短期で稼ぐ
私が金貨130万Rを超える大金をこの町に来た時に持っていたのは、去年この町で稼いだものであった。
まず最初に父に頼み込み10,000R(金貨100枚)を貰い、年齢制限などのない商業ギルドに登録しギルド員となった。
ギルドに調理に仕える貸店舗を紹介してもらい、1月1,500Rでの賃貸契約が成立した。
肉屋に向かい鶏肉とラードを購入する、1羽の鶏からは約0.4㎏のもも肉と胸肉が採れるので、もも肉と胸肉が2つ合わせて1㎏8Rで購入できるので2㎏ずつ購入し16R支払う。
次にパン屋に向かい長さ60㎝ほどのフランスパンの様に硬いパンを5Rで購入し、近隣の村から朝市で商品を売りに来ている物から卵が無いかを尋ね5個ほどを2Rで購入する。
金属の鍋などを扱っている商会に行き手ごろな大きさの鍋を300Rで購入し、コークスを1㎏5Rで30㎏を150Rで購入し、他に隠し味や調味料などを他の商会や朝市などで30Rほど購入していく。
必要なすべての物を買い終わった後に、転生主人公おなじみのもも肉の唐揚げと胸肉でチキンカツを作って行く。
南部の方ではオリーブオイルがたくさん採れるので揚げる食べ物があるが、ライル王国では植物油の生産量が少なく高価となっており揚げ物がなかた。
「新しく開いたコッコ屋の自慢の新商品の唐揚げとチキンカツだよ、本日は無料だ!早いもの勝ちだよ、1人1つで限定だけど今ならタダ食べれるよ」
と声をかけていくと好景気に沸き人口3000人近い町となったクルルートの町では道にあふれる人も多く、こちらの声に気付き近寄ってくる。
「無料って聞いたんだけど、どんなものだい」
「鶏を調理したものだよ、今日は無料で明日からは1つ250gぐらい入って6R(銅貨5枚)で売り出すから、今日しかタダで食べれないよ」
「気になるから唐揚げとチキンカツを1つずつ貰えるかな」
「ありがとうございます。ちょっと待っててくださいね」
「兄ちゃん、こっちにも1つくれ」
「私にも1つちょうだい」
と声がかかり用意していた食材は1人目の客の分を揚げ終える前に完売した。
木の器に入れた唐揚げとチキンカツを1人目の客に手渡し
「商品は1つ6Rですが、明日からは食べ終えた後に器を返していただければ1R返却します。熱いので気を付けてください」
「美味そうないい匂いだな、凄く美味いぞ。明日も店やるなら明日も来るからよろしくな」
「ありがとうございます。明日から営業していくのよろしくお願いします」
1人目の客の美味いという声に反応して何人かが寄ってきたが
「すみません。今日はもう材料がないので販売していません、明日も営業するのでよろしくおねがいします」
と声をかけ、次々と食材を上げていく。
次の日も朝から食材を購入し、昼前には準備が整い開店しようと店の外に出ると10人ほどの客が並んでおり
「もうすぐ開店かい?昨日食った奴から美味いと聞いて来たんだよ」
「俺は昨日食ったけど、今日も食いたいからまたきたんだわ」
と声をかけられ急いで調理していくと、開店したことに気付いた人が並び行列が増えていく。
多くの人が複数注文し思ったよりも早く20㎏ずつ用意していた肉は2時間ほどで完売した。
「すみません。食材が切れたので今日はここまでです、また明日も営業しますのでよろしくお願いします」
「遅かったか、明日また来るわ」
声をかけられ行列は解散した。
今日の収入は500Rで、支出は肉が160R・卵が20R・パンや調味料に6R分として計算し合計186Rとなり利益は
314Rとなった。
次の日も同じように朝から準備を行い営業すると昨日よりも開店前の行列が長くなっており、開店前に並んだ人も買えないような状況になっていた。
営業が終了したあとにギルドに守秘義務を守る調理する者と接客をできる者の求人募集を呼び掛けてもらうことと、近隣の村から鶏の買い付けを依頼した。
次の日の営業終了後にギルドにより求人に応募した者の面接を行い、調理方法などの守秘義務を漏えいした場合の罰則などを取り決め、調理1名と接客1名を雇用することが決まった。
次の日は仕入れ量を5倍に増やし3人で朝から仕込み1日2,500Rの売り上げとなり、雇用した2人には他の業種より高い120Rを日当として払っている。
利益は2人の人件費を引いて690Rとなり1カ月休まず営業を続け、燃料費や家賃などを引いた月の利益は約15,00Rとなった。
