2歳の秋
甘い香りがする部屋で圧絞り器のハンドルを回していくと底の管からトロリと粘土の高い黄色い液が出てくる。
籠の中に入っていたミツバチの巣を取り出し、押し潰して出てきた液が蜂蜜である。
春の分蜂の時期に麦の藁で編まれた籠を用意し籠の内側に蜂が入りやすいように蜜蝋を塗り付け、冬に向け蜂が貯め込んだ蜂蜜を秋に採取する。
圧絞り器に残った物を沸騰した鍋に入れ溶かし後、鍋が冷えた後に塊が蜜蝋でろうそくなどの原料として使われる。
甘い食べ物といえば蜂蜜が1番だがわずかにしか採れず村人全員に分けれるほどの量もなく、わずかに取れる蜂蜜も長期の保存ができるため町に売りに出される。
水と蜂蜜を混ぜ合わせ数日経過すると蜂蜜酒ミードが出来る。
前世では蜂蜜種は人類最古の酒とも言われ起源は1万年以上前と言われている。
私が蜂蜜酒という単語を初めて知ったのはドイツのゲーム会社作った3つの文明から選択するリアルタイムシミュレーションゲームでバイキングを選択すると蜂蜜酒が作れるのでそれで知った。
あのゲームはPC版で買って面白くて、スマホのアプリでも見つけて買ったほどだった。
つい夢中になりやりこみ過ぎて寝不足になったものだ。
前世では飲んだことのない蜂蜜酒をこの世界で飲むためには、蜂蜜の採取量を大幅に増やす必要がある。
来年の分蜂までに新しいタイプの巣箱を用意し、採蜜時に蜂の巣を全て壊さないようにし採取量を増やし私が成人になるまでには蜂蜜をもっと気軽に使えるようにしていきたい。
実りの秋には多種多様な食材が食を豊かにする、森ではキノコ類が豊富に採れ、村の近くではリンゴの木が数本植林されており赤く熟れた実が垂れている。
春蒔きの大麦の収穫期を迎え小麦と同じように収穫作業が始まり、大麦の収穫が終わると村では収穫祭が始まる。
去年採れた大麦を醸造し香草を加えたエールが作られ、 古い大麦を消費する意味合いもあるので多くのエールが作られていく。
今年1年の無事を感謝し、また来年何事もなく平穏な時を迎えられるように祈る。大人達は夜遅くまで飲み明かし、翌日は仕事をせずに過ごす。
クローバーの生えていた牧草地は収穫祭が始まるまでに耕起され、収穫祭が終わればそこに秋蒔きの小麦が蒔かれる。
クローバーの保水効果や根粒菌の働きと家畜の糞により、次の農作物の収穫が増える3圃式農業が王国での主流となっている。
森に豚を連れていき落ちているドングリを食べさせ肥えさせていく。
中世ヨーロッパでは何頭の豚が飼えるかで森の大きさを計っていたとも言う。
冬に向け多頭出産の豚や成長の早い鶏を屠殺し干し肉としたり、野菜を酢に漬けて保存食にしていく。
日が傾くのが早くなったと感じ森を見ると、色付いていた木の葉もほとんどが地面に落ち冬の到来を感じさせた。




