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399話「新大陸」



「ここが別大陸か」



 アルカディア皇国のある別大陸とやらを目指して三日程が経過したある日のこと、俺はようやくそれらしき大陸を発見する。まさかこれほどの距離が離れているとは思わず、なかなかにハードなスケジュールだったと思うが、俺はやり遂げた。



 当然だが、二十四時間ずっと飛び続けていたわけではなく、ところどころ休憩を挟みながらの空の旅だった。だが、それでも三日も掛かってしまったことにその距離がどれほどのものなのかは容易に想像できるだろう。



 ちなみにだが、一日中ずっと飛行魔法で飛び続けてそれほど時間が掛かっているところを見るに、襲ってきたアルカディア皇国の連中はその五倍以上……半月程度の航海生活を送って来たことになる。



 わざわざそんな面倒臭いことをしてまで別大陸に勢力を伸ばす神経が知れないが、とにかく俺は目的地に到着したので、細かいことはこの際気にしない。



 一応報告しておくと、何故俺がアルカディア皇国の連中が半月の航海期間が掛かっていると断定できたのかというと、飛行魔法で別大陸へと目指している最中、追い返した奴らの船とすれ違ったからだ。



 すれ違ったといってもすぐ真横を通り過ぎたわけではなく、上空から別大陸を捜索していたその時に海上を航行中の連中を見掛けたからだ。さすがに上空までは目が行き届かないらしく、こちらに気付いた様子はなかったが、あの調子では目的地に到着するまで少なくとも十日以上は掛かるだろう。



 まさかとは思うが、その間の食料がないということはなさそうだが、侵略を想定していたところを鑑みるに、おそらくは必要最低限の積み荷しか積んでいない可能性は高い。



 などと考え事をしているうちに気付けば三日経っており、目的地と思われる別大陸へと到着していたのだ。



 別大陸の全貌は俺がいる位置からは見えず、地平線の彼方まで大地が続いていることは確認できるため、少なくとも俺が所属するシェルズ王国がある大陸よりもかなり広大な土地であることは間違いない。



 ひとまずは、近くにある村や街に向かって情報収集をするところから始めようということで、俺は再び空を駆ける。しばらく飛行すると、そこにはそれなりの規模の街があり、経る図王国の王都と比べるとささやかなものだったが、それでも数千人が住んでいることは間違いない。



「この街なら情報は手に入りそうだが、問題は通貨だな」



 そう、まず別大陸に到着して確認しなければならないのは、こちらの大陸で俺が元居た大陸の通貨が通用するか否かである。現代においても、国によって取り扱う貨幣が異なるように大陸が変われば、場合によって貨幣が変わってくるのではないかと考えたのだ。



 だからこそ、今所持している貨幣がこの大陸でも使用可能かどうかは確認必須であり、早急に確認しなければならないことであった。



 仮に貨幣が異なった場合、最悪街に入るための通行料すら払えない状態となってしまう可能性もあるため、これは是非とも確認したい事案だ。



「次だ。身分を証明できるものを提示してくれ」


「これでいいか?」



 大人しく街に入るための列に並ぶ。もちろんだが、人気のいない場所を選んで飛行魔法を解除したので、他の人間からは俺が徒歩でやってきたと勘違いしているだろう。



 念のため冒険者ギルドのギルドカードを俺が高ランクの冒険者だとバレないよう隠蔽工作を行って提示すると、意外にもすんなりと通れた。冒険者ギルドの情報網とは、大陸を隔てたところでこれほどまでに広大なものなのだと、改めて感心してしまった。



 とりあえず、街に入ることはできたのだが、肝心の貨幣についてはギルドカードの提示で無料で通行できてしまったため、確認ができず仕舞いとなってしまっている。



「であれば、ここは一つ商業ギルドに行ってみよう」



 例の件についても気になったので、冒険者ギルドでもいいかと思ったが、今回はお金のことについての情報を知りたいということで、それならばと商業ギルドに行ってみようということになった。



 商業ギルドの道中で見た街並みは今まで見てきた街とほとんど変わらず、石畳の通路と木造の建物が立ち並ぶヨーロッパ風の景色が広がっていて、それ以外は特に変わったところはない。



 行きかう人々に関してもこれといった変化はなく、本当に別大陸にやってきたのだろうかと疑いたくなってくるほど何も変わりはない。特に興味を惹かれるものもなかったので、そのまま商業ギルドを目指して歩いていく。



 しばらく歩いていると、それらしい建物が見えてきたので、躊躇うことなく入っていく。建物内の内装もほとんど俺が知っている商業ギルドとほとんど同じで特に変わった点は見られない。



「いらっしゃいませ。本日はどういった御用でしょうか?」


「品物を売りたい」


「では、ギルドカードの提示をお願いします」



 一つのカウンターにいた受付嬢のところへ行き、促されるままにギルドカードを提示する。問題ないことを確認すると、すぐに応接室へと通される。



 しばらく待っていると、買取担当の男性職員がやってきたので、さっそく商談を開始する。



「本日は品物の買い取りを希望ということですが、どういった品をお持ちで?」


「これだ」



 担当者の問いに俺が取り出したのは、小さな皮袋だった。中身を確認した担当者は、確認が完了するとこちらに問い掛けてくる。



「これは塩ですね。これだけでしょうか?」


「ああ、これだけだ。いくらになる?」


「少々お待ちください」



 そう言って、担当者は味などの品質を確かめていく、量自体はそれほど多くはないが、この世界では貴重な部類に入る調味料であるため、例え少量でも値が付くと見越して塩を出したのだが、それが功を奏した形となる。



 下手に相場が変動し易いものを選んだり、この土地では珍しいものだったりすると、仕入れルートなどを探られたりするため、面倒なことになりかねない。その点、どこでも入手が可能で仕入れルートなどもある程度予想されやすい塩や砂糖などの調味料は、換金する品物としてはとても都合がいい。



「査定が終わりました。この品質でしたら二千五百ジークとなりますが、いかがでしょう?」


「二千五百ジークか」



 そう言われて、俺は解析を使ってジークを調べる。どうやら、この大陸には通貨に単位が付いており、通常はその単位で取引がなされるようだ。ちなみに、提示された買い取り金額は相場よりも少し低いようで、どうやら俺の見た目が子供であるからして相場よりも低い金額で買い叩こうとしているらしい。



 こっちでは俺の存在を知らないとはいえ、舐められたものだが、これはこれである意味では新鮮だったため、このやり取りを楽しむことにした。

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