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254話「十年依頼」



 冒険者ギルドを出た俺は、さっそく行動を開始する。今回の目的は、王都から馬車で二月ほど離れた場所にそびえ立つ山々のどこかに生息すると言われている【ロックドラゴン】と呼ばれる竜種の鱗を持ち帰ることだ。



 メリアンが出してくれた紙の中にあった依頼の一つで、内容としては納品依頼の部類に入る。依頼主はとある有力な貴族が出しており、その報酬も大金貨二百枚と破格のものだ。



 彼女の話では、当時この依頼を受けたAランク冒険者のパーティーがいくつかいたらしいのだが、依頼の内容が内容だけに達成できた者は皆無だったらしい。



 達成できなかった内容もいろいろで、そもそもロックドラゴンに会うことができなかったというお粗末なものもあれば、依頼を受けて以降その冒険者の姿を見た者がいなかったことからロックドラゴンの返り討ちに遭ったというものまで様々だ。



 そして、この依頼が十年依頼となってしまった一番の要因としては、今まで依頼主である貴族から依頼の撤回がなかったため、ギルドでずっと塩漬けになっていた依頼だったようだ。



 依頼の難易度から実力の伴わない冒険者に依頼を出すわけにもいかず、かといって実力のある冒険者は別の依頼で手一杯という状況だったがために今まで達成されることのなかった依頼だった。



「この山脈がそうか」



 目的のドラゴンが生息すると言われている場所に二時間と掛からず到着した俺は、さっそく索敵を開始する。山には当然ロックドラゴン以外の生物も生息しているため、俺の索敵の網にかなり引っ掛かっているが、索敵の対象が巨大な体躯をしているドラゴンであるため、意外にもターゲットはすぐに見つかった。



「あそこか」



 その場所は山々が点在するほぼ中心部であり、人間からすれば危険度が最も高いであろう場所に陣取っている様子だ。しかしながら、空を飛ぶことができる俺からすれば何ら障害となり得ないため、とっとと用事を済ませて帰ることにした。



「グルルルル」


「これがロックドラゴンか……デカいな」



 索敵でわかってはいたものの、実際に目の当たりにしてみればその巨体の大きさがよくわかる。その巨体は優に二十メートルを超えており、発達した後足を使って人間のように佇んでいる感じだ。

 見た目は、ロックドラゴンというだけあって灰色に近い色合いをしており、背中から生えた翼はドラゴンとしての威厳を放つには十分だ。



 そもそも、ドラゴンという生き物自体すべての生物のヒエラルキーの中で頂点に君臨するといっても過言でないほどに強大な力を持ち合わせている生物であり、はっきり言って自然災害といっても差し支えないほどの存在だ。



 そんな生物から鱗を取ってくるという馬鹿げた依頼を出す人間も人間だが、その依頼を受ける人間もまたどうかしている。……まあ、この依頼を受けている俺も見事にその人間の仲間入りを果たしているので、これ以上は突っ込まないでおく。



「また性懲りもなくやってきたか人間」


「ほう、喋れるのか」


「人間如きの言葉を操ることなど、我くらいになれば容易きことよ」



 ロックドラゴンが突如として語り掛けてきたことについては多少驚きはしたが、世の中には知性の高さ故に人の言葉を操ることができるモンスターは一定数存在する。



 かく言う俺のペット……もとい、召喚獣として契約を結んでいるオクトパスやマンティコアもまた人の言葉を操っているのがいい証拠だ。



 とにかく、この目の前にいるトカゲがどの程度の強さを秘めているのか確認すべく、俺は【超解析】を使って調べることにした。





【名前】:ロックドラゴン


【年齢】:1373歳


【性別】:♀


【種族】:竜族


【職業】:なし(SSランク)



体力:807000


魔力:981000


筋力:SSS


耐久力:SSS


素早さ:SSA+


器用さ:SSS-


精神力:SSS


抵抗力:SSS-


幸運:SSA-



【スキル】: 身体強化・改LvMAX、魔道の心得LvMAX、火魔法LvMAX、土魔法LvMAX、大地魔法LvMAX、炎魔法LvMAX、超ブレスLvMAX、超飛翔LvMAX、


