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268話「チートな修行の結果と新たな参加者」



「おめでとうございます。ニッチェちゃんがCランクに昇格したことで、皆さんが二十階層までの攻略が可能となりました」



 にこりと笑いながら、サコルがそんな風に称賛してくれたのは、前回のダンジョン攻略からさらに五日が経過した頃だった。



 あれから、地道なダンジョン攻略ではいつまで経っても実力がつかないと判断した俺は、自分が持っているチートな能力を使うことにした。それは、時間の概念をぶっ壊す結界だ。



 その結界の中であれば時間の概念自体が捻じ曲がっているため、中で活動している生き物は時間経過自体が無意味なものになる。仮に結界内で数年の時が経とうとも、結界の外に出た際、結界に入る前の状態に戻ってしまうのだ。



 これを活用していたのがナガルティーニャであり、元は彼女が使っていた技だが、今回の使用人たちを短い期間で強くすることには向いていたようだ。



 その結界内でひたすら修行をしまくった結果、あっという間に階層ボスを単独撃破していき、結果全員の冒険者ランクがCになってしまったのだ。



 この五日という期間は、強くなるために掛かった期間ではなく、全員がCランクになるのに掛かった時間だということを考えれば、この短期間でどれだけの実力を付けたかがわかるだろう。



 尤も、結界内で過ごした期間はそれの二百倍以上だということを考えれば、それくらいの実力になるのは当然といえば当然だ。



 結界内で過ごしていて困ったことがあったとすれば、数年経った俺の青年ローランドの姿を見て、使用人全員が感動していたことだろう。女の使用人は頬を染め、男の使用人は忠誠を誓うとばかりに平伏したことは、俺の記憶にも新しい。



 そして、結界の外に出たことで、元の状態に戻った俺を見て残念がられたこともまた印象に残っている。どんだけ青年ローランドに執着していたのやら……。



 兎にも角にも、時間の経過のない結界を用いることで、彼ら彼女らの実力は格段に向上し、経験者組や素人組などという枠組みが無くなるほどに強くなった。



 今ならば、Bランクモンスターであれば、全員で掛かれば問題なく対処できるだろう。だが、まだまだ実力的には足りていないと俺は考えている。目指せ、Aランクモンスター単独撃破!



 ニッチェがサコルからCランクと表記されたギルドカードを受け取ると、サコルが俺に話し掛けてきた。



「ところで、ローランドくん。ギルドマスターが依頼の進捗はどうかとの伝言があるのですが、どうですか?」


「まだもう少し掛かりそうだ。あの婆さんの寄こした依頼が、簡単に終わらせられるのなら苦労はない」



 などと言っているが、実のところはソバスたちの育成が楽し過ぎて忘れていただけなのである。もう一度言う。忘れていただけなのである。そうサコルに言い訳しつつ、ソバスたちを伴って俺は逃げるように冒険者ギルドを後にした。



 そう言えば、これは余談になってしまうのだが、何故かはわからないのだがここ数日、駆け出しの冒険者が俺に弟子入りをしたいと突撃してくることが多くなっているという事案が発生している。



 おそらくだが、冒険者登録してまだ数週間しか経っていないにも関わらず、見る見るうちにランクを上げていったソバスたちを見て、俺に教えてもらえれば自分たちもすぐにランクが上がると考えたらしい。



 当然、そんな邪な考えで教えてやるほど俺も人がいいわけではない。それにソバスたちはうちの使用人……言わば身内の人間であるからこそ俺も惜しげもなく教えているのであって、何の縁もゆかりもない他人に優しくしてやる謂れはないのである。



