旅立ち
旅立ちの朝がやってきた。
庶民が着るようなヘンプ(大麻)で編まれた服を着こみ、家族に別れの挨拶をし村を出る。
荷物は衣類と金貨500枚の入った鞄ぐらいであり、長年連れ添った相棒の馬と共にクルルークの町を目指し駆けていく。
夕方頃にはクルルートの町に到着し叔母のマリーメイアが経営している宿に向かう。
「予約してあった通り部屋はとってあるよ」
「ありがとう。今から商業ギルドに行って来るから今日のご飯は楽しみにしているよ」
「行ってきな、ご馳走を用意して待っててやるよ」
商業ギルドとは各町にいる商人達が商品の売買の許可などをしており、町で商取引をする場合にはギルドに加盟する必要がある。
クルルートの町で月1で開催される3日間の市でもギルドに金銭を支払い許可を貰った者だけが市で商品を販売できるシステムだ。
ギルドでは最低価格の統制も行っており、ギルドの定めた価格を下回る値での販売は禁止となっているが、上回る価格に対しての決まりは特にない。
各町のギルドは主に町の有力者である大手の商会達によって運営されており、王国内の各ギルドは横の繋がりがありライル商業連合と呼ばれ王都に本部が置かれている。
ギルドに加盟する資格は特になく、加盟するのに必要な100R(金貨10枚)を支払い、3年間は年に10Rを4年目からは年に100Rの更新料が必要となっている。
更新料とは別にギルドに上納することで、大都市などの入市の際に貴族などが利用する専用の門の使用も許可されており列に並ぶことなくスムーズに入市が出来るようになっている。
他には港湾での停泊の優先権や、荷卸しの優先権など様々な特権がギルドに上納することによって利用できるようになっている。
ギルドとは商業ギルドを指す言葉が定着しているが、大きな町にいけば職人たちによる鍛冶ギルド・服飾ギルドなど複数の専門ギルドが存在している。
ギルドの建物に到着し門をくぐると何人かの商人たちがおり商談や世間話に興じていた。
受付には異世界でおなじみの美人の受付嬢などは存在せず、40代ほどの男性が座っており彼に話しかける。
「お久しぶりです、ギャンターさん預けているお金を王都のギルドに30万Rを送金してください」
「確認しますね、少しお待ちください。現在ルークさんの口座には130万預けられています、振替依頼と言うことで1割の3万Rを手数料として頂き、王都のギルドに送らせていただきます。それでよろしかったでしょうか?」
「はい、それでお願いします」
「ついに旅立つんだね、ルーク君にはこの町で頑張ってもらいたかったけど。まさか君の様な若い子が短期間であれほど稼ぐとは思わなかったよ。コッコーも今や王都の主要都市には店がある有名店で、チェインバーさんも今はもう大商会だからね」
「当時の自分に資金と伝手があれば良かったんですが、無かったのであの時はあれが一番よかったんだと思います」
「そうだね資金と実績、そしてギルドからの信用がないとギルドも大金を貸せないから。手続きは完了したよ、それを王都のギルドに持って行けばお金を下せるようになってるから。こちらから情報を送らないとダメだから下せるのは2週間後ぐらいになるよ」
王都のギルドに預金を証明する紙を手渡される。
金貨1枚を約3gで大きさは直径20mに厚さ0.5mm。
500枚なので1.5㎏の重さとなり、小さい金貨を採用。




