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19話「街へ、そして冒険者ギルドへ」



「口笛はなぜぇ~、ふふふん、ふん、ふん、ふん、ふんふんふん」



 マルベルト家の屋敷を出た俺は、ひたすら東を目指していた。道中とてもいい晴れ間だったため、某名作アニメのオープニングソングを口ずさみながらスキップ混じりで目的地に向かう。



 ちなみに周囲は見渡す限り平原が広がっており、そこに人や馬車が通ったあぜ道が一本通っている。

 そして、なぜ俺が鼻歌まじりでスキップができるのかというと、俺以外に誰もいないからである。……誰かいたら軽く死ねる。



 以前書斎で調べた本の情報によれば、マルベルト領の西側の隣領がバイレウス領でさらに西に進むと、シェルズ王国と十数年前に戦争をしていたセコンド王国へとたどり着く。

 一方東側の領地は、ラガンフィード子爵が治めるラガンフィード領で、マルベルト領とのちょうど境目となる場所に【ラレスタ】という街が存在している。



 現在俺が向かっている街はそのラレスタで、マルベルト領からそのラレスタまでは馬車で五日ほどの距離にある。

 一応手荷物の中に五日分の食料と水を持ってきてはいるものの、できれば早めに到着したいところだ。



 ところで話は変わるが、今までこうして過ごしてきた中で一つ言及していないことがある。それはこの世界にはステータスというものが存在する。



 あれは俺が前世の記憶を取り戻してから二日後、ほんの些細なことがきっかけで、俺は【鑑定】という能力を手に入れた。

 その能力を使い自分を鑑定したところ、この世界の人間にはゲームのように特定のパラメータが存在していることがわかったのだ。



 なぜ今までこのことを言わなかったのかと問われれば、説明するのがめんどくさ……もとい、前世の記憶を取り戻してからの六年間を説明する方を優先したためである。



 とりあえず、俺が初めて鑑定を使って見た自分の能力を紹介しよう。





【名前】:ロラン


【年齢】:六歳


【性別】:男


【種族】:人間


【職業】:領主の息子



体力:20


魔力:5


筋力:G−


耐久力:G−


素早さ:G−


器用さ:G


精神力:G


抵抗力:G−


幸運:C



【スキル】:鑑定Lv1




 ステータスは名前や年齢などの基本情報からゲームのような各パラメータが存在する。

 体力と魔力は実数で表記され、その他の能力はアルファベットとプラスマイナスとフラットで表される。



 最も低い数値はG−で最も高い数値はCだが、どこまでが最高値が現在も判明していない。

 鑑定の能力はスキルとして分類され、レベル表記が存在することからレベルが上がることで鑑定の精度が上がっていくと推察される。




「一応今の能力を見ておくか」



 初めて鑑定をした時の頃を思い出し、現在の能力を見るべく鑑定を使用する。





【名前】:ロラン


【年齢】:十二歳


【性別】:男


【種族】:人間


【職業】:元領主の息子



体力:1400


魔力:1100


筋力:B


耐久力:B−


素早さ:B+


器用さ:C+


精神力:B+


抵抗力:B


幸運:A−



【スキル】:鑑定Lv5、身体強化Lv4、魔力制御Lv5、魔力操作Lv5、火魔法Lv3、水魔法Lv3、風魔法Lv4、土魔法Lv3、剣術Lv4、格闘術Lv5





 六年間の修行の成果としては意外とレベルが低い気もしなくはないが、屋敷の使用人やマークとローラ以外の家族の目を盗んで訓練していたため、一日にできる訓練量が少なかったことが要因だろう。



 その代わり、一人でいるときにひっそりとできる魔力の制御と操作に関しては、レベル5と高めになっており格闘術なども日々の鍛錬によって高い数値を叩き出している。



 ちなみに俺の代わりに領主になってもらう予定のマークのステータスは、平均ステータスがCと俺よりも一段階劣るものの並の兵士の強さがD−であることを考慮すれば、かなりの強さと言えるだろう。



「さてと、このままのんびりと街まで行ってもいいが、できるだけ早めに行動したいからな。ちょっと本気を出そう」



 そういうが早いか、俺は全身に身体強化を施す。全身に魔力が行き渡り、体全体が薄い膜のようなもので覆われる。

 そのまま地面に膝をつき、陸上競技のクラウチングスタートの体制をとって、俺は勢いよく叫んだ。



「ロラン、いっきまぁーす!!」



 その声と同時に俺は発した声と同じく、勢いよく地面を蹴って飛び出した。その瞬間周りの景色を置き去りにするスピードで進んでいることに気付くまで数秒の時間を要した。体感だが、時速七十キロは出ているだろうか。

