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シトラ学園長は甘えたい  作者: 諜報部のオン太
1/3

一部

あらすじにもありますが、ノベルバで連載している二作品を読んでからの方がより楽しめるかもしれません

(*縦読みを想定して書いたので横読みだと読みずらいかもしれません)

 2067年4月27日、蒼海市の桜はここ最近の気まぐれな雨によって所々散ってしまっていた。

せっかくのお花見シーズンだというのに、これでは一年に一回限りしかない春が無駄になってしまった気がする。

もちろん、桜だけが春ではない。暖かな風や虫のせせらぎなど他にも春を彩るものはたくさんある。

しかし私の中では、桜だけが春そのものだった。それに、桜を見ると自然とお母さんのことを思い出す。


 7年前、お母さんは死んでしまった。私はまだ6歳だったけれど、お母さんはとても背が低かったからその頃にはもはや同じくらいの身長だった。

でも、背の高さがどうであれ当時の私に実の母親が死んだという事実なんて受け入れられるわけがなかった。


 あの日の翌朝、起きると隣に親がいないことに気づいた私はすぐにベッドから飛び出てリビングへと走った。

開いたままのリビングの扉の向こうには動かなくなったお母さんを涙を流しながらお父さんが抱き締めていた。

「ママ······?」

そんな拍子抜けした私の声にお父さんは振り向くと涙で顔を濡らしながらもいつものように笑ってみせたのだった


 コンコンコンッ


 扉をノックする音が聞こえ夢から目を覚ます

すると、一人の少女が扉を開けて入ってきた

「学園長、A級戦乙女の雷電 芽衣です。お手伝いの件で参りました」

そう言うと少女は丁寧にお辞儀をした

「もー相変わらず堅いわね芽衣は、学園長でも年下なんだからそこまでしなくていいわよ」

「いえいえそんな、その歳で学園長をやっているなんてすごいことなんですからもっと胸を張っていいと思いますよ?」

その言葉に思わず苦笑した

「柄じゃないわよそんなの、それにこんなこと言うのもあれだけどなりたくてなったわけじゃないわよ?」

冗談のつもりだったのだが芽衣は深読みしたのか暗い表情をしていた

「学園長、何かあれば積極的に私や戦艦のみんなを頼って下さいね。学園長を支えるのも私たち戦乙女の仕事ですから······」

芽衣がさっきの言葉をどう解釈したのか分からない。けれど、芽衣の表情を見るとどうしてもお母さんが死んだことを気にかけてくれているようにしか見えなかった。

そう思うと、他人に気遣いをさせてしまっているという罪悪感とともに、お母さんに会いたいという感情が込み上げてきて胸が締め付けられるような気持ちになった。

「が、学園長?顔色が悪いですけど大丈夫ですか······?」

(だめだめシトラ、もう7年も経ってるんだからいい加減立ち直らないと)

そう心の中で言い聞かせる。学園長たるものがいつまでも過去のことでじとじとしていては格好がつかない

「ええ、平気よありがと芽衣」

芽衣は「いえいえ」と苦笑しながら首を振った。

 

 さて、ずいぶん無駄話をしてしまったしそれそろ本題に移ろう。

「本題に移るけれど今日、来てもらったのは探し物を手伝ってもらうためなの」

「探し物······ですか?一体どんな探し物でしょう?」

「ええ、ちょっとこっちに来てくれるかしら?」

芽衣は頷くとこちらに駆け寄ってきた

「これを見て」

そう言って少し作りのいい学園長の机を指さす。しかし、机全体ではなく問題は机の一番右下の鍵のかかった少し大きめの引き出しだった

「ここの引き出しの鍵を一緒に探してほしいの。私が学園長になってからお母さんが放置したままの書類とか色々整理してたんだけどここの引き出しだけ開かなくて困ってるのよ」

もちろん、自分でも色々探したがまったく見つからなかった。お母さんから鍵の場所なんて教えてもらってないし、お父さんは戦艦の艦長で学園長室に来ることは少ないため知らないだろう。

「つまり、引き出しの鍵を探すということですね?」

芽衣の言葉に黙って頷く。

「なにか鍵の場所に関する当てとかはないのでしょうか?」

「もちろん、まったくないから芽衣を呼んだんじゃない」

当てがないなら、もうこの無駄に広い室内を徹底的に探すしかない。ここにあるのかも定かではないがとにかく一つ一つの場所をしらみ潰しに探さなければ······

「あまりにも効率が悪いことはわかってるわ。けど、なんとしてもこの引き出しは開けなければならないの」

「なぜ、そこまでこの引き出しにこだわるんですか?」

「えっ!?い、いやーそれはその······大事な書類がここに入っててね」

(言えない······この中にホムウサギのグッズが入ってるかもしれないからなんて······言えない!)

