べと病
エドの借金を肩代わりした後、教会に向かいヨハンナ助祭に村の病害について何とかできるかもしれないと伝える。
「白い斑点ができる植物の病害は、何とかできるかもしれません」
私が告げると、ヨハンナ助祭は予想外の言葉を聞いたのか大きな声で。
「本当ですか?」
「ええ、今は錬金術師に治すための薬を作ってもらっているので、完成すれば村に行こうと思っています」
「薬が存在していたのですね、教会が知っていればもっと早く対処できていたのに」
「薬自体は錬金術師達によって以前から作られていたと思いますが、それが植物の病害に効く薬と気付く人が今までいなかっただけだっと思います。この薬に関しての特許を、教会に認めてもらいたくて今日は来ました」
「特許ですか?私では判断できないので上の方に相談してきます」
ヨハンナ助祭がこの場から離れ1時間ぐらいしたころに戻ってくると。
「遅くなりました商人さん、上の方々があって直接話がしたいということなので、付いてきてもらっていいですか?」
「かまいませんよ」
そう言ってヨハンナ助祭のあとを付いていくと、教会内部の奥にある部屋に誘導され、その扉をヨハンナ助祭がコンコン、コンコンと連続して2回ノックする。
「ヨハンナです、バートン司祭先ほど連絡した商人の方をお連れしました」
「入ってくれたまえ」
中から声が聞こえると、ヨハンナ助祭は扉を開け中に入っていく。私もそれに続き一緒に中に入ると、大きな執務用と思われる机が1つと、会談用として使われるであろう机と椅子がありそこに3人の男性が立っていた。。
「バートン司教、こちらが先ほど話した商人の方です」
「わかった助祭の君は仕事に戻りたまえ」
ヨハンナ助祭が3人の男性に告げると、この中では1番年上と思われる60代ぐらいの男性がヨハンナ助祭の退室を促し、自身の紹介と2人の男性について説明する。
「この王都の教会を管理している司教のレイ・バートンです。こちらは司祭のハーバーとボルカです。どうぞこちらの椅子におかけになってください」
「商人のルーク・ハウンドです」
その場で名乗り、司教に促された椅子に座ることにした。
「ルークさん、病害に使える薬があると聞いたのですが詳しいことを聞いてもいいですか?」
「昨日王都近くのボルドー村の男性が教会に白い斑点が出来る病害が出たと教会に相談しているのを聞きまして、その男性と一緒に村を訪れたんです。村の植物の葉には白い斑点が出来る病害が確かにあり、私はそれの治療法に使える薬を知っている可能性があるため町に戻り自ら作ろうとしたんですが、昨日偶然知り合った錬金術師の方が薬に必要な材料を持っており、すぐに薬を使用できそうなので教会に薬を特許として認めてもらいたく来ました」
司祭の横に座る男性が。
「既にある物を特許として認めるのは良いんでしょうか?」
男性が発言した後にバートン司教が、彼にこう告げる。
「本部からは今回の病害は大陸の多くの国々で広がりを見せていると連絡が来ている、特に大陸南側のブドウ畑は深刻な被害でワインの生産量が少ないこの国とは影響が大きく違うそうだ。気温が上がり始めるこの時期ぐらいに雨が降り湿度が高い年は起こりやすく、べと病と呼んでいる。有効な対策案を示せれば特許として認めてもらえる可能性は非常に高い。ルークさん薬についてはどうして効果があると知っているのですか?」
バートン司教にまだ実験もしていない薬の効果を説明できるわけもないので。
「どうして知っているかは、商人としての秘密です。私も商人です、全ての事を人に話すことはできません」
「失礼しました、では薬が効果があると判断した時はこの教会で本部に特許の申請をさせていただきます」
「お願いします、1つお願いがあるのですが薬の効果について教会でも確認してもらいたいのです」
バートン司教がボルカ司祭に目線をやり。
「この件に関してはボルカ司祭に一任します。教会として必要なことがあれば彼に連絡をしてください」
いくつかの話を終え、薬が完成するのを考慮して2日後にボルカ司祭と村に向かう約束をして教会を離れ家路に着く。
まさかこの国で教会のトップの司教に会えるとは思っていなかったが、それだけ今回の病害について対策案があると聞けば行動が早かったのは事態を重く見ているからだろう。
べと病、湿度が高くなる梅雨時期の6月ごろに日本では発生しやすい病害です。




