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386話「ラインの確保とレギュラー化」



「ん、これでよし」



 オラルガンドの自宅へと戻った俺は、すぐにミックスジュース関連の生産ラインを増築していく。木製コップと樽の製造はすでに問題なく起動しており、すでに俺のストレージには着々と在庫が増加している。



 その様は、さながら前世で暇つぶしにやっていた放置型のソーシャルゲームに似ており、できることが徐々に増えていく様子などは特に楽しかった。



 ミックスジュースに関しては、柑橘系と甘味系の二種類の果汁が入った樽を職人ゴーレムたちに認識させ、大きい樽にその二つの果汁を二対一の割合で投入し、混ぜ合わせるという工程を行わせる。仕上げとして、アルラウネの蜜を一定量加え、甘さを調整できたら完成となる。



 想像していたよりも単調な作業であるため、ゴーレムたちに覚えさせる内容としてはブレスレットよりも簡単に行えた。これで、俺が直接手を出さなくともミックスジュースの在庫を確保することができるようになった。



 ちなみに果汁の入った樽は、俺のストレージに繋がっている魔法鞄経由でモンスター農園へと送られ、そこで新たに果汁が補充されるため、永続的に循環する仕組みとなっている。



 ひとまずは屋台で出す用のミックスジュースについてはこれで在庫を確保することが可能となったが、未だにコンメル商会へと問い合わせが殺到している。名目上メランダたちにやってもらっている露店の元締めがコンメル商会であるため、そこに客が押し寄せるのは理解できるが、これについてもなんとかしなければならない。



「ふむ、小分けにして販売してみるか?」



 そこで思いついたのが、ミックスジュースの小分け販売だ。現在ミックスジュースの入手経路は露店からのみとなっているが、これをコンメル商会でも販売を行う。そうすることで、メランダたちの負担の軽減という意味でも、消費者に商品を提供できるという意味でも問題が解決することができるのではと考えた。



 そのために作っているわけではないが、ゴーレムたちに製造してもらっている大小が異なる樽を有効活用できる。そう判断し、俺はゴーレムたちに指示を出す。



「これとこれに完成したミックスジュースを詰めていってくれ」


「ゴシュジンサマ、ココハプロトニオマカセクダサイムー」



 俺が指示を出していると、プロトがそう提案してくれたので任せてみた。すると、あれよあれよという間に生産ラインが派生していき、元の生産ラインに分岐する形で新しい生産ラインが出来上がった。これによって、【大】の樽にミックスジュースを製造するラインが導入され、その【大】の樽から【中】と【小】の樽へミックスジュースを移し替える工程のラインが形成された。



「ゴシュジンサマ、イカガアデショウカムー」


「パーフェクトだ。プロト」


「カンシャノキワミデスムー」



 伺いを立ててくるプロトに前世のアニメネタを冗談でぶっこんでみたが、完璧に返してきやがった。どこでそんなことを覚えたんだと突っ込みたかったが、元々俺が作ったゴーレムであるため、ある程度の知識を継承しているのだろうと、あまり深くは考えないようにした。問題の先延ばしではないと思いたい……。



 とにかく、これで【大】、【中】、【小】の樽を使用したミックスジュースの製造が可能となった。そして、新たに【中】と【小】のミックスジュース入りの樽の販売価格を決めることになったのだが……。



「露店で売ってるミックスジュースが一杯大銅貨一枚だから、中は二十杯、小は十杯くらいを考えると、単純計算で小銀貨二枚と小銀貨一枚になるな」



 確かに、中と小の樽に入る容量で計算するのであればそうなる。だが、露店で売っているミックスジュースは提供するコップの分も価格として含まれている。つまり、樽で提供する今回はコップ分の金額を差し引いた金額での販売価格として設定するのが好ましい。



 そう思いコップの価値を超解析で調べると、価値としては小銅貨二枚となっていた。ということは、ミックスジュース一杯の価値というのは小銅貨八枚に相当する。それで計算すると、中の樽は小銀貨一枚と大銅貨六枚、小は大銅貨八枚という金額に抑えられる。