「なるほど、大事な書類がこの中に······確かにそれは早く助けださければいけないですね」

「ええ、そうなのよー······」

(良かった、上手く切り抜けたみたいね)

「それならさっそく探しましょうか!私は部屋の左側を探しますね」

芽衣は優しく微笑むとせっせと部屋の左側にある本棚へと駆け寄っていった

自分にはなんの利益にもならないのにためらうことなく他人の手助けが出来る芽衣が少し羨ましかった。果たして今の自分にそんな心の余裕があるのだろうか。

(いけない、また余計なこと考えちゃったわ······)

とにかく今は、鍵を見つけることに集中しよう。

芽衣が左側を探しているため自分は部屋の右側を探すことにした。

右側は簡易キッチンがあり、来客のためのティーポット、またシトラがコッソリつまみ食いをしているお菓子がストックされていた。しかし、さすがに芽衣のいるこの状況ではお菓子をつまみ食いすることはできない。

とりあえず、キッチンの収納スペースなどを調べるが鍵らしきものは見当たらなかった。

上を見ると、ギリギリ手が届きそうな収納スペースがあるが見る限り、なにもなさそうだった。おそらく、お母さんは身長が低いのでこんな高い位置にある収納スペースは使えなかったのだろう。


 しばらく探しているとようやく芽衣の方から進展があった。

本棚の本をどけると数字キーのついたロック装置のようなものが壁にあったらしい。

「一体、誰が何のためにこんなものを······」

「他人に見られると困るものなんでしょうね」

とりあえず装置の適当なキーを押してみる。すると、液晶画面に文字が映し出された。


<変態男が生まれてきた日付>


(へ、変態男って······)

意外なワードに少し困惑したが、このパスワードをお母さんが設定したとするなら答えを出すのは簡単だった。

ロック装置に0730と四桁の数字を打ち込むと、ピピーという音とともに突然、本棚が両サイドに開き始めた。

「え、ええー!あ、あの学園長これは一体······」

こんな仕掛けだと予想していなかったのか芽衣はすごく動揺していた。

「見ての通りよ、お母さんはこんな仕掛けまで用意して隠したかったものがあったのよ」

ゴォー!という音をたてながら開いた本棚の先には、そこまで広くない部屋があった。いや正確には天井がかなり低いのでそう感じるだけかもしれない。

「へ、変な作りね······」

芽衣は入るのが厳しそうだったので自分一人で入ることにした。それでも少しかがまなければ天井に頭が当たってしまうような高さだった。

部屋に入ると左側に小さなクローゼットがあり、正面にはちゃぶ台のような机と座布団が一つ置かれており、その机の上にはお目当てのものらしき鍵が置かれてあった。

こんな狭苦しい部屋でお母さんが何をしたかったのかは分からない。鍵が見つかったのでそれはもう気にしないことにした。

鍵をとってさっさと部屋を出ると、芽衣が鍵を見て「良かったですね!」と言ってくれた。

さっそく、机の引き出しに鍵を差し込むと案の定、引き出しが開いた。

「やったー!」

引き出しの中身を見た私は思わず嬉しさで叫んでしまった。そう、本当に入っていたのだホムウサギのグッズが大量に。

「お目当ての書類があったんですね!学園長」

自分の喜びの声を芽衣が書類が見つかったのだと勘違いしてしまっていた。

(ま、まずいわね······)

駆け寄ってくる芽衣。このままでは嘘がバレてしまう。

(とにかくなんとか誤魔化さねば!)

「きゃー!ウサギが書類を食べやがったわー!」

「あれっ?学園長、ホムウサギのグッズしか入ってないですけど······」

「だからー!このウサギどもが私の大切な書類を食べやがったのよー!」

気づけば自分でも意味の分からないことを口にしていた。

「は、はぁ······」

「これは、未知の崩壊エネルギーがこのウサギに宿ってるかもしれないわね。私が持ち帰ってしっかり検査するわ!」

「え、ええ分かりました」

(よしよし!むちゃくちゃだけど何とか上手くいったわ!)

袋に、入っていたホムウサギのグッズを全て押し込んでいると一枚の写真が抜け落ちた。

「なにかしらこれ?」

写真を表に返すと、思わず絶句した。

そこには、まだ赤子の自分とそれを幸せそうに抱き抱えているお母さんが写っていた。


「ありゃーこれはもうシトラちゃんのこと抱っこ出来ないんじゃない?テレサちゃん」

「そんな事ないわよ!ママが娘抱っこ出来なくてどうするのよー!」

「うん、それじゃあもう無理そうだねテレサちゃん」

「ええー!ママもう抱っこしてくれないのー!?」

「大丈夫だよシトラちゃん!パパがママもシトラちゃんもいっぱい抱っこしてあげるからねー」

「なんで、私も入ってるのよ······」


突然、フラッシュバックされた過去の光景に気づけば涙が溢れだしていた。

「が、学園長!どうしたんですか!?」

結局、みっともないところを見られてしまった。

どれだけ学園長だからと強気になっても、心は強くなれないし立ち直れない。

それを分かっていても、私は意地を張り続けるしかなかった。





なろう初投稿の作品なのであまりシステムが分かっていないのでもし、おかしな部分があった場合はすみません

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