374話「フローラの報告」
「それで、詳しく話してくれるのだろうな?」
セラフ聖国との謁見終了後、すぐさま執務室へと呼び出された俺は、ただいま絶賛国王たちの尋問を受けていた。執務室には、国王と宰相バラセトと近衛騎士団長のハンニバルも一緒だ。
「ローランド殿、エグザリオン枢機卿の言っていたことはどういうことですかな?」
「かくかくしかじか……」
「そんな誤魔化しが通用するとでも」
「なるほど。セラフの振舞いを正すため、結界を張り正しい心を持つ一部の人間に結界の通行許可を与えることで、セラフを内から浄化しようとしたのですな! さすがは師匠です!!」
「「「……」」」
バラセトの追及に苦し紛れの言葉を口にしたのだが、それを何故か解読してしまったハンニバルにその場にいた人間が押し黙る。その内に秘めたる言葉は全員一致していた。“何故それだけで通じる?”である。
とりあえず、ハンニバルのお陰なのかせいなのかはわからないが、セラフ聖国で行った大まかな活動内容を暴露してくれたことで、俺の説明を省くことができたのだが、次の問題はフローラをどうするかだ。
「今回セラフの連中がやって来た目的は、ほぼ間違いなく俺だろう」
「ふむ。具体的にお前に何を望んでいるのだ?」
「そこまではわからない。今のセラフの現状を報告するためなのか、セラフで何かあって俺の力が必要だと判断したのか……」
「ひとまず、会ってみてはどうです? でないといつまで経っても話が進まんでしょう」
ハンニバルのもっともらしい言葉に、それが一番手っ取り早いと結論が出たため、一度彼女の話を聞くべく、会うことにした。
「ああ、お久しゅうございます! お会いしとうございました!!」
しばらくして部屋に通されたフローラは、俺の姿を見るなり、両膝を床に付け両手を組む姿となり、まるで神聖な何かを前にしているかのような態度を取った。彼女の護衛で付いてきた騎士たちも彼女から話を聞いていたのか、片膝を付き俺に平伏している。
俺の背後から「一体どういうことなんだ?」というこちらを問い詰める視線が伝わってきたが、そんなもの俺が聞きたいくらいなため、とにかくフローラの話を聞くことにする。
「とりあえず、話を聞こう。セラフ国内で何かあったのか?」
「はい。いいえ、不穏分子の処罰は順調に進んでおりまして、この調子でいけば私が教皇になるのはほぼ間違いないかと」
「そうか。どうやらお前を選んで正解だったようだな」
「は、はいっ!」
フローラの報告に俺が感想を述べると、まるで至上の喜びとばかりに顔を輝かせる。そんな彼女の様子を見てますますシェルズ勢は訝し気な視線を向けてくる。差し詰め“お前本当にセラフで何をやらかした?”といったところだろう。……結界張ってフローラにその結界の通行パスを渡しただけですが、何か?
彼女の話の中にもあった次の教皇になれるというものが気になったため、さらに詳しい話を聞いたところ、どうやら内容的にも彼女が次の教皇になるということは揺るがないらしい。
「現在残っている反抗的な枢機卿はマッド・クラウェル枢機卿のみとなっており、最後の抵抗として現教皇と手を結んだようですが、それも多勢に無勢。今回の一件で国民にも教皇や他の枢機卿が行っていた悪行も知れ渡ってしまい、後がない状態となっております」
「……あの男か」
フローラの言っていた男とは以前因縁のあった間柄なため、思わせぶりに呟いたのだが、それを聞いた彼女が知っているのかと問うてくる。
「ああ、一度……いや、二度戦ったことがある。二度とも逃げられてしまったが、今回ばかりは逃げ場はないだろう」
「ええ。必ずや追い込んでみせます!」
それから、自分を選んでくれたことに対する感謝のような祈りの言葉のようなものを口にしていたフローラだったが、俺としては結果的に彼女を利用するための駒扱いでしかなかったため、彼女の言葉を適当に流した。
その態度に国王たちはなんとなく気付いていた様子だが、わざわざ教えてやるつもりもなかったらしく、最後まで黙って俺とフローラのやり取りを静観していた。
「あらあら、すっかり長居してしまいまして」
「問題ない。セラフの現状も把握できたからな。……面倒事じゃなかったし」
「何か言いましたか?」
「いや」
それから、目的を果たしたフローラは改めて俺に礼を言って、そのままセラフへと帰って行った。
後に残された俺は、当然だが国王たちの追及があったのだが、ハンニバルが最初に説明した内容で大体の状況は把握できたため、そのまま逃げるように部屋を後にした。
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