手を煩わせるなよ。このゴミくずが!」


「ぐはっ」



 俺を罵倒した奴が一瞬にして俺の懐に入り、ボディブローを見舞ってくる。未だ小さい体にその攻撃は厳しく、いとも簡単に体が宙へと投げ出される。吹き飛ばされた先にあった木々や岩をなぎ倒し、まるでバウンドボールのように地面に何度も叩きつけられながら、ようやくその勢いが衰え止まった。しかし、受けたダメージはすぐに立ち上がれそうもない。



「ごふっ、あばら三本持ってかれたか」


「ほう、それほどのダメージを負ってまだ足掻くか。だが、これで終わりだ」


「っ!?」



 いつの間にか追いついていた奴が、人差し指をこちらに向けてくる。指先に魔力が高まっているところを見るに、俺を二度貫いたあの光線で止めを刺す気のようだ。もうまともに動く力は残っておらず、ただただ奴の攻撃が来るのを見ていることしかできない。完全な敗北である。



「では、さらばだ」



 冷たくそう口にした奴の指から光線が放たれる。もうダメかと思われたその時、俺に向かって来ていた光線が何かに弾かれた。

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