2歳の夏
黄金色に染まった麦畑で150㎝ほどの長い柄の大鎌を両手に持ちリズミカルに腰を回転させ右から左に鎌を動かし小麦を刈っていく、刈られた小麦はその場に倒れ男が動くたびに新しく麦が倒れていく。
男が通った後ろでは刈られた麦を束にし、紐で結び木でできた架台に掛けていく。
7月冬蒔きの小麦の刈入れシーズンであり農業において1年で1番重要な作業であり1番重労働な作業である。
刈られた小麦を架台に掛け天日で数日干すことによって水分が抜け、カビ等の繁殖を抑える事が出来る。
数日干された小麦を棒で叩いて脱穀を行い、植物の茎で編まれた脱穀用バスケットの箕をふるい小麦ともみ殻などのゴミを風の力を利用して振り分ける。
箕を使い振り分けた小麦は穀物倉庫に保管し町に売りに行くときは麻袋に入れて運び、村内でパンを焼くために使うときは水車小屋で石臼で粉にする。
小麦は穂が落ちやすいから脱穀は棒で叩けば簡単に取れるが、大麦や他の豆類の脱穀の事も考えて作業の効率化を図ろうと考えるなら江戸時代に発明された千歯扱きが定番だろうがもっと効率のいい足踏み式脱穀機を考えていこう。
1時間に処理できる能力は千歯扱きで45束で足踏み式脱穀機なら300束と言われているため、効率のいい足踏み式脱穀機を使用すれば時間を大きく短縮できる。
ただ今の問題は手先の器用な鍛冶師のバーザクとシバの村に行っている大工は忙しく子供の依頼は引き受けることはできないと思うので、来年の収穫期までには何とか出来るように考えていこうと思う。
太陽が照り付ける1年で1番暑い季節の中、村では小麦の刈入れが終わると繊維として使用する大麻や亜麻の刈入れが始まっている。
大麻とは前世でも薬物のニュースでよく耳にしたものである、カーテンを閉め切って外から中が見えないようにして大量の鉢植えにライトを当て暖房をつけて高温状態にしたり、風呂場に大麻を入れて水を流し続け水耕栽培をしたりと栽培方法だけはニュースでよく見たものだ。
荒地でもよく成長し2m以上の背丈になり強靭な繊維が採れ、大麻を育てた後の作物は収穫量が上がると言われヨーロッパでは冬に栽培し春に野菜を育てる前に収穫することが多いという。
大麻から繊維を採る方法は沸騰した湯に大麻を入れ1月乾燥させ、乾燥させた大麻の皮を剥ぎ、皮を扱くと繊維が採れる。
亜麻とは江戸時代初期に亜麻仁油を採るために栽培されているが、明治に入り繊維を採るために北海道で大規模栽培されたイメージが強い。
柔らかく細いが強靭な繊維で貴族などの上流階級の下着や衣類に使われている。
中世ヨーロッパでは船の帆に亜麻の繊維が使われており、私の前世でも亜麻という言葉を知ったのは大航海するゲームが最初だったりする。
1mほどに成長し、連作障害が起きやすく1度栽培した場所では6年ほど他の作物を育てる必要がるある。
亜麻から繊維を採る方法は水に漬けバクテリアによって発酵させ皮を剥ぎ、中身を乾燥させると細くやわらかな繊維が採れる。
家庭菜園では夏野菜も収穫の時期を迎えていた、中でも私が気にしているのは今年から植え始めたトマトである。
町では赤く実ったトマトの果実を卵と小麦粉をこねて細長くして茹でたパスタにソースとして加えるのが人気だとかで夏から秋にかけての需要が高く、町の近隣の村ではトマトの栽培が増えているんだと。
トマトがあれば食生活も大きく改善すると思われるため村でもトマトの生産を奨励するよう父に頼みたいと思う。
家畜の飼料として牧草のアルファルファも今年から植えており、1mほどの背丈に成長し多量の収穫が出来る牧草だ。
値を深く張り乾燥に強くマメ科植物であるため根粒菌の働きにより、次の作物がクローバーと同じように増大する。
クローバーは中性か微酸性の土壌を好み、アルファルファはアルカリ性の土壌を好むので雨の少ないこの地域ではアルカリ性を好むアルファルファの方が牧草としては適していると思う。




