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シトラ学園長は甘えたい  作者: 諜報部のオン太
2/3

二部

 ジメジメとした曇り空。道が雨で濡れている中、私はうつ向きながら自宅への帰路についていた。

芽衣にはあの後、かなり心配されたが手伝ってくれてありがとうとだけ言って私は学園長室を後にした。

正直、今の自分には学園長という仕事は荷が重いと感じることがある。お母さんが死んでから人の前では平気なように振る舞ってはいるものの陰では泣いてばかりだった。それに今回、芽衣に見せたようにボロがでることだってある。

お母さんの後継ぎとはいえいつまでも過去に泣いている自分が本当に学園長なんてやってていいのだろうか?そんな事をひたすら考え、頭は痛くなるばかりだった。


 しばらくして、家に着いた。扉を開け「ただいまー」と気の抜けた声で言うと、リビングからお父さんが飛び出してきた。

「おかえりー!シトラちゃん!いやー危なかった。パパはね、シトラちゃんがあと三分遅く帰ってきていたら酸欠で死ぬとこだったんだよ~!」

そう言ってお父さんは、いきなり抱きついてきた。

「ちょっ!急に抱きつかないでちょうだい!この変態!」

必死に引き離そうとするが、まったく離れてくれない。

「シトラちゃん、だんだんテレサちゃんに似てきたね」

さっきまで騒がしかったお父さんが急に落ち着いた口調になったので思わず引き離そうとしていた腕に力が入らなくなった。

「ちょっと前まではパパー!って抱きついてきたのに今じゃすっかりツンツンになったね」

「あ、当たり前でしょ、いつまでも子供じゃないんだから。いい加減、親離れしたんだから······」

そう言うと、お父さんはクスッと笑ってようやく離れてくれた。

「ご飯にしよっか、お腹空いてるでしょ?シトラちゃん」

確かに色々考え事をしていたせいか、いつもの倍以上の疲労が溜まっており、時間的にもお腹が空いていた。

「うん······」

私が頷くとお父さんはニッコリと笑って、リビングに向かうと「おいで」と手招きをしてきた。


 リビングに入ると、テーブルには既に料理が並べられていた。

「シトラちゃん、そういえばテレサちゃんの机の引き出し開いたの?」

キッチンから二人分のコップを取ってきてお父さんが言った。

「えっ?なんでその話、知ってるの?お父さん」

どうせお父さんも鍵の場所なんて知らないと思い、この話はしていなかった。

すると、お父さんが楽しそうに言った。

「船内でキアナちゃんとが愚痴っててさ「シトラに芽衣先輩とられたー!」とか言ってたよ」

「そういうことね」

キアナは戦艦のB級戦乙女で、お母さんが度々、家でキアナのことを話していたので昔から知っていた。

実際に会うと、気が強い女の子で年下の私にも態度を変えることなく接してくれていた。しかし何故か、芽衣が絡むとムスッとした態度になる。

「で、開いたの?引き出し」

お父さんが再び、嬉しそうに聞いてきた。

「開いたわよ」

そう返事をしたあと、箸を持って「いただきます」と手を合わせると味噌汁に手をつけた。

「なにが入ってたの!?」

いきなり、お父さんが身を乗り出して顔を近づけてきたので思わずビクッとなった。

「べ、別にそんな大したものなんてなかったわよ」

正確には、自分の中では大収穫だった。お母さんが集めていた大好きなホムウサギのグッズがこれでもかというくらい手に入ったのだから。

「本当に?あとで見せてくれないかな?」

「疑い深いわね······好きにすればいいわ」

「やったー!」とお父さんが声を出して喜んでいた。食事中なのだから静かにしてほしい。


 食事が終わると、お父さんが食器を流し台へと運び、洗い始めた。

「シトラちゃん、先にお風呂入ってきなよ」

そう言われて、私は素直にお風呂に入ることにした。今日は色々と、いや今日も色々と疲れたので早くお風呂に入って寝たかった。

一度、玄関に戻ってホムウサギのグッズが詰められた袋を回収すると自分の部屋に行った。

部屋に入ると、ベットに袋を置き、タンスからパジャマと下着を取り出したあと、そのまま風呂場へと向かった。

 

 脱衣場に入ると扉をしっかりと閉めて鍵をかけた。これは、お母さんが毎日、風呂に入っているときにパンツなどの下着の色をお父さんに観察されるため、その防止策として鍵をつけたのだった。もちろん内側からしか鍵を開けれない仕組みだ。

安心して、服を脱ぎ始めるとスカートのポケットに引き出しの写真を入れたままにしていたのを思いだし取り出して着替えと一緒にかごのなかに入れた。

そして風呂場に入ると、なにか違和感を覚えた。

浴槽は溜まっているのに湯気がまったく出ていない。

まさかと思いながら、浴槽に溜まっている水に手をつけると

「冷たっ!」

思わず手を引っ込めた。浴槽に溜まっていたのはお湯ではなく、ただの冷水だったのだ。

(これじゃあ、お風呂入れないじゃない······!)

仕方なく、シャワーだけを浴びて上がることにした。疲れが溜まっていただけに湯船に浸かれなかったのはかなりショックだった。


深くため息をつきながら風呂場を出る。タンスからタオルを取り出して体を拭いたあと着替えの入っているかごに手を伸ばす。すると、かごに入れていたはずの写真が何故か消えていることに気がついた。

かごの下など色々なところをくまなく探したが少なくともこの脱衣場にはないようだった。

「もう探し物は疲れたわよまったく······」






前半と後半と書いていましたが、収まらないので三部に分けることにしました


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