 超集中LvMAX、威圧LvMAX、魔法耐性LvMAX、物理耐性LvMAX、毒無効LvMAX、幻惑無効LvMAX、パラメータ上限突破Lv2



【状態】:なし






「ほう」



 得られた解析結果に俺は感嘆の声を漏らす。俺が予想していたよりも、かなりの強さをロックドラゴンが持っていたからだ。



 強さとしては、魔界で出会ったヴェルフェゴール並の強さを持っており、以前の俺と互角の力を秘めている。



 こんな奴がまだこの世界に存在していたことに感心していると、突如としてロックドラゴンが上体を逸らし始める。それを見た瞬間、ロックドラゴンが何をしてこようとしているのかすぐに理解した俺は、奴の攻撃に備えるため、自身の周囲に結界を張り巡らせる。



 結界が張り終えたとほぼ同時に放たれたロックドラゴンのブレスが襲い掛かる。さすがのパラメータだけあってその力は尋常ではないほどに強力で、結界が打ち破られそうになりそうになる。



 だが、俺とて数多くの修羅場を経験してきている。先に張った結界のさらに内側に新しい結界を張り、強度を高めたことにより、ロックドラゴンのブレスをなんとかやり過ごすことに成功する。



「ほう、我のブレスを耐えるとは少しは骨があるようだ」


「いきなり不躾に攻撃してくるとはな。ドラゴンとはどうやら礼儀を知らないらしい」



 俺の言葉が気に食わなかったのか、グルルという唸り声を上げる。俺は礼儀を教えるべく身体強化で奴の懐に潜り込み、片足に向かって水面蹴りを放つ。

 放たれた俺の攻撃によって片足を浮かされる羽目になったロックドラゴンが、バランスを崩し仰向けに倒れ込んだところに俺はジャンプをしつつ、その腹部に向かって拳を突き立てた。



 固い鱗に守られたドラゴンの体は、いかなる攻撃をもってしても貫通することはない。だが、何事にも例外は存在する。



 ドラゴンの鱗でも守り切れないほど強力な攻撃であれば、その強固な守りを貫くことは比較的難しくはない。尤も、そんな攻撃ができるという条件をクリアできる存在がいるかどうかという話になってくるのだが……。



「お、おのれ人間如きが我に何をした!」


「そんなことより、お前には二つの選択肢をくれてやる。大人しく、俺に鱗を差し出すか。このまま俺に倒されるかのどちらかだ。好きな方を選べ」


「死ね、愚かなる人間よ!!」



 そう叫ぶロックドラゴンが、己が翼を羽ばたかせこちらに突進してくる。俺はそれに応じるべく、飛行魔法を使って宙へと舞い上がる。



 圧倒的物量で襲い掛かるロックドラゴンの攻撃を、俺は迎え撃つように突っ込んでいく。そして、すれ違いざまに手刀をくれてやると、その部分が欠けるように鱗が剥がれ落ちた。



 剥がれ落ちたいくつかの鱗を俺はストレージに収納すると、俺はロックドラゴンに向かって感謝の言葉を述べる。



「確かに鱗は頂いた。感謝する」


「人間がぁー!!」


「では、また必要になったらもらいに来るから、その時はよろしく頼む」



 そう言い放ってやった後、俺はすぐにその場を離れた。離れ際にブレスを放ってきたロックドラゴンの攻撃をすべて結界で防ぎ、俺は王都へと帰還するため瞬間移動を使う。



 瞬間移動を使う前にロックドラゴンの怒りの咆哮が聞こえてきたが、目的のものは手に入れたので、俺は気にせずそのまま王都へと戻ることにした。

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[一言] 〉「確かに鱗は頂いた。感謝する」 怪盗みたいなセリフの強盗w
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