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錬金術1

 教会で書物を調べる日々が続いたある日の夕方、工房区画の通りを歩いていると、ドンドンと何かを叩く音と男達の叫ぶ声が聞こえる。

 気になるため路地を小走りで駆け、音のする方向へ向かう。


 ドンドン、ドンドン

 「おいエド!!借りた金は返せや」

 「そうだぞ、借りたら返すのが常識だろうが」

 そこでは2人の男が扉に向かい力強くたたきながら、声を張り上げていた。


 「すみません、お金の方は必ず用意しますから、もう少し待ってください」

 少しすると、扉の向こうから小さな声が聞こえてきた。

 「いいから開けろっつてぇんだ!」

 そう男が言った後に、扉が少し開いた瞬間に男達が勢いよく扉を押し込み中に入っていく。

 

 「てめぇ2ヵ月もそう言って、利息も払ってねぇじゃねぇか」

 「すみません、ですが父の商会の景気が良くないのでお金をもらってないんですよ」

 「そんな事はこっちは知ったこっちゃないんだよ、いいから利息分だけでも払えや。明日までに金を用意できないなら、てめぇの役にも立たない創作物を全部処分して金に換えてやる。それで、てめぇは衛兵に突き出して牢屋に入れてもらう」

 「そんなぁ、お金は必ず用意しますから、あと1月でいいんです待ってください」

 「いいや駄目だ、明日までに利息分の金だけでも用意できないなら覚悟しておけ」


 「てめぇ見世物じゃねぇぞ、どっか行きやがれガキが」

 2人の男達は扉から出てくると、気になり扉の方を見つめていた私に向かって怒鳴り立ち去った。

 男達が去ったとすぐに扉から20代半ばぐらいの青年が出てきて、私と目が合うと。

 「君ちょっとお金を貸してくれないかな?」

 「貸せませんよ、名前も知らず他の人からも借金してるような人には」

 「ははは、それもそうだね。じゃあ僕の事を教えるから、部屋に入ってきなよ」

 「知らない人の家には入りたくないですよ、だいだいあなたは誰なんですか?」

 「僕はエド・トマーソン錬金術師さ」

 「錬金術師?」

 「錬金術師を知らないのかい、詳しいことは中で話すよ」

 「怪しいけど、錬金術師というのが気になるので話だけ聞きます」

 

 エドという錬金術師の青年の後について、建物の中に入る。

 建物の中は色の違う鉱石と思われる石がいくつもあったり、ガラスには赤や青や緑といった色のついた液体が入っているガラス瓶などがあった。

 エドは椅子を私に指し示し。

 「これに座ってよ、錬金術師ってのは錬金術をする者の事なんだけど」

 彼は部屋の中を歩きながら語り始めた。


 「錬金術とは金を作り出すことを目的とした学問さ、金貨の元となっている金を作り出すことが出来れば巨万の富を得られる。まずは金を作り出すのに必要な触媒として、賢者の石の研究をずっとしてるんだよ」

 「昔は金を作るとこだけが錬金術と言われたんだけど、今だと不老不死の方法や人間を作ることを研究することも錬金術と言われてるんだよ」

 「金を作り出せた錬金術師は今のところいないけど、錬金術によっていろいろな物が生まれたんだ。いつか金を作り出す錬金術師が現れる可能性はあると思うんだ。だから僕はその最初の人になりたいんだ」


 「ふーん、それで何か役に立つようなものは作れたの?」

 「うっ、まだできてないよ」

 「そんな作れるかどうかもわからないものを、ずっと研究しているんだ。こんないっぱい道具や研究するのにお金がたくさんかかると思うけど、どうやって用意したの?」

 「お金に関しては父が商会の会長でね、海外からの交易品を扱っているんだ。主に胡椒とかの香辛料だね」

 「なら商会を経営している、親父さんに借金の返済を頼んだらいいじゃないか」

 「今は商会の経営が今は大変みたいで、年明けてから生活費しかもらってないんだよ」

 「生活費は貰っているのに、何で借金しているの?」

 「うぐぅ、錬金術の研究に必要だったからさ。父さんからは商会の経営が持ち直すまではやめる様に言われてたから、お金を借りてることを話すと勘当されちゃうよ」

 「自業自得だね、親父さんに借金の事を話してお金を用意するべきだね」

 「そんなぁ、僕には知り合いなんていないから君だけが頼りなんだよ、お金貸してくれよ」

 「さっき会ったばかりの人を頼りにしないでくれよ」

 「そうだ、明日払う借金の利息分だけでもお金を貸してくれるならこの部屋の中にある物から好きな物を1つ上げるよ、何なら借金全額分のお金をくれるならこの部屋にある僕が研究した物と権利のすべてを上げるからお願いだよ」

 「借金の総額も知らないのに、そんなことできないよ。それに何に使えるかわからない物なんだろ」

 「借りた金は3万Rで利子は今1万R、借金は4万Rだ。物については説明するけど、僕にも何に使えるかはわからないよ」

 「明日までに1万Rなんて成人したての私が用意できるわけないだろ」

 「僕の感でね、君は持っている気がするんだよ。僕と君は今日出会うべくしてであったそんな予感がするんだよ。物については今から説明しよう」

 そう言ったエドは作った物の材料や特性をなどを説明していった。


 彼が説明していった中で私は気になるものが1つあった。

 「わかった今は手持ちがないから、明日お金を用意しよう」

 「本当かい?ありがとう、明日また来てくれよ」

 「わかった、明日お金を用意して来るよ」

 

 彼の工房を去った私は、工房にあったガラス瓶に入っていた青い液体を今後の商売の道具に使おうと考えながら家路に着いた。

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