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132話「設備拡張」



 孤児院を支援することを決めた数日後、俺は再び孤児院を訪ねていた。この数日間で子供たちに仕事のノウハウを教え込み、なんとか形になりつつある。



 とりあえず、今後起こりうる問題に先んじて対応するべく、俺は孤児院に五体の護衛用ゴーレムを設置した。このゴーレムは、空気中に漂っている魔力を取り込むことで半永久的に動き続けることが可能な戦闘タイプのゴーレムだ。



 これで、孤児院で栽培しているマジックカモミールやヤーンマイトの糸を狙う盗っ人が来ても、ある程度は対処できるだろう。もしゴーレムの警戒網を掻い潜り逃げられたとしても、俺の追跡からは逃れられん。待っているのは冥界か地獄である。……どっちも同じ意味か?



 高級品のマジックカモミールとヤーンマイトの糸に関しては、新しく増やす要素はなくそのまま作業に慣れてもらうため、現在も指導を継続している。野菜を育てる畑については、まず比較的育てやすいじゃがいもや大根、キャベツやレタスを中心に育ててもらい、慣れてきたらトマトやニンジン、ピーマンなども追加していきたいと考えている。



 それに加えて、主食となるパンの原材料である小麦粉を作るために必要な小麦を自給自足で生産させたいので、まだまだ余裕のある敷地の空いているスペースで小麦畑も作り始めていた。



「今日は、水回りの強化をしておくか」



 今回の作業は、水関連の設備を作ることで俺が水魔法で水を出さなくても水を確保できるようにする作業を行っていく。理想的な孤児院の運営方法としては、俺の魔法に頼ったおんぶにだっこ作戦は最初だけにして、最終的に俺の力を使わなくても孤児院の運営ができるくらいになるのが目標だ。



 その足掛かりとして、まずは二つの施設【井戸】と【お風呂】を作製していこうと考えているのだ。井戸は地下にある水脈を掘り当てることで比較的簡単に作れるが、問題はお風呂である。現代では、浴槽に水を貯め湯沸かし器という便利な機械で簡単にお湯にすることができたが、これを電子機器を使わずにとなると、やはり必要となってくるのは温泉だ。



 温泉と言っても王都周辺では活火山がなく、溶岩の近くに流れる地下水がないため、温泉の湯を確保することができないのが現状である。であれば、どうするのか? 答えは一つしかない。



「地下水をお湯にして、それをお風呂のお湯として使うシステムを構築するしかないだろうな」



 温泉が近くにないのであれば、地下水をそのまま浴槽に持ってくる過程で魔石か何かでお風呂に入るための適温まで地下水の温度を上昇させる機構を作り、それをお風呂のお湯として使用するしかない。



「よし、まずは井戸を作製しよう」



 水を確保するため井戸を掘り始めたのだが、ただ闇雲に掘っても地下を流れる地下水脈にはたどり着けない。だが、感覚操作を持つ俺は生き物の気配だけでなく、こういった無機物に対しても察知できるようになっているらしく、ものの数分で地下水脈を発見した。



 ただ、少しネックになっているのは、地下水脈がある場所である。どうやら地下水があるのは、俺がいる地上から地下二千メートル掘り下げた場所にあるようで、その場所まで掘っていく必要があるのだ。



 通常であれば、人の手で掘っていくのにどれだけの時間が掛かるかわからないほどの深さだが、俺の大地魔法があればものの数分で到達できる深さだ。では、さっそく始めていこう。



「まずは、井戸の枠組みとなる場所を作ってそこから掘り下げていくか」



 最初に石でできた円形状の井戸の形になるよう枠を作っていき、そこから一メートル五十センチの円柱状に四メートルの深さまで掘り下げていく。本来であれば、深さを十メートル以上に設定したいところだが、使う人間が子供や女性ということで、なるべく落ちても怪我のない深さで井戸としての機能も果たす絶妙な深さにしてある。



 尤も、直接井戸から汲み上げることはせずポンプを作って間接的に汲み上げる機能も持たせるので、実際井戸の蓋は常時閉じたままになる。



 一旦、その場にいた子供たち全員に、危ないから下がっているように声を掛けてから井戸の底に飛び降りる。井戸の底にたどり着くと、そこから直径二十センチ程度の穴を地下二千メートルに向かって魔法で掘り進んでいく。



 所々に固い岩盤が立ち塞がってきたが、俺の魔法の前では無力に等しくさくさくと掘削が進んでいき、とうとう地下水脈まで到達した。



「やべっ、退避!」



 地下水脈に到達すると、ゴゴゴという音を立てながら地面が揺れ出す。これはあれだと予想し井戸の外に退避した瞬間、井戸から噴水のように勢い良く水が溢れ出してきた。突然のことに俺もその場にいた子供たちも驚いたが、すぐに水の勢いがおさまり瞬く間に井戸に水が満たされていった。



 井戸が完成すると、底面部分の側面から水を引き出し手押し式のポンプを使って水を汲み上げる機構を作り、これで井戸の完成とした。



 次にお風呂の作製だが、これはなるべく孤児院近くに立てておきたかったので、空いてる場所でも比較的孤児院に近い場所を選択した。そして、先ほどとは別の場所から地下水脈を掘り当て、その水を二個目の地下水脈を掘り当てる前に作っておいた岩を削って作った露天風呂式の浴槽に入れていく。ちなみにその地下水は、木を削って作ったパイプを縦に半分に割ったような形をしたものを使って浴槽まで持ってきている。



「ただ、これだとただの水風呂なんだよなー」



 このままではお風呂ではなく、サウナにあるような水風呂になってしまうため、浴槽にたどり着くまでの途中で魔石を使って水をお湯に変化させる機構を作り上げる。その機構も空気中の魔力を活用するタイプの機構にすることで、半永久的に動かせる仕様にした。



 そして、最後の仕上げとして底部分にお湯を捨てるための排水溝を作り、お風呂の完成である。一応ではあるが、来客用や子供たちが成長したときのために男女別々の風呂を二つ作り、着替えなどの場所も別にしておいた。



 お試しでお湯を入れ、俺自身が確認のために体を洗ってからお湯に入ると、異変に気付いた子供たちが雪崩れ込んできてしまい、ちょっとした騒ぎになった。すぐに気付いたレリアンヌとイーシャの二人によって事なきを得たが、全員畑仕事などで汚れてしまっているため子供たちも一緒にお風呂に入ることになった。



 余談だが、俺が入っていたのは男風呂だったので、イーシャとは別の風呂だったが、何を血迷ったかイーシャが日頃の感謝を込めて俺の背中を流そうと、男風呂に乱入してくるというハプニングがあった。しかし、レリアンヌの手によってすぐに女風呂に連行されていった。危なかったぜ……。ちなみに、タオルを付けていたので全部は見ていないことを付け加えておく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 温泉は福祉 [気になる点] 地球だと約60度のお湯が噴き出すのですが、 やはり地球ではないので地中熱は存在しない感じですか? [一言] 楽しく読んでいます
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