休まず3カ月働き続け45,000Rの利益となった頃ぐらいに、コッコ屋と同じような唐揚げとチキンカツを販売する店が増えたが細部まで研究しておらずただの揚げた鶏肉となっておりもも肉のジューシさやチキンカツのサクサク感が出せてなかった。
そしてコッコ屋が営業開始して3カ月が経ち私はギルドに訪れていた。
受付である依頼をする。
「次の市の1日目にコッコ屋の売却をオークションとして出したいんです」
「ルークさんいいんですか?コッコ屋と言えば営業して3か月の今やこの町の名物となってるようなお店ですが」
「ええ構いません。調理方法や店の看板を含めたすべての権利をオークションにかけます」
「わかりました。ギルドの掲示板に張り出しておきます」
それから数日後の市開催前日のクルルークの町には普段よりも多くの商人が訪れていた。
普段の市であれば油や服などを狙った商人たちの目的は違った、この近隣で知名度の上がったコッコ屋の製法を知ろうと訪れていた。
そんなオークションの登壇に上り
「私がコッコ屋を経営しているルークです。私がこの店を始めてから3カ月の売り上げは20万Rを超え、利益は45,000Rとなっています。この小さな町でこの利益です、王都や大都市で複数店舗経営した光景を想像してオークションに参加することを願っています」
「コッコ屋の製法と看板のオークションを始めます、最初は1万Rから」
「10万」「11万」「30万」「50万」「51万」「52万」
「70万」「80万」「90万」「100万」
「130万」
「現在の最高価格は130万です、130万以上はいませんね?130万Rで落札となります。おめでとうございます」
予想以上の高値が付いたことに渡しは正直驚いていた。
130万Rは金貨1万3千枚であり、この世界に転生した私が相場などを調べて感じた感覚だと1Rが日本円で100円程度のものだ。
130万Rということは1億3千万円でありそんな大金を成人もしてない私の資産となることが信じられなかった。
オークションに競り勝ったチェインバー商会のチェインバー会長と話してみると、彼は40半ばでここから少し離れた土地で商会を経営していたが商品の仕入れで偶々この近くに来ていたことでコッコ屋の名とオークションの話に興味を持ち町に訪れていたという。
数日前に町に到着し唐揚げとチキンカツを食べ、オークション開始前の私の売り上げと利益の話を聞き絶対に競り落とす覚悟を決めた大勝負に出たという。
「ルークさん、今日は良い商品をありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ高値で落札していただき感謝していますが本当によろしかったのですか」
「私のような中堅商会では大金ですが、この人口3000人程度の町であれだけの売り上げがあるなら王都や大都市で数店舗経営すれば数カ月で元は取れますよ」
「そうですね、私にも資金とコネがあれば複数店舗経営していたのですが信頼して店を任せられる知り合いもおらずそれだけの資金もないために高値で売れると判断した今オークションに出したのですよ」
「そうですか、お若いのに考えておられる。今回私が落札できましたが、ライル王国だけでなく他の国にも出店できる大手商会であれば10億R以上でも払っていた可能性はありますよ」
「10億ですか、ちょっと信じられないですね。今回はチェインバーさんと交友を結べたことが1番の利益です」
「こちらこそルークさんと交友を結べた事を感謝しますよ、また会う時があればいい取り人いたいしましょう」
「こちらこそ」
こうして私はコッコ屋を130万Rで手放し、手数料としてギルドに1割払い117万Rが手元に残った。
たったの数カ月で大金を稼いだルークと言う私の名は、この町で有名となったが1月もすれば忘れられていった。
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飲食関係であれば簡単に模倣できるので、知名度があり他の模倣品と味に差がある時に高値で売り抜けたというわけです。
資金力と複数店舗出来る人材があれば一気にシェアを採れる可能性もありますが、異世界転生物で多い儲かったけど他の人は真似せず永久に儲ける変な設定を壊すために短期で稼ぐ方法をとりました。




