ボルドー村
教会と約束した2日間に消石灰と青い液を比率を変え複数混ぜたものがエドによって準備でき、後は村に行き薬を試すだけとなっていた。
出発の日にエドの工房にボルカ司祭が自ら御者して持ってきた馬車に液の入ったガラス瓶が道中の振動で割れないように慎重に積載していく。
「じゃあエド行ってくる」
「いってらっしゃい、でも本当にそんな物が植物に効くのか?」
「たぶん大丈夫だと思うよ、結果はすぐに出るわけじゃないから10日ぐらい様子を見る必要はあるけどね」
そう言ってボルカ司祭が御者する馬車に乗り込む。
馬車は王都の門を出て1時間もかからない位置にあるボルドー村を目指し進んでいく、道中はボルカ司祭と会話をしながら進んでいく。
「ルークさんはルーク・ハウンドと名乗っていましたが、ハウンド領の出身の方なんですか?」
「私の父がセイム・ハウンド男爵当主で、私は3男です」
「貴族様だったのですか、ではどうして故郷を離れこの王都で商人をしているのですか?」
「今は貴族ではないので様とかはいいですよ、王都に来た目的は領が辺境にあり町や教会が無く情報が行商人を通してしか入ってこなく、新しい技術などが伝わってこないので情報を多く入手できる商人となり王都に来たのです」
「そうなんですか。ハウンドと言えば蜂蜜が有名ですよね、この数年で一気にハウンド産の蜂蜜が増えて価格が低下して私や同僚たちも感謝しています」
「ハウンド領では他領よりも早く今までの藁で編んだ巣箱から、木の箱を積んでいく重箱型巣箱を導入したのですが、領内を出入りしていた行商人に巣箱の特許を取られて毎年取れる蜂蜜に対して特許料を採られてるんです。特許という制度を知っていれば申請をしていたのですが、領内に知っている者がおらず特許を取られてしまった事も、特許について教会で調べるために王都に来た目的です」
「あの巣箱に関してはそういう経緯があったんですね、特許を申請して数年であれば開発者が異議を申し立てれば取り消すこともできるんですが、普及して数年もたっていたので教会としても覆すことはできないですね」
ハウンド産の蜂蜜は今や王国に流通する蜂蜜の4割と言われ、ハウンドという名も有名にはなったが蜂蜜のうりあげの5%を特許料として支払っている。
そんな話をしながら進んでいくとボルドー村が見え、馬車はそのまま村内に入り相談に来ていた男性の家付近で停め、ボルカ司祭が声をかける。
「教会から来ました、司祭のボルカです。べと病についての話できました」
家からは返事はなく留守のようで。
「留守のようですね、この時間だと農作業をしているのかもしれません。畑の方に探しに行ってみましょう」
畑の方に行くと男性は他の村人たちと混ざって作業をしていたので声をかけると。
「司祭様が来られたんですか、お出迎えもせず大変失礼しました」
司祭に対して恐縮しており、司祭が早速べと病の状態を確認し薬を使用する流れとなった。
「ブドウがべと病にかかっている状態は確認できたので、薬を使いたいと思うのでルークさんお願いします」
馬車からガラス瓶を取りに行き、それを見た男性は。
「ちょっと待ってください、そんな色したものが本当に薬になるんですか?」
男性が言うのも無理はなかった。消石灰を水に溶かし白濁した石灰液と、硫酸に銅を溶かした青い硫酸銅が混ざり水色のガラス瓶が薬とは初見では思えないからだ。
「このまま放っていても、ブドウが枯れる可能性があるのでルークさんが言うこの薬を使ってみましょう」
司祭の説得で男性も使用することを認め、霧吹きなどないので液の濃度ごとに木を変え刷毛で1つ1つ塗っていく。
「これで作業は終了です、後は濃度ごとに変えた木がどういった状態になるかを経過観察していけばいいかと思います。10日後ぐらいにまた来ましょう」
「わかりました、もしそれまでに悪化するようであれば教会に連絡ください」
男性にそう言ってボルカ司祭と馬車に乗り教会を後にする。




