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どうやら物語が始まるようです
何事も、程々が一番。
これは親父が俺に生前よく言っていたことだ。
確かにその通りだ、といまさらながらに思う。
酒を飲んで酔っ払うのも程々に。煙草を吸うのも、賭け事をするのも程々に。
親父はいつもそう言っては、仕事を黙々とこなしていた。
うちは片親だったので、構ってくれない親父にだだをこねたこともあった。
そのたびに親父は、
「達也、何事も程々が一番だ。楽しいことを沢山すれば、後でつらい事が沢山返ってくる。我慢してつらい事をやっておけば、後で必ず楽しくなる」
と言って、俺を叱った。
それは叱るというよりも、何かを俺に教えるといった口調で、知らず知らずのうちに俺はその言葉を覚えていた。
そして、また俺は思う。
親父の言葉が正しいなら、
「ほら、急がないと遅刻するわよ、達也!」
「大丈夫ですよ、まだ間に合います。ね、達也さん?」
「先輩、急がないとマズイですよ!」
「た、達也君、あの、ほんとに時間が・・・」
この、目を見張るような美少女達と一緒に生活している俺はこの後いったい――――
「「「「ほら、早く!」」」」
どうなるんだろう、と。