「ソバス。しばらくダンジョン攻略はお休みだ。二、三日ほど休暇をすると皆に伝えておいてくれ」


「かしこまりました」



 そうソバスに伝えると、俺は一人ダンジョンに赴くことにした。



 とりあえず、ダンジョンの転移機能を使い八十階層まで跳ぶ。これより深層の転移ポータルを使うと、冒険者ギルドに最高到達階層の記録が破られたことがバレてしまうからだ。



 それに、イザベラが寄越してきた五年依頼や十年依頼は、どれも八十代の階層にある素材の納品ばかりで、当然だが九十代の階層の依頼は皆無だ。



 理由は簡単で、今までの最高到達階層が八十六階層で、八十七階層以降がどうなっているのかは実質的に誰にもわからないからだ。だからこそ、オラルガンドの五年依頼や十年依頼は、すべて八十六階層より上の階層に関連する依頼ばかりなのである。



 そんな八十代の階層は主にAランクのモンスターがひしめく場所となっており、俺にとっては何も脅威となり得ないので、今日中にいくつもの依頼を達成することができると踏んでいる。



「グルルルル」


「これは、確か【グレーターウルフ】だったか? こいつの素材が、五年依頼で出ていたはずだ。というわけで犬公よ、素材になってはくれまいか?」


「グルル?」



 その後、グレーターウルフは皮や骨などの素材となり、ストレージに納まるのであった。ちゃんちゃん。



 それから八十代の階層をぐるぐると周回し、Aランクのモンスターを乱獲して素材を回収していった結果、かなりの数の依頼が達成できた。



 依頼の中でも比較的難易度の高かったものも、Sランクモンスターの素材納品または幻クラスの素材アイテムの納品であったため、そちらも適当に集めておいた。



 王都の方の五年依頼や十年依頼と比べると、その依頼内容はダンジョンに起因するものが多いため、最高でもSランクモンスターを相手にすればいいだけという俺にとってはかなり簡単な依頼となってしまっていた。



 こうして、丸一日を掛けて五年依頼を二十二個、十年依頼を十二個という驚異的な数の高難度依頼を達成してしまったのであった。






     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「な、ななななんですかこれはぁー!!」



 依頼を達成した後、すぐに冒険者ギルドで依頼達成の報告をすると、サコルが叫び出した。俺が取り出した依頼書の数に驚いたようだ。



 そのあと、ギルドの一職員であるサコルでは当然といえば当然なのだが処理しきれず、話がムリアンに行き、ムリアンもまた対応できないということで、最終的にイザベラの元へと顔を出すことになった。



「あんたは規格外ということは理解しておったが、まさかこれほどとは思わなかったよ」



 などという呆れた言葉を頂戴したが、最終的には抱えていた未達成の依頼を処理してくれたということで感謝の言葉をもらった。



 それから、応接室で納品できる素材をすべて納品した俺はあとのことをすべてギルドへと丸投げし、そのままギルドを後にする。



 それ以降は、使用人たちの休暇を消化するまで、王都や他の拠点の様子を見に行ったりして時間を潰し、再びダンジョン攻略を再開しようとしたところで、意外な知り合いと再会することとなった。



「お久しぶりです師匠!」


「……」



 俺の身近な人間で、こんな呼び方をするのは奴らしかいない。お察しの通り、ギルムザック達である。



 何故、彼らが王都を離れ、オラルガンドにやってきているのかといえば、俺が使用人たちを鍛え上げることをどこからか聞きつけ、それに乗じて自分たちもついでに鍛えてもらおうという魂胆だったらしい。



 ごく一部の人間は、この機会にお近づきになろうという邪な考えを持っているようだったが、概ねはさらに強くなりたいという純粋な思いからくるものだった。



 言うまでもないことだが、邪な考えを持っている人物はメイリーンで、今も獲物を狙う肉食獣の如くといった具合の視線をこちらに向けてきている。だが、俺に対する忠誠心が高い使用人の前でそんなことが許されるわけもなく、その思惑は徒労に終わることだろう。



 こちらとしても、一人を除いて彼らの思いは純粋なものであるということと、強くなった使用人たちの実践相手が欲しかったところだったため、ギルムザック達の参加を認めることにした。



 そして、新たな参加者と共に再びダンジョン攻略が再開されるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 青年ローランド。女性陣の反応は予想の範囲内だが。男性陣の反応はビックリ。 それだけのカリスマがあるってことなら、かつてしたように貴族モードブッパしたらどんなことになるのやら。
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