 しかしながら、本来使われている原材料を考慮すれば、実質的な価格は大銀貨や小金貨にまで膨れ上がってしまう。これこそまさに“良心的”な価格なのだ。



 俺としては、金儲けが目的ではないため、それでも構わない。商会を通して、働いている従業員が生活に困らない程度の給金が払える金額を稼げればいいのである。



「じゃあ、後のことは任せる」


「カシコマリマシタムー」



 ひとまずはミックスジュース関連については問題なくなったので、一度メランダたちのいる露店へと移動する。今日の分のミックスジュースはまだ届けられていないが、それでも広場には今か今かとミックスジュース販売を待っている人々で溢れ返っている。その効果により、広場で営業する露店も潤いを見せており、聞いた話では広場内での露店を出す競争率が上がっているらしい。



 当然、うちが営業するクッキーと唐揚げの店は売上ナンバーワンとナンバーツーを誇っており、最近では訪れる客の定番メニューとして定着しつつあった。



「ご主人様」


「だから、お前らの主人はマチャドだって何度も言ってるだろ」


「……お客様がお待ちになってます。早く例の物を」



 俺の指摘を華麗にスルーし、早くミックスジュースを出せと言ってくる。……おのれメランダめ、言うようになったではないか。だが、今日は限定販売ではなく、オラルガンドの自宅の工房内から現在進行形で増産されているので、今日はすべての客に対応できると踏んでいる。



「それとだ。今日からミックスジュースの在庫が確保できるようになったから、こっちにも人員を寄こしてくれ」


「本当ですか。すぐに手配します」



 ミックスジュースの在庫が確保されたことを告げ、売り場に人を配置するよう指示を出すと、メランダがすぐに実行に移す。最初こそぎこちない様子の彼女たちだったが、今では即座に行動できるほどの連携力を見せている。



 ものの数分と掛からず、十数人の女性たちが集結する。それだけであれば問題ないのだが、異常があるとすれば、彼女たちが俺に向かって片膝を付いて平伏していることだろう。通行人の視線が痛い。



 そして、何故かは知らないがクッキーと唐揚げを販売している女性たちに目を向けると、こちらに向かって頭を下げている姿が目に入ってくる。俺はどこかの王族か何かだろうか?



「ご主人様、揃いましてございます」


「あ、ああ。とりあえず、全員立とうか」



 あまりにも異様な光景であるため、いたたまれなくなりすぐに止めさせた。というか、実を言えば、これ俺が来る度にやってるんだよ。



 それがあまりに連続するものだから、常連の客からは「ああ、ミックスジュースの坊っちゃんが来た」という合図になってしまって、それを見て列を作り出すという俺としては恥ずかしい目に遭わされている。何かの罰ゲームだろうか?



 とりあえず、いつものように魔法鞄を手渡し、そこからミックスジュースを取り出す。すでに百人になろうかという大行列ができており、現在進行形でその人数が爆増していた。



「よう坊っちゃん」


「ああ、あんたか」



 こう何日もミックスジュースを運搬していると、顔見知りの常連の一人や二人できるもので、今日も列の先頭には常連の男性が並んでいた。毎日来てくれているのだが、庶民にとってはそれなりの値段のはずのミックスジュースを買っていて家計は大丈夫なのだろうか。



 そんなことを気にしつつ、二言三言雑談をする。そして、話の流れからミックスジュースが限定販売ではなく通常販売に切り替わったことを伝えた。



「そりゃあ本当かい!?」


「ああ、これから在庫を確保できるようになったから、今日からクッキーや唐揚げと同じように売ることになった」


「そりゃあいい知らせだ。おーい、今日から販売できる数が増えるってよ!」



 俺の言葉を聞いた男性が、後列に向かって大声で叫ぶ。すると、並んでいた全員から歓声が上がった。歓声に混じって「いつも飲めず仕舞いだったから有難い」だの「やったー」といった声が聞こえてきた。どうやら、全員がミックスジュースの販売を待ち望んでいたようだ。



 それから、しばらく様子を見ていたが特に問題なさそうだったので、再びコンメル商会に赴き、まとめ売りの分となる中の樽と小の樽の販売を行うことをマチャドに伝え、露店と同じく魔法鞄を渡しておいた。



 こうして、常習的にミックスジュースの販売が行われるようになり、ますます広場の露店が賑わいを見せることになったのであった。

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