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閑話「前世から持ち越した恋愛運のツケを清算する時が来た」



 ローランドことロランの前世は、とある企業の取締役だったのだが、結婚はおろか彼女の一人すらまともにいたことはなかった。彼自身決してモテなかったわけではないのだが、彼の持つ運命によって恋愛運が強制的に抑え込まれていたがために彼の恋愛成就の妨げとなっていたのである。



 しかし、生まれ変わった今その枷から解き放たれた彼の恋愛運が、前世から溜まったツケを清算しようと虎視眈々と動き出したのである。




 ~ Side ローレン ~



 ――時は、ロランがミスリル一等勲章を授与してから二週間後。



「ななな、なんですってぇー!? ロラン様とお会いした? どこで会ったのですか!? 教えてくださいまし!!」


「お、落ち着くのだ……娘よ。そして、苦しいから手を離してはくれまいか?」



 王都から帰ってこられたお父様の話を聞いて、私は思わずお父様の襟元を締め上げてしまいました。最近は剣術や武術などに力を入れているせいか、力の加減が難しくて困りものです。



 ロラン様に相応しい女性を目指すべく、淑女としての礼儀作法はもちろんのこと軍略や家事なども覚え始めておりますのよ。でもやっぱり、武官貴族の娘だけあって体を動かすのは気持ちがいいです。



「まったく、ロランのこととなると見境が無くなるとんだじゃじゃ馬になったものだ……(ボソッ)」


「お父様、ロラン様がどうかなさいまして?」


「いやなんでもない、お前の聞き間違いだ(おまけにロラン関連については地獄耳ときている。これでは本当にロランの奴を婿にもらい受けるしかないではないか……)」



 王都からお戻りになられた旅の疲れが出ておられるのか、お父様が眉間を抑えながら私の問いに答えました。今日はゆっくりとお休みになられて欲しいものです。



 それはそうと、お父様から聞いたお話ではロラン様は冒険者として街に襲来した魔族を撃退し、その功績が認められミスリル一等勲章を授与されたらしいです。さすがは私の未来の旦那様です。あの方のことを思うだけで、私の心臓は鼓動を早め息苦しくなってしまいます。ですが、それがなんとも心地よかったりもするのです。苦しいのに心地いい不思議な気持ちです。



「ロラン様、待っていてくださいまし。このローレンが必ずあなた様に相応しい女になって見せます」



 そう言いながら、私は私の身代わり……もとい、私の代わりにマルベルト家に嫁がせる予定の妹に教育を施すべく、今日も日課の家庭教師をやっております。



 すべてはバイレウス家のため、私がロラン様を婿として向かい入れるための準備なのです。あの方と結ばれるためならば、私はどんな手段も厭いません。どんな手を使おうが、あの方を手に入れればいいのです。






 ~ Side ローラ ~



「はぁ……」



 わたくしは、目の前にいる殿方の横顔に思わず感嘆のため息を吐いてしまいました。わたくしが愛してやまない世界唯一の殿方……。それは誰ですって? わたくしの兄ロランお兄さまに決まっているではありませんか。



 艶やかな金色の髪とエメラルドを嵌め込んだ綺麗な緑色の瞳を持つ、まるで美しい美術品のような容姿を持った殿方です。お兄さまが素晴らしいのは、その美しい見た目を鼻にかけることもなくわたくしたち兄妹に対し、お優しいという内面の美しさも兼ね備えているところでしょう。



 一時は自分の目的のために素行の悪い領主の息子という名目で質の悪いいたずらをしていたようですが、それもすべて自分が自由になりたいという目的があったからこその行為であって、本来のお兄さまはとてもお優しいのです。



(ああ、ロランお兄さま。貴方はどうしてロランお兄さまなの? もしも貴方がお兄さまではなく、血の繋がらない赤の他人なら何の気兼ねもなく結婚できますのに……)



 お父様の病気を治すべく魔法に集中している真剣なお兄さまに対し、心の中でそんなことを呼び掛けてみるものの、当然お兄さまからの返答はありません。



 嗚呼……お兄さま。お兄さまの真剣な横顔を見ていると、なんだか胸が熱くなってきます。そういえば、なんだか下半身の方も熱くなってきた気がしますわ。



 家族や使用人などの周りの人間からは、兄妹で結婚することはできないから兄さまを好きになってはいけないと散々言われていましたが、そんなことでこのわたくしの愛の炎を消せると思ったら大間違いですわ。



 それにわたくしは知っていますのよ? 過去に兄妹や姉弟同士で結婚した貴族の前例があることを。その貴族家は今も存在しており、栄華を極めたとは言いませんが、ちゃんと貴族の一員として領地を治めているのです。



 であるならば、わたくしがお兄さまと結ばれても何ら問題ないと思いませんか? 思いますよね……? 思いますと言いなさい!!



 コホン、話が逸れてしまいましたが、とにかくお兄さまの妻になるべくわたくしは今立派な淑女となるべく様々なことを勉強しております。礼儀作法や貴族として必要な教養などは当然として、お兄さまの妻になった時のためにそういった夫婦の営みについての知識も勉強しております……ぽっ。



 それはそれとして、あれだけ素晴らしいお兄さまを他の女性が放っておくはずがありません。現にバイレウス家のローレン様もお兄さまの魅力に気付き、自分磨きに余念がないと風の噂で伝わってきております。



 これはうかうかしていたら、他の方にお兄さまを盗られてしまいかねません。そのためにも、頑張って精進しなければ。嗚呼、それにしても真剣な顔でお父さまの治療をするお兄さま……素敵です。待っていてください。いつか必ず貴方に相応しい女性になってみせますわ!!

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