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316話「俺の新たな目的」



 冒険者ギルドへとやってきた俺は、あることについて尋ねることにした。その内容とはブロコリー共和国に点在しているダンジョンに関する情報だ。



 あれから、人伝に国内の情報を聞いてはいるものの、実際にこの目に見てみないことには如何ともし難いことが多数存在する。そのうちの一つがダンジョンの情報だ。



 情報は武器であり、ある一つの物事を知っているのと知っていないとの差は、失敗できないものであればあるほど大きなものとなってくる。特に命の軽いこの異世界においては。



 未だ情報として聞いているダンジョンの中で確認に行っていない場所があり、そのダンジョンを視察するべく、詳しい場所を冒険者ギルドに聞きに来たのだ。



「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ。本日はどういったご用件でしょうか?」


「この国のダンジョンについての詳しい情報が欲しい」


「かしこまりました。身分確認のためのギルドカードをご提示いただいてもよろしいですか?」


「ん」



 受付カウンターに行くと、女性職員が応対してくれる。ちなみに、この冒険者ギルドに例の三人組はおらず、特に目立つ職員もいないようだ。



 ギルドカードを提示すると、その内容に目を見開いて驚いているようだ。大声で叫ばないだけここの職員の教育レベルの高さが窺える。



「ローランド様、申し訳ございません。ギルドマスターにお会いいただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ」



 さすがにSSランク冒険者が現れて大事にならない訳もなく、急遽ギルドマスターに会う運びとなった。やはりこうなってしまったかと思いつつも、一応カフリワの冒険者ギルドのギルドマスターとも顔合わせをしておくべきだと判断し、大人しく案内に従う。



 ギルドマスターに会ったが、これといって特にトラブルもなく、普通の顔合わせで済んでしまった。常日頃から何かしらのトラブルが舞い込んでくることに慣れてしまっているため、少々拍子抜けだったが、何事も起こらないことに越したことはないので、そこはラッキーだったと思うことにする。



 ギルドマスターの名はガルムといい、元冒険者らしい筋骨隆々の髭面の中年男性だった。まだ現役でも十分いけそうな雰囲気を持っていた。彼からブロコリー共和国に点在するダンジョンの情報を聞いてみると、快く教えてくれた。



 ブロコリー共和国で確認されているダンジョンの数は大小合わせて六個が確認されており、それぞれのダンジョンに隣接する拠点が設営されている。その中でも、カフリワから南西方面にある迷宮都市【モルグル】という都市が国内最大のダンジョンを有する都市であるらしい。



 シェルズ王国の迷宮都市オラルガンドと比べれば、その規模はさほどではないにしろ、ブロコリー共和国内で最も冒険者が集う場所であることは間違いない。



 とりあえず、この国の最大迷宮都市に顔を出しておくべきだと判断した俺は、ギルドマスターに礼を言って冒険者ギルドを後にした。



「さて、次はダンジョンか。楽しみだ」



 ダンジョンはオラルガンドでソバスたちと共に遠征した以来となるため、まだそれほど時間が経過していないにしろ、やはりダンジョンとは心躍らせるものがある。一度トーネル商会へと戻り、トーネルに一言断りを入れ、俺はモルグルを目指すことにした。



「ローランドきゅん、少しいいかい?」


「なんだ?」



 たまたまトーネル商会にいたナガルティーニャが、珍しく真面目な顔で話し掛けてきた。彼女がこういう態度を取る時は、真面目なことを伝えたい時だと理解しているため、無視するのはよくないことを知っている。



 彼女の言葉を促すように待っていると、やはりというべきか、彼女が真面目な顔つきで俺にあることを伝えてくる。



 それは、再び世の中を知るための旅に出かけたいという旨で、二百年以上この世界のことを知らずに閉じ籠っていた彼女としては、まだまだ知らないことが多いため、それを知るために旅を続けたいということだった。



 俺としても、彼女の主張は理解ができるし、彼女自身を縛り付けておくこともしない。だから、ナガルティーニャが旅に出ることに反対はしない。



「そうか、寂しくなるが元気でな」


「なら、行ってきますのチュウを――」


「また何かあったら報告する。じゃあ、逝って良し」


「なんか別の意味の言葉に聞こえるのはあたしの気のせいなのかな?」



 途中からおふざけが始まることを瞬時に察知した俺は、すぐさまコメディモードに切り替えて有耶無耶にする方向にシフトする。ナガルティーニャ自身もいつもの慣れ親しんだじゃれ合いをしたかったようなので、それ以上は突っ込んでこなかった。



 それから、簡単な挨拶をしてナガルティーニャはどこかへと旅立って行った。彼女と再び会う日のことを思うと、今から頭が痛くなりそうだが、そのことは頭の隅に追いやり、彼女がいなくなることを喜ぶことにしたのだった。



 ナガルティーニャが旅立ったことを確認すると、俺もまたカフリワからモルグルへ向けて遠征を開始する。ガルムからの情報では、モルグルは首都カフリワから南西方面に馬車で二十日ほどの距離にあり、通常であれば往復一月半弱ほどの期間を要してしまう。



 だが、そこは飛行魔法と瞬間移動という異世界におけるチート能力を所持している俺からすれば、本気で移動すれば三日と掛からないだろうと予想している。



「とりあえず、行こうか」



 首都カフリワから人目を避けるように移動し、途中から飛行魔法を使って高速移動を開始する。一応、念のために他の人間に目撃されないよう結界を張りながらの飛行を行い、俺の予想通りモルグルに到着したのはカフリワを旅立ってから三日後だった。



 諸々の手続きを済ませ、すぐに拠点として寝泊まりする宿を探し、ひとまずは三日分の部屋を取っておく。ちなみに、やはりというべきかモルグルにも例のアレはなかった。



 その足で冒険者ギルドへと向かい、アレの確認がてらダンジョンについての話を職員に聞いた後、街の散策をしてその日は宿に帰って休むことにした・



 余談だが、モルグルの冒険者ギルドにもアレはなく、少し寂しいと感じたが、たまにはこういった寂しさも悪くはないので、肩を竦めつつそれを受け入れることにしたのであった。

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