 実を言えば、身体強化した状態でどこまでのことができるのかという検証に関しては、あまり進捗は芳しくなく精々垂直飛びが二十メートルできたくらいしか判明していない。



 今回晴れて自由の身になれたことによって、己の実力を隠す必要はなくなったので今後こういった検証は随時行っていくこととしよう。

 尤も、あまり大っぴらに実力を出しすぎると、家に連れ戻されたり厄介事に巻き込まれる可能性があるため、そこはある程度自重するつもりだ。



 かつて前世で読んでいたファンタジー小説でも似たようなことが描かれており、その時の主人公は自重することなく自由気ままにやっていたため、いろんなことに巻き込まれていたが、俺はひっそりと活躍していこうじゃないか。



「ギギィ!?」


「邪魔だ」


「グベッ」



 進行方向にいたゴブリンを裏拳で吹き飛ばす。その勢いは凄まじく、確認はしていないが多分即死だろう。

 そのままのスピードを維持しつつ、途中自生していた木があったのでその木陰で休憩がてら持参した保存食を口にする。



 保存食は固焼きせんべいのような固さの黒パンと、これまた固いビーフジャーキーのような干し肉である。

 味に関しては、あまり美味くはないが腹を満たすだけであればこれで十分といった具合のものだ。



 休憩を終え、再びチーター走行で走っていると、前方に壁に覆われた都市のようなものが目に飛び込んできた。

 心なしか人の往来が多いこともあってかあぜ道だった街道もある程度踏み固められた質のいい状態に変化していた。



 道に迷わないように街道を少し離れた場所を走っていたので、俺の姿を見たやつはおそらくいないだろう。

 怪しまれないよう草陰からひっそりと出てくると、何事もなかったかように俺は行き交う人々に交じって歩いて街を目指した。



 そこから約一時間後、ようやく街に入るための門までたどり着き、現在入るための手続きの列に並んでいるところだ。

 列を作っている人間は様々で、荷馬車を引いた行商人や武装した冒険者風の男性。軽装に身を包んだ艶めかしい女性や大きな荷物を背負った旅人なんかもいる。



「次だ」



 周りを観察していると、いつの間にか自分の番になっていたのでそのまま前に進む。担当してくれたのは、兵士の格好をしたいかにも門番ですといった具合の男だった。



「身分証明は持っているか」


「ないから入市税を払いたいんだが」


「珍しいな、なら小銅貨三枚だ」



 門番の指示に従い、手荷物から小銅貨三枚を取り出し支払う。この世界の通貨は九種類存在し、それぞれ以下のようになっている。




 小銅貨 一枚(日本円で十円) 十枚で大銅貨一枚と同じ価値。



 大銅貨 一枚(日本円で百円) 十枚で小銀貨一枚と 〃



 小銀貨 一枚(日本円で千円) 十枚で中銀貨一枚と 〃



 中銀貨 一枚(日本円で万円) 十枚で大銀貨一枚と 〃



 大銀貨 一枚(日本円で十万円) 十枚で小金貨一枚と 〃



 小金貨 一枚(日本円で百万円) 十枚で中金貨一枚と 〃



 中金貨 一枚(日本円で一千万円) 十枚で大金貨一枚と 〃



 大金貨 一枚(日本円で一億円) 十枚で白金貨一枚と 〃



 白金貨 一枚(日本円で十億円)





 ちなみによく使う層の一例を挙げれば、小銅貨から小銀貨までが庶民、中銀貨から小金貨までが商人または下級貴族、中金貨以上が大商人と上級貴族と王族がよく取り扱っている。

 特に白金貨に至っては、ほとんどお目にかかることはなく、王族の宝物庫に保管されていることが多い。



 貨幣価値については、りんご一個で小銅貨二枚が最小単位であり、小銅貨一枚は子供のお駄賃というのが一般的だ。

 その他に地球の物価と当てはまらないものも存在しているが、とりあえずはそんな感じだ。



 門を潜り街の中へと入る前に門番の兵士にギルドの場所を聞くと――。



「それならこの大通りを真っすぐ行ったら、突き当りに交差点が見えてくるからその真正面の建物が冒険者ギルドだ。剣と盾の看板があるからすぐにわかると思うぞ」


「わかった。ありがとう」



 兵士に礼を言い、さっそく冒険者ギルドに向かうことにする。大通りは多くの人が行き交っており、その種族も様々だ。

 人、獣人、エルフ、ドワーフ、リザードマンなど、地球では見られなかった光景が広がっている。



「うーん、まさにファンタジィーって感じだな」



 街の光景を見ながら一つ感想を零すと、俺は目的の冒険者ギルドに向かって歩き